メモを整理していたらそのときのなぐり書きが出てきたので、備忘録として講演内容をざっとまとめておきたい。
日本では小泉首相のあと安倍首相以降「1年生首相」が続いていて、政治的に不安定である。ただ、震災復興においては、首相(つまり、菅首相)が中心となってその道筋をつけるべきであるが、「何もできない政府」が混乱に拍車をかけている。
堺屋さんは今回の震災を「第3の敗戦」と考えている。1つめは黒船、2つめは二次大戦である。
奇妙なことに、この3つともに同様の運命をたどっている。
1つめの敗戦では黒船の到来に対して尊皇攘夷派は砲撃で対抗したものの、まるで歯が立たなかった。結局、幕藩体制を捨て、攘夷思想を捨てて、明治維新という大改革をやってのけた。
ここで大改革された主なことに5つある。藩籍=身分制度の廃止、外国文化排斥から「外国好き好き開国」、貨幣制度、廃藩置県、文化大革命(寺子屋から統一教科書へ)の5つである。新貨幣では信頼を造成することで外国から借り入れをして鉄道などインフラ整備をおこなった。
2つめの敗戦でも下り坂は1920年から起こっていた。一次大戦で輸出が増大したもののすぐに不況に入り、23年の関東大震災で東京が壊滅し、30年に犬養首相が暗殺、35年の大正デモクラシーでなとか支えたが、官僚や軍人の「身分制度」が温存され、「官僚無責任体制」から太平洋戦争に突入する。
敗戦後に日本は「前の日本」を捨て「身分制度」を撤廃し、全く新しい日本を作り上げている。つまり、既得権益に縛られず過去を捨てられるかどうかが、いずれも大きなポイントとなっている。
さて、今回はどうなるのか?
まず、日本経済が震災が起こるはるか以前からがダメだったことは周知のとおりだ。そのきっかけは1990年のバブル経済崩壊で、その後日本は1度も立ち直ったことがない。
これは、戦後に作り上げた競争を作らない安定社会(=談合社会)が長く機能した弊害である。たしかに規格品の大量生産にはこの体制は効果的で、自動車や電気製品の生産にはプラスだった。
だが、「知価革命」がアメリカで起こり規格大量生産の精神がすこしずつ衰退すると、日本経済もそれにともなって停滞した(「知価革命」については堺屋氏の著作を参照してください)。
かつての価値観は「生涯所得を最大化すること」「たくさんの貯金を持つこと」「結婚し子どもを作り幸せな家庭を気づくこと」に集約されたが、現在の価値観は「満足を最大化すること」にシフトしつつある。日本経済はそれに対応できず、停滞していたのである。
そして、立ち直りにきっかけになる可能性があるのが今回の震災である。ただし、日本経済が立ち直るにはこれまでのものを捨てて、新しいものを築くことができるかどうかにかかっている。具体的には次のようなことである。
(1) 道州制の導入で地方分権
(2) 公務員改革で公務員を「身分」から「職業」へ
(3) 増税する前に経済の立て直し(いびつな福祉制度の是正など)
(4) 文化大革命・コミュニティ社会の創設(歩いて通える職場作り)
以上、途中を端折りながらざっとまとめてみた。
まずは国民の意識改革が出発点だが、同様に大切なのが人材である。日本の政治家や官僚の中にも、堺屋氏のような人材がいるはずで、そういった人材にいかに仕事をしてもらうかがポイントとなるだろう。
