私の勤務大学にはTESOL(英語を第二言語として教える方法)の大御所がいて、私が赴任してきた2001年には英語教育法を学びに来ていた日本人の大学院生がたくさんいました。

 

その人たちの約半数はアメリカに残って日本語教育や言語学に携わっていて、残りの人の多くはは日本で英語教育の大学教授になりました。その他、別の英語圏(シンガポールやオーストラリア)に移住した人もいます。

 

私の勤務大学にいたTESOLの有名な先生は今も世界中で「英語の先生」に指導をしていますが、彼女のクラスを履修する先生はほぼ100% 英語母語話者ではありません。日本でも他の国でも、もちろん『ネイティブ』の英語の先生はたくさんいるのですが、そういう人はあまり「教授法のワークショップ」には参加しない傾向があります。

 

自分が自然習得した言語を系統立てて教えるのは、かなり専門的なトレーニングが必要とされます。

特に音声の指導に関しては自分がその音を出せるからと言って、生徒にマスターさせられるとは限りません。

 

ネイティブの発音を聞き続けていればその音が出せるようになるというのは、幼少期のまだ筋肉が固まっていない時点では割と自然にできますが、実生活でのインプット〜アウトプットの繰り返しが十分にないと、習得して定着するのは難しいです。

 

私の場合、幼い頃、なんの抵抗もなく英語の音を再生することができました。イギリス英語だったのですが、私が聞いていた英語の音は保育園(プリスクール)の先生とお友達のお母さんだけで、特に強いアクセントの人とは接する機会がなかったと思います。その頃はテレビはあったものの、家では全然テレビを見ませんでした。十分なインプット〜アウトプットが得られないまま、日本に帰国して中学まで英語に触れずにすごしたので、中学に入った頃にはすっかり英語も忘れていました。ただ英語の先生の英語の発音は私が知っている英語の音とはかけ離れていたことは強く記憶に残っています。

 

私が中高で英語を教科のひとつとして習ったときには特に話す練習もしなかったし、発音の指導もありませんでした。通訳の仕事を始めて、人によっては本当に日本語も英語も上手でしたが、ほとんどがどちらかはハッキリとノンネイティブであることがわかりました。

 

アメリカに来てから、日本語も英語も発音に限って言えば、なんの違和感もなくネイティブのように聞こえる人にたくさん会ってきました。こういう人たちは日常、両言語を使っていますが 特にプロの通訳を目指したりはしていません。また両言語が上手に話せるからと言って通訳が上手と言うわけでもありません。

 

発音の指導に話を戻しますが、英語の発音を教える場合、1音1音で教えるより、フレーズ 特に韻律(プロソディ)を重視して教えるほうが「上手に聞こえる発音」に導いてあげることができます。

私自身は、英語の発音をモデルとして示してあげることはできませんが、少なくとも他人に伝わるように発話するようには指導できます。ただしクルマの運転とかと一緒で、なかなか親しい友人や家族にこういう指導ってできないものです。娘は私より英語の発音はいいので、英文を書く時やプレゼンの準備をする時だけ、どんな語彙を使うか、どんな話し方をすればわかりやすくなるかということはアドバイスします。でもダメ出しされるとふてくされるし、けっこう幼い頃から自我が強かったので、言語を身内に教えるって難しいなと実感しています。