昨年の9月に、アメリカで日本語・英語のバイリンガル子育てをしている保護者を対象にワークショップをおこないました。その参加者から寄せられた質問に少しずつ答えていきます。これは、私の先行研究に基づいているものや個人の経験談や私見が混ざり合いますが「ブログ」の性質上、どうかご自分に有益だと思う部分だけ、拾って参考になさってください。
このワークショップでは参加者が多かったため、3つのグループに分け、3人の講演者が各グループを20分ずつ回るという方法を取りました。そうすると参加者は3人全員の話を聞くことができ、もっと話す機会も増えると考えたからです。グループ分けはお子さんの年齢別にしました。
お子さんが小さいと家庭での言語使用や学校選び、学校に入る前に何ができているべきか、という質問が多くありました。その中にご家庭で「子供に動画(TVやDVDを含む)を見せ続けていいんでしょうか。」という質問がありました。
私自身、子供の頃「TVを見ると目が悪くなる」と言われ、1週間に3時間しかテレビを見させてもらえませんでした。
だからと言って、私の目はいいわけでもなく、他の子より、たくさん読書をしたとか勉強したわけではありません。
我が子は何でも人に言われてやめることが苦手な子供で、5歳くらいまではとにかく同じ動画を何度も見たがり、家にいたらずっとテレビ(DVD)を見たがるので、休みの日は無理やり公園に連れ出したりしていました。
だから、就学前のお子さんを持つ親御さんが「動画はどのくらい見せていいのか。」「何を見せたらいいのか。」と悩む気持ちはよくわかります。
ここで少しだけ「研究者」として、冷静に意見を述べさせていただきます。
ここ20年くらいの間に、先進国の「注意欠陥児童」の数は増えていますが、これは子供そのものが変わったというよりは「判断の基準」が変わったことが大きく影響しています。
またメディアが発信する情報の量とスピードが10年前と今でさえ 格段に違い、30年以上前とはまったく違います。
以前ならぼ〜っとテレビを見ながら、何となく受け取れた情報も今の子供は、瞬時に能動的に必要な情報を得ることができるため、一方的な先生の話などから情報を受け取ろうとしても、あまりにも退屈で「注意力」が持続しません。
4年ほど前、ボストンにある有名工科大学(名前を出さなくてもバレバレ?)の言語学グループが「新しい言語を習うのに『人間を使う』従来の教育方法はあまりにも非効率的である」という研究論文を出したのですが、言語教師協会の激しい批判を受け、一般的に公表されなかったことがありました。
私は教育学者として、この論文の主張は理解できても賛成はできませんでした。それは自分が語学教育者として、自分の職がなくなるからという不安からではなく、言語そのものの価値は「人と人のコミュニケーション」にあり、「効率がいいかどうか」で学習方法を考えたくないからです。
けれどデータを冷静に見ると、現代の子供は私たちが子供の頃より、ずっと刺激的なインプットがないと脳が活性化されず、人間同士の対面コミュニケーションだけでは満足できなくなっていることがわかります。そういう時代なのだから、ある程度は時代の流れに乗り、ゲームや動画なども実生活に取り入れていかなくてはいけないというのが実状です。
子供に「ことば」を教えたいなら、親が子供に語りかけるのが一番自然な方法だと思います。とはいえ何もないところから「会話」ははずみません。だからこそメディアが必要になってきます。
1−2歳の頃なら、絵本でも動画でも一緒に見ながら「あれ? さっきもこの子出てきた?」「あ〜、大きいくまさんいるね〜。こわい?」のように語りかけてあげると毎日の会話も自然とはずみます。
2−4歳くらいになると「文字の習得」に躍起になる方もいますが、お母さんが「読み聞かせ」をしなくてもオーディオブックとか動画を使って、お話について一緒に話すとか、夜 寝る前に本を読む代わりに、親子で交代に自分が作った「物語」を話すのも言語発達には役に立ちます。
学校に行き始めたら、一緒に学校の宿題などを考えてやってみるだけでも十分、親子のコミュニケーションは取れると思います。
前にも書きましたが、親は自分が一番、楽な言語で話しかけ、「教える」と気張らず「一緒に習う。一緒に楽しむ。」姿勢で子供と向き合えば、それが一番の教育方法だと思います。
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