『作文に強くなる』(馬場博治、岩波ジュニア新書)の第2章から、覚えておきたいポイントを抜粋します。
 
三点法
 
「つまらないと思うテーマでも、どこかおもしろいポイントはあるものなのです。まずそのポイントを見つけるのがレポート書きの出発点です。ではどうしておもしろいところを見つけ出すのか、ということになります。見つけ方の基本が「三点法」です。「季節」という課題が与えられる。おもしろいととびつけるような課題ではない。ありきたりな題です。(中略)
 
まず、季節について思い浮かぶことを3つ書くのです。
1.春、夏、秋、冬
2.無季節の世相
3.変化のうれしさ
 
こう書いてみると、自分の書いた文字のどれかに目がとまります。「春」、季節のなかでこれがいちばん好きだと思います。好きな季節のどこがどう好きなのか、それなら書ける、書いてみようという気になってくるでしょう。
(中略)
「春が好きだ」で書くことにしました。つぎにこの文をもういちど三点法で分割してみてください。どこがどう好きなのか。
1.光
2.重さからの解法
3.さくら
 
平凡ですがこれでもいいのです。3つのなかでまず光と書いた。まっ先に書いたということは、何よりもそれに引かれているということでしょう。春といわれれば、自分は光を思う。なぜだろう。もういちど三点法を使ってみましょう。
1.冬の光とのちがい
2.日だまり
3.木の葉に光る
 
ここまで考えを煮つめていきます。三点法を三回くりかえしてくると、もうだいたいの方向はつかめてきます。
 
 
イメージ法
 
「平和、戦争、愛と、課題が抽象的であればあるほど、イメージを大切にすることだと教えました。
平和のイメージをつくってごらん。ここでこうして教室に座っているのも、平和そのものじゃないか。大学食堂でそばを食べている、それも平和だろう。いくらでもあるじゃないか。一つひとつのイメ―ジをしっかり頭に焼きつけて、その細部を書きこんでいくんだよ。
 
「三点を決めるためには、なんとしてもイメージが欠かせないのです。」
 
 
手もとに引き寄せる
 
「たとえば「甲子園」について書くとしましょう。ごくあたりまえにうかんでくるのは、高校野球ですね。そのほかにどんなことが浮かびますか。空、太陽、土、芝、浜風、汗、日に焼けた真っ黒な顔、かちわり、わきあがる歓声。
しかし、こんなふうにテレビでみる甲子園、つまり「手もと」とは遠いところで想をめぐらせてみても、手ごたえのある文章にはなりません。
あくまでも「手もと」に密着することです。すなわち、自分の身近にいる甲子園には行けそうもない野球部の友だち、あるいはかつては甲子園の大会に出ようとして夢破れた人、近所の熱狂的阪神ファン、そんな人たちをとおして甲子園を考えるのです。」
 
 
形容詞法
 
形容詞は抑制して使うのが文章作法の一つです。使いすぎると文章は嘘っぽくなり、俗になる。(中略)形容詞が過剰になると、文の品格は落ちてしまいます。」
 
形容詞は一人合点なものです。「賢い人だ」というとき、いっている本人はその賢さの数々にふれているのですから、自分ではよく合点しています。しかし聞かされているほうには、どこかどう賢いのかまるで見当がつきません。実例が見えないのです。
 
「子どもが大学に合格したとき、こんな手紙をもらいました。
「おめでとうございます。ほんとうによく勉強されていましたから、当然のここと思っています。机の上にある英語の辞書を見ておどろきました。使いに使ってぼろぼろにふくれあがっていたのです。どれほど辞書を引いたのか、頭が下がる思いがしました。」
とてもいい手紙でいまでも忘れることができません。ふつうなら「よく勉強された当然の結果」ぐらいで終わるのでしょうが、この人は「よく勉強した」という形容詞的言葉を「辞書」という具体的なものに置き換えたのです。「まじめな」という形容詞を、形容詞のままに終わらせない、それがこの手紙だといえるでしょう。」
 
 
立体的描写法
 
「立体的に描写する」という方法があります。ここに一つの灰皿があるとします。「ガラスの灰皿がある」と書いてしまえばそれでおしまいですが、それではもの足りないときにどうすればいいか。(中略)
もの足りないときは、灰皿を立体的に見直すのです。灰皿はきれいに洗ってあるか、灰がついたままか、吸い殻が入っているか、・・・(中略)」
 
「一つのものは、環境のなかにあります。むずかしくいえば、構造のなかにあります。一つのものをそれを取り巻くもののなかに位置づけていくのです。ものだけにこだわっていては文章は伸びません。まわりを見ること、それが立体的な見方です。そして見たものを「描写」するのです。文章にいきづまったときは、立体的描写をしてごらんと私はいいます。」
 
描写することは、ものを見る目をふくらませます。ふだん何気なく見ているものでも、しっかり描写しようと試みてみると、思わぬ点が見えてくるのです。」
 
 
次は、3章 材料を構成する からエッセンスを抽出してみます。
 
 
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