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6歳の娘から「○×ゲーム」に誘われた。

 

 

いそいそと紙に、

4本の線をシュシュっと書き始める娘。

 

 

 

出来上がったのは、

ちょうど漢字の「井」に近い形をした、

「○×ゲーム」のリングだ。

 

 

 

 

彼女が僕に向かって睨みを聞かせ

無言で「リングに上がれ」と、

訴えかけてくる。

 

 

 

と言っても、娘に誘われたこのゲームには、

娘独自のルールが設けられている。

 

 

 

なんと、

「負けたほうが

勝ちの○×ゲーム」

なのである。

 

 

 

つまりこのゲーム、

相手に勝たせたほうが勝ちなのだ。

 

 

 

 

そんなルールを嬉しそうに話す娘。

 

 

 

 

 

「君は相変わらず

変わったことを考えるね。

一体、誰に似たんだか」

とぼやきながら妻の顔を見ると、

彼女は“あごの先”で答えを教えてくれた。

 

 

 

何を隠そう、その先端は真っ直ぐ、

僕のほうを向いていたのだ。

 

 

 

 

さて。娘の変態さの正体が分かったところで、

実際の勝負の様子へと内容を移そう。

 

 

 

 

はっきり言って、

いつも通りの「○×ゲーム」なら、

娘に負ける気がしない。

 

 

 

 

こちとら娘より、

数十年も長く生きているのだ。

圧倒的経験値の差がある。

 

 

ところがこれは、

「勝たせないと勝てないゲーム」

である。

 

 

頭がこんがらがり、

なかなかに娘と言えど手強いことが判明した。

 

 

 

それにこのゲーム、

何度かやって分かったが、

負けたほうも、勝ったほうも、

なぜか喜んでいるのだ。

 

 

 

なぜなら、

「負けたー!」と悔しがるその人は、

実質、ゲームには勝っているし、

ゲームには負けているからこそ、

勝負に「勝ったー!」なのだから。

 

 

 

つまり、相手を勝たせたら、

勝たせた人が勝ちだし、

相手もゲーム自体には勝ってるから勝ち。

 

 

 

ほらこの文章のどこを探しても

「負け」が出てこない。

 

 

 

 

「誰も負けずに終われるゲーム」

を編み出した娘。

 

 

 

やはりなかなかの変態である。

親の顔が見てみたい。

 

 

 

さらに、「相手を勝たせること」に注力せねばならないこのゲームをやるからこそ、

こんなことにも気づけた。

 

 

 

 

 

例えば、スポーツや仕事などの

勝負事で「勝ったー!」となる時。

 

 

 

そこにはいつも

「勝たせてくれる人」が

存在する。

 

 

 

 

なぜって、「勝ち」がある以上、

「負け」の存在が必要不可欠だからだ。

 

 

 

 

その二択のうちの「負け」を

担ってくれる人がいるからこそ、

「勝ったー!」と気分よくなれるのである。

 

 

そういえば昔、

テレビである格闘家がこんなことを言っていた。

 

 

 

 

「勝負に勝てば、勝つほど、

謙虚になっていく

自分がいました」と。

 

 

 

きっとこの格闘家は知っていたのだろう。

 

 

自分が勝利を得られるのは、

負けてくれた人がいるからこそ、だとということを。

 

 

つまり、「勝利」とは、

自然発生するものでなければ、

勝者が作っているものでもない。

 

敗者からの

贈り物(授け物)なのだ。

 

 

 

そして、これは勝利に限らず。

 

 

 

例えば、笑顔になる時。

 

 

目の前には、必ず、

あなたを笑顔にした人なり、出来事なり、

“何か”がある。

だから、あなたは

勝手に笑顔になったわけではない。

 

その“何か”から

「笑顔」を授かっているのだ。

 

 

 

 

また例えば、感動する時。

 

目の前には、必ず、

あなたを感動させた人なり、出来事なり、

“何か”がある。

だから、あなたは

勝手に感動したわけではない。

 

その“何か”から

「感動」を授かっているのだ。

 

 

 

 

 

 

いやあ、

ありがたいねえ。

 

 

 

 

 

娘の発明したゲームにより、

改めて、人は1人では生きていかれないのだと、思わされた。

 

 

 

 

やればやるほど気分が良くなり、

感謝が湧いてくるこのゲーム、

よかったら皆さんもぜひご家庭で。

 

 

 

 

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