読了。

私は複数の本を同時期に読むことがあり、

本書は文庫本なので外出時に読んでいたため、読み始めからかなりの時間がかかってしまった。

 

ペスト  (著)カミュ (訳)宮崎嶺雄

 

 

194*年、アルジェリアのオランという都市でペストが発生し、都市封鎖がなされたという小説である。

 

太字は本書からの引用である。

 

死亡者は「ペストの第六週は三百四十五名となった。」とあったところ(112頁~)に、

 

「市民たちは不安のさなかにも(中略)一時的なものだという印象を、依然持ち続けていたのである。」、「相変わらず街頭を練り歩き、カフェのテラスで卓を囲んでいた」と書かれ、さらに詳しく次のように書かれていた。

 

「歩行者の数は目立って多くなり、しかも閑散な時刻にさえ、商店あるいはある種の事務所などの閉鎖でなんにもすることのなくなった大勢の人々が、街頭やカフェにあふれていた」

 

そして、映画館も同じプログラムだが開館しており「各館の収入は減少しなかった」

 

2020年10月に「武漢日記 封鎖下60日の魂の記録」を読んでいるが、違いに驚く。

 

まあ、本書はあくまでもカミュの創作、小説である。

 

次第に感染者は増えていくが、市立オペラ劇場では、「ペストの始まった春に、この町に公演にやって来た一座であった。病疫のために封鎖されてしまったこの一座は、余儀なく、オペラ劇場側と協定したうえで、毎週一回その演題を繰り返すことになったのだ」

 

ということは、映画館のみならず、劇場も営業していたのか。

この部分は文庫本の291頁あたりである。

 

感染は深刻だが、人々は文化的な生活をしていたことがわかる。

ここまでで、一般市民のマスク着用や、ワクチン接種について書かれていないことが気になった。

 

ようやく304頁に、主要登場人物のタルーが「消毒器から吸湿性ガーゼのマスクを二つ引っ張りだし」と書かれており、もしや「マスク」という単語はここで初めて出てきたのでは?と思いつつ先を読むと、

 

「ランベールが、こんなものが何かの役に立つのかと尋ねると、タルーは、そうではないが、しかしこれを被っていると向うが安心するのだと、答えた」

 

うーむ。うーむ。

 

そして、403頁に、ついに「県庁は病疫が防止されたものとみなされうることを宣した」とあり、「一月二十五日の晩は、浮き浮きした興奮が市中にみなぎった」、「灯のともされた街頭に、市民たちはそこで賑やかに笑いさざめくむれをなして、練り出したのであった」とあったが、

 

「もちろん、数多くの家々では鎧戸が閉ざされたままであったし、幾多の家庭が、他の人々が歓声をもって満たしているこの一宵をひっそりとして過ごしたには違いなかった」

 

このあたりは、現在の状況にも符合するのではないかと思った。

 

そして、感染の終結の様子が書かれた後に、

 

母親はいった。「ここに置いといておくれ、私たち二人とも。ねえ、大丈夫だよ、私はまだ予防注射をしたばかりだもの」

 

「予防接種」という言葉も、ここで初めて出たのではないか。

医療従事者の同居者ということでこの「母親」は予防接種をしていたのか。

 

医師は、タルーもやはり予防注射をしていたのだが、しかしおそらくは過労のために、最後の血清注射をぬかしてしまい、二、三の用心を忘れたのに違いない、といった。

 

あまり詳しく書くと「ネタばれ」になるので書かないが…「二、三の用心」は必要である。

 

本書の奥付を見ると、「昭和44年発行」とある。

そして、「令和2年5月 93刷」。おお。