ウンスは
さっきまでゴンが
いたかもしれない
果物畑の中をぬって
王宮からの帰路についていた
チュホンの背に乗るのは
久しぶりね
一緒に帰れてよかったわ
後ろで手綱を引く夫に
笑顔で話しかけると
そうだな
俺はいつもこうしたいが・・・
と
嬉しそうな声が返ってきた
その姿を もし
叔母上に見られたなら
いつまでも新婚気分が抜けない
腑抜けが!
と 小言をくらいそうだ
しかし
チェヨンにも言い分はある
役目で忙しく過ごし
妻補給が全然足りないのだ
だからようやく
一緒に帰ることができて
しかもウンスを独り占めで
すっかり上機嫌
もちろん
ウンスが乗ってきた輿を
使ってもよかったのだが
チュホンの背の上の方が
ウンスをより近く感じられる
だからこうして 二人して
チュホンの背に揺られている
というわけだ
輿と違って
馬上は視界が広がり
暑い日でも風を心地よく
感じることができる
混雑する市場を避けて
横道に逸れ
畑のあぜ道を
チュホンがのんびり
歩いてくれるから
自然と二人の気持ちも
のんびりしていた
まさか
こうしている間にも
ゴンがいなくなって
屋敷が大騒動
になっているとは
つゆ知らず・・・
たまには いいわね
こんな時間も
ああ
チェヨンは妻の腰を
ぎゅっと抱えて微笑んだ
山葡萄の畑が続く道
甘い香りがあたりに漂う
肥料を積んだ牛が
その道をゆっくり歩き
山葡萄は黒々と房をつけ
美味しそうだった
あれ葡萄酒にしても
いけそうね?
妊娠中も出産後もウンスは
しばらく酒を絶っていたが
このところは
子供達が寝付いた後
夫婦で酒を飲むのが
楽しみの一つになっていた
特に
常温でも美味しい葡萄酒は
ウンスのお気に入り
西洋の葡萄酒は貴重で
なかなか手には入らない代物
ではあるが・・・
ええっと?葡萄酒って
どうやって作るんだっけ?
樽の中で発酵させて?
ああ もう少し酒造りの
勉強をしておけばよかったなぁ
そんな他愛のない
妻のつぶやきも
チェヨンには愛しく思えた
ゴンの誕生日には
上等な葡萄酒を手に入れる
としよう
ええ?ほんと?
やったぁ 嬉しいわ
ウンスはうふふと笑った
子供達の誕生日には
主役の子供ばかりか
命がけで子を産んだウンスも
労いたいと
毎回何かしらのソンムルを
用意してくれる心優しい夫
楽しみにしているわ
一緒に飲みましょうね
ああ
そんな会話を楽しみながら
愛馬の馬上で
二人きりの時間を過ごし
日が西に傾き始めた頃
夫婦はようやく
屋敷に帰ってきた
ところが
いつもは出迎えに出てくる
ヘジャの姿が見えない
そればかりか
何やら屋敷の中が騒がしい
何かあったのかしら?
不安そうなウンスを
馬から下ろし
チェヨンはキッと
奥を見つめた
奥から
大慌てで走ってくる小さな影
それはサンの姿だった
サンは両親を見つけると
一気に話し出した
あのね ゴンがいないの
それでね
みんなで探しているの
サンがいっしょに
遊んであげなかったから
ちゃんと
ゴンを見てなかったから
ゴン いなくなっちゃった
オンマぁ ごめんなさい
ごめんなさい〜
最後の方は泣き声だった
ウンスは困惑し
息子を抱き上げると
その背中を
トントンとあやしている
チェヨンは
遅れて駆けつけたヘジャに
どういうことか説明を求めた
申し訳ございません
旦那様
お昼寝しているはずが
お姿が見えなくなって・・・
屋敷の中は
くまなく探しましたが・・・
未だ見つけられずにおります
先ほどは
イサ様とユニョンお嬢様が
念のためと
外をお探しに向かわれました
険しい顔で
話を聞いていたチェヨンは
事態を察しウンスに言った
イムジャ
俺も屋敷の外を見てくる
幼な子の足では
そう遠くまでは行けぬはず
すぐ見つかる
今にも倒れそうな様子の
ウンスを気遣って
チェヨンは微笑んで見せた
うん・・・
早く見つけてあげて
ああ わかった
テマンやスリバンにも
協力を仰ぎ
街中を探索してもらうゆえ
案ずるな
すぐに見つける
チェヨンはソクテに
テマンへのことづてを命じ
そのまま
屋敷の外に飛び出した
ウンスは泣いているサンが
これ以上不安いならないように
努めて平気を装った
ケンチャナヨ
サン
ヨンが見つけてくれるわ
ゴンすぐ帰ってくるわよ
ほんとぉ??
鼻をズビズビ言わせながら
サンは母親を見つめた
ええ
奥の間で待っていましょうね
サンを抱きかかえたまま
ウンスは奥の間に向かった
サンはウンスの胸に抱かれて
緊張の糸がほぐれたように
じっとうずくまっている
そうして
ウンスが廊下から奥の間に
足を踏み入れた時だった・・・
つるっ
と ウンスは足を滑らせ
あわや
サンを抱っこしたまま
転びそうになった
あっ!
思わず声が出て
サンは反射的に
母親の腕から飛び降り
その体を支えた
ありがとう
サン
助かったわ
サンはニカッと笑って
それから母親の足元を
不思議そうな顔で見ていた
オンマぁ
なんか
ふんでいるよ?
え?
ウンスはサンに言われるまま
自分の足元を見た
そして合点した
足を滑らせた原因は
ゴンが柱の低い位置に
貼り付けておいた
張り紙だったのだ
それが剥がれて床に
落ちていたというわけだ
ああああああ
あの子ったら〜
困った子ねぇ
これ
テンカイの字だねぇ
なんて書いてあるの?
サンは勉強嫌いで
天界の文字はまだ読めない
にぃにのところへ
行くって書いてあるわ
サン ソダンまで
ゴンのお迎えに
行きましょうか?
うん!
わかった!!!
いいね〜
サンは大きな声で
母親に答えた
*******
『今日よりも明日もっと』
どんな時に幸せを感じる?
夏の暑さが和らいだ時?
美味しいものを食べた時?
大事なものが見つかった時?
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
週末はゴンのバースデー
それまでに見つかるかなぁ
このところ
職場など身近なところで
コロナが出ていて
戦々恐々としています
ほんと増えたなぁ
という感じがします
皆様は大丈夫でしょうか?
熱中症はもちろんのこと
コロナにも
どうぞ
お気をつけくださいませ
またおつきあいくださいね