その日

ウンスはようやく

王宮へ出向くことができた

典医寺で研修があるイサに

輿の御者を任せ

三つ子は留守番させて

まずは王妃様の回診に

向かった

 

王妃様は待ちかねた様子で

ウンスを出迎え

そばでは

丸々と太った次男の

ク王子が

チェ尚宮と遊んでいた

 

 

医仙

よう参られた

プジャン(副隊長)の

嫁の出産が無事すみ

よかったのぅ

 

 

はい 王妃様

元気な女の子でした

 

 

ウンスはチェ尚宮と

積み木で遊ぶ

王子様の愛嬌のある仕草に

微笑んで答えた

 

 

元気で何よりじゃ

 

 

はい

王妃様は

お変わりありませんか?

 

 

特段変わったこともなく

健やかに過ごしておるぞ

肩がこるのは

髪を結ったからで

あろうか?

 

 

王妃様は長い髪を

髪を結い上げていて

品のいい仕上がりに

なっていた

 

 

そうですね

それもあるかも?

でも・・・少々

脈も乱れているような?

お顔の色も優れませんねぇ

何か心配事ですか?

 

 

心配事と言うほどの

ことではないが・・・

 

 

聞きますよ 王妃様

どうぞお話ください

お子様がいない方がよければ

別室に移動しますか?

 

 

チェ尚宮に聞かれるのも

気がひけるのではないかと思い

ウンスが提案すると

 

 

いや・・・良い

構わぬ

 

 

王妃様は答えた

 

 

実は・・・新しくできる

女医の養成所の件じゃ

お母上様がたいそう

気にかけておるようじゃのぅ?

 

 

ええ 色々

よくしていただいていると

チェ先生にも聞いてます

私も心強い思いでいます

でも・・・それが何か・・・?

 

 

ああ いや・・・

お母上様が姉様や息子のタンを

特別 気にかけているのは

王宮では周知の事実

それにお母上様は進歩的な

お考えのお方ゆえ

女医の養成所にも

特別な思いをお持ちであろう

 

 

ええ そうですね

女子が学問するのも

大賛成ですもんねぇ

 

 

そうじゃのぅ・・・

が・・・

お母上様は

王様の母君であり

いわば

王家の最高位であらせられる

ゆえに・・・

お母上様に取り入り

力添えを目論むものも多い

ゆえに・・・

お母上様があまりに

そなたやタンに肩入れすれば

快く思わぬものも

多くなると言うわけじゃ・・・

 

 

王妃様は

歯切れ悪くボソボソ言った

 

 

と言うと?

 

 

正直なところ

養成所の人員に・・・

おかしな偏りが出るのは

如何なものかと

案じておるのじゃ

 

 

ああ 

内勤の人事のことですね?

 

 

医仙のためを思っての

人選とわかっていても

お母上様の意のままにして

良いと言うわけでもあるまい

それに・・・

能力のあるものを取り立て

適材適所の人事を行うと言う

王様のお考えとも異なり

他への示しがつきませぬ

 

 

なるほど

なんだかややこしいことに

なってしまったんですねぇ

王妃様 すみません

他にも色々

気遣うことがあるでしょうに

悩ませてしまって・・・

大妃様のお気持ちも

王妃様のお立場も

よくわかりました

ああ そうか・・・

大妃様が会わせたい人がいるって

おっしゃっていたのは

養成所の人事に絡んでですね?

 

 

多分

そうであろうのぅ

 

 

じゃあ

私が見極めていいかしら?

大妃様が推挙した女人が

養成所に

ふさわしくないと思ったら

私の方から断りますから

 

 

ウンスは心配そうな顔の

王妃様に優しく答え

そばで話を聞いていた

チェ尚宮は

ウンスらしい回答に

ぐふっと

笑いを漏らして頷いた

 

 

ーーーーーーー

 

 

大妃様はさほど裕福でもない

武臣の家柄 洪(ホン)家の

五女として生まれた

母親は金(キム)氏

兄が二人に姉が四人

姉の一人は第二十六代

チュンソン王の側室だったが

若くしてこの世を去った

 

大妃様は十六の時に

事実上の正妻として王室に嫁ぎ

チュンスク王の寵愛を

一心に受けて王子を生んだ

 

一人は悪名高いチュンへ王で

その息子慶昌君(大妃様の孫)も

幼くして王位に就いたが

無残な最期を遂げている

そして

もう一人は現王(江陵大君)

長らく疎遠になっていたが

公主様が生まれてから

互いのわだかまりも溶け

良好な関係が続いている

 

こうして見ると

大妃様はとにかく

権力や時の運に左右されて

不遇な時を生きてきたと言える

心を痛めたことも

傷ついたことも多い人生だった

 

だから

権力の怖さも

人の心の浅はかさにも

人一倍敏感で

だからこそ

信頼できるものをそばに置きたい

と 心から願った

 

その信頼に値する家臣の筆頭が

公主をこの世に誕生させた

ウンスというところなのだろう

残念なことに

公主のソダンの教授選びは

うまくいかなかったが・・・

 

大妃様が

女官や役人にと推挙した身内も

王宮内には数多くいる

針房のホン尚宮は

彼女の姪で

今も変わらず大妃様に対し

厚い忠誠心を示しているし

例えばかつてウンス付きの

女官だったキム尚宮も

母方の親族だ

一族は助け合って

大妃様を支えてここまで来た

 

大妃様が将来的には

公主様の婿をチェ家より

迎えたいと願うのも

母親のウンスが

自分に福をもたらし

信頼に足る人物だと

思っているからだ

だから

ウンスに対する援助は

惜しまない

 

加えて

養成所の学長や理事の座に

将来 孫の公主が就くのも

悪くはないと考えていた

この時代

女人にできることは限られ

ましてや公主ともなれば

制約はさらに厳しくなる

孫のために

選択肢をより多く

用意できることは

大妃様にとり

願ったり叶ったりというわけだ

 

ゆえに

養成所の計画が頓挫したり

運営に失敗したりするわけには

いかない

女人が医者になるための場を

作るなど

ありえぬ暴挙だと

文句を言う重臣達を

説き伏せたのも

大妃様なりの思惑あっての

ことだった

 

学長はウンスの推挙である

サラを容認した

彼女は慎ましやかな性格で

医術こそがすべてと

精進に励み

権力にしがみつくような

女人ではないし

ウンスに対する信義にも厚い

顧問のチェ侍医は王家の侍医

養成所に関わるのは当然のことだ

しかも彼はウンスに近い人物

ウンスのためにならぬことは

決してしないだろう

 

教授陣は典医寺の医官が

入れ替わりで実技指導をすると

聞いているが

養成所の入学者は身分を問わぬ

と言う触れ込みもあっても

どんな女人が入学してくるか

わからない

教養の素地も必要だと

大妃様は考えて

医学とは関係ない学問や礼儀や

歴史や宗教を教える優れた人物も

必要だろうと

人選を進めているところだった

そして

養成所は全寮制だから

若い娘達の生活の世話や

精神的に支えになるような

寮母が必要だと思っていた

 

できれば若い女医の卵達を

いずれ王家や公主の力に

なるように育てたい

大妃様の手足となって働き

忠誠心の厚い女人を選ぶには

自分の一族一門から

見つけるのが手っ取り早い

 

そうして

白羽の矢を立てたのが

大妃様の父親の弟の孫

つまりは

従姪のホン・ソアだった

若い女医の卵より

いくらか年上で

ウンスよりは年下

一度武官の家に嫁いだが

若くして戦で夫を失い

実家のホン家に戻っていた

 

大妃様は

数年前に会ったきりだが

柔和な性格は変わっておらず

揉め事を起こすこともなく

何よりウンスとも

うまくやってくれるに違いない

 

大妃様は今日こそは

ウンスに引き合わせようと

ソアを居所である

徳慶府に呼んでいた

 

 

ーーーーーーー

 

 

ウンスは王宮の庭園を

警護の武閣氏キヨエと

ヒョナともに歩いていた

二人ともタンの誕生日には

ソンムルを贈るほど

タン贔屓で

必然的に

話題は若様のことになったが

ウンスは二人と話をする一方で

密かに

王宮で暮らしていた頃を

懐かしく思い出していた

 

今は雪に覆われた庭園だが

池に架かる橋も東屋も

なんら変わってはいない

 

結婚する前

この世界に

まだ馴染んでない頃から

チェヨンとは

庭園で会うことも多かった

それは偶然だったり

偶然を装ったり・・・

 

そして結婚してからも

庭園で会ったり

東屋で逢引きをしたものだ

 

背の高いチェヨンが

向こうの方から

不意にやってこないだろうか?

そんなことをぼんやりと

思って歩いていると

本当にチェヨンが急に現れた

 

 

ヨン?

まさか以心伝心?

私の心の声が聞こえたの?

 

 

なんのことだ?

 

 

チェヨンは笑みを浮かべて

ウンスに聞き返した

 

 

ううん

なんでもないわ

 

 

イムジャはこれから

大妃様のところか?

 

 

ええ 

王妃様にお会いして来たの

今度は大妃様よ

会わせたい人がいるって

おっしゃっていたから

養成所のことだと思う

 

 

どうかしたのか?

 

 

チェヨンは

ウンスの表情が

一瞬曇ったのを見逃さず

耳元で小声で尋ねた

 

 

ううん

なんでもない

家で話すわ

 

 

王宮は誰が何を聞いているか

わからない場所だ

ウンスは自分の余計な一言で

大妃様と王妃様の仲が

険悪だと思われてはと

口をつぐんだ

 

 

そうか

わかった

早めに帰れると思うゆえ

大妃様の用事が済んだら

集賢殿で待っていろ

 

 

うん そうする

 

 

手を握り合って

見つめ合うと

二人は足早にそれぞれの

場所へと向かう

 

大粒の雪が舞い降りて

あたりがいっそう

白い世界に覆われていた

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

兎角 人は

己を以って人を量りたがる

自分の基準が絶対とは

限らないのに・・・

 

 

くま猫うさぎねずみ節分

 

 

更新が空きました

ミアネヨ〜

 

さて

養成所虹(ムジゲ)に

関わる人々の登場が

少しずつ始まりました

新しいオリキャラ

大妃様の従姪「ホン・ソア」は

養成所一期生にご応募いただいた

yon0716様に

名付けていただいたお名前です 

ありがとうございました

 

武閣氏のキヨエとヒョナは

タンの誕生日物語に

ご出演いただいたお二人から

お名前をお借りしております

きよりん様 toitoito1147様

ありがとうございました

 

なお

お話に登場する大妃様は

史実に基づいている部分と

史実と異なる部分が

ありますこと

ご了承くださいませ

 

またおつきあいくださいね〜

 

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村