父は、手を放したもののあとをぴったりついてくる。

近すぎて父の呼吸まで感じ取れそうだ。

言っては悪いが、気色悪い。


早足で歩いてもぴったりいついてくる。

まるで背後霊だ…



父を背後にまわしたことにより、両手があいたので
バッグから携帯を取り出しTくんに電話する。


Tくんは勤務中だったが、不幸中の幸い・ちょうど休み時間
だったこともあり、電話つながった。


「お…親…親が来てるんだけど…今、道…後ろにいる…」

私テンパっているらしく、声がふるえる。



Tくんは

「しっかり。落ち着いて。どこか
お店に入って助けを求めたら」


とアドバイスしてくれた。



その間も、

「電話やめてぇ、
パパと話そうよぉ」




背後から父が話しかけてくる。


語尾がのびててなんかイヤだ。
なんだその猫なで声は。
いい歳して パパ とか言わないでほしい。

余裕を持って出かけたはずなのに、父と追いかけっこ
しているうちに、気付けばもうバイト開始時間ギリギリだ。

見ず知らずの店に入って、
「この子の実の父ですので」
とか父に言われたら一巻の終わりだ。



いちかばちか、私はバイトしている店に飛び込んだ。

(つづく)