七百年ほど昔 下関海峡の壇ノ浦で
源平最後の合戦があり
平家一門は この地で滅亡した。
その霊を慰めるために 赤間ケ原に
阿弥陀寺という寺が 建てられたが
この寺に芳一という まだ若い
盲目の琵琶の名人がいた。

芳一 (中村嘉葎雄)
ある夜、彼の前に 甲冑姿の男が現れ
「高貴なお方に琵琶を聴かせるため お前を迎えに来た」
と、ある場所に連れて行かれる。

甲冑姿の男 (丹波哲郎)
その立派な屋敷の 位の高い方々の前で
芳一は 『平家物語』の
壇ノ浦の合戦の部分を 琵琶を奏で、物語る。
実写でのドラマ仕立ての 源平の戦いの場面も
実に長く、丁寧に撮られていて驚きますが
下の源平海戦絵巻は この映画の為に
中村正義画伯が 製作された5点の絵で
1点の絵の大きさが 五百号もあるそうです。
芳一の巧みな琵琶と 語りを聴くうちに
平家一門の人々は 嗚咽し、むせび泣き、
そして、声を上げ哀しんだ。
その後も毎晩、男に連れ出され
明け方、死びとのようになって帰って来る芳一を
心配した寺の住職(志村喬)は ある夜、
二人の寺男(田中邦衛・花沢徳衛)に 後をつけさせた。
すると寺男が見たのは 人魂が飛び交う
荒れ果てた 平家の墓場で
一心に琵琶を奏でる 芳一の姿だった。

住職は平家の怨霊に 取り憑かれた芳一の
体全部に 般若心経を書きつけ
どんなに呼ばれようと
絶対に声を出してはいけないと 言いつけた。
住職 (志村喬)
その夜、いつものように 芳一を迎えに来た武士は
芳一、芳一と名を呼ぶが 返事がなく
ただ空中に2つの耳が 浮かんでいるのを見て
その耳を引きちぎって 持って帰って行った。

両耳を押さえ 悶絶する芳一。
住職は芳一の耳にだけ お経を書くのを忘れたのだ。

その後、芳一は 「耳無し芳一」と呼ばれ、
その名声は 遠方まで聞こえたという。
『怪談』の 四つの作品の中では
登場人物も際立って多く 重厚な作品に仕上がっており
その妖しい美しさに 観ていて
とりとめのない幻想を 抱きました。
源平合戦の場では
北村和夫(平知盛) 林与一(源義経) ほか、
中谷一郎、近藤洋介、中村敦夫さんなど
大勢の俳優さんが 出演されています。
しかし
結果、構想10年 撮影期間9か月
スタツフ総勢800人を要した この映画は
カンヌ映画祭の 審査員特別賞の他
国内の賞も数々取りましたが 興行成績は振るわず
ほとんどの俳優さん、スタッフがノーギャラになってしまい
交通費・ホテル代まで 自腹を切ったとか。
制作業務を受け持った
文芸プロ「にんじんくらぶ」は倒産。
小林監督は 青山の邸宅を売却
二間の部屋を間借りし
亡くなるまで そちらで暮らしたそうです。











