東北大加齢医学研究所の福本学教授(病理学)らの研究グループが、福島原発事故で警戒区域(20キロ圏内)に置き去りにされたウシを用いた研究で、子牛の方が母牛よりも高濃度にセシウムを臓器内に蓄積していた、という研究論文を発表しました。
原発事故で放出のセシウム 子牛、母牛の1.5倍蓄積
http://www.kahoku.co.jp/news/2013/01/20130125t63017.htm
これは、「代謝が活発な子どもは放射性物質の排出が早い」「子供は大人よりも食べる量が少ない」ことを仮定して、体重あたりに換算すれば子供は大人よりも多くセシウムを摂取しても構わないとするICRPモデルに疑問を呈する結果となりました。
もちろん、ICRPモデルを基に決定された日本の食品規制値も前提が違うとなれば見直しをすべきでしょう。
ベクレル→シーベルトの換算でも、ICRPモデルでは子供は思春期の青年よりも換算係数は小さく設定されています(次のページで例えばセシウム137やストロンチウム90の欄に10 Bq/kg、1 kgと入力してみて下さい)
http://www.mikage.to/radiation/internal_exposure.html
これに加え、ICRPモデルでは基本的に体内に入った放射性物質は均一に分布するものとして内部被ばくの評価を行っていますが、(放射性ヨウ素が甲状腺に、ストロンチウムは骨にという例外はあり)、この調査は、銀110mは肝臓が、テルル129mは腎臓がターゲット臓器であると結論づけています。
放射性セシウムの蓄積が臓器によって異なるとするバンダジェフスキー博士の論文も引用されています。この調査では、甲状腺へのセシウム蓄積は他の内臓よりも低いとしていますが、いずれにしても、放射性物質の臓器への蓄積は核種によって異なるという結果が得られたわけですので、それを深く考慮しないICRPモデルは荒っぽすぎることはおわかりになるかと思います。
論文名
「福島第一原子力発電所の避難区域に置き去りにされた牛における人工放射性核種の分布」
Distribution of Artificial Radionuclides in Abandoned Cattle in the Evacuation Zone of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant
全文(英語)
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0054312
ポイント(全体を通じた要約は米国の医師Yuri Hiranumaさんのツイートをご覧下さい)
Yuri Hiranuma博士のタイムライン https://twitter.com/YuriHiranuma
@YuriHiranuma
母体から胎児への放射性核種の移行は内部被ばくに関しての最大の懸念のひとつである。捕獲された3頭の妊娠中の牛の、胎児と母牛の放射性セシウム濃度の比較は図2Aに示され、胎児の方が母牛の1.19倍であった。 pic.twitter.com/BtUNIEzo
@YuriHiranuma
ラットとネズミにおいては、銀は主にリソソームに関連した組織(リンパ節、肝臓、腎臓や中枢神経)に蓄積する。また銀は肝臓のクッパー細胞に集中して蓄積する。よって、肝臓は、銀110m蓄積の主要なターゲット臓器であると結論づけられる。
@YuriHiranuma
原発事故後、大量のテルル132が大気に放出された。最初はテルル129mよりも多くのテルル132が避難区域の土壌で見つかった。テルル129mが腎臓に蓄積されると言う事は、福島原発事故直後に、テルル132もまた腎臓に蓄積した事を示唆する。
@YuriHiranuma
テルル132の半減期は3.2日で甲状腺に向性を持つヨウ素132(半減期2.3時間)に崩壊する。別の研究では牛に経口投与された放射性テルルがどの組織よりも甲状腺に多く蓄積したと報告されている。ヨウ素131と同じくテルル132も甲状腺リスク評価で考慮されるべきだと言う事を示唆する。
