婚礼を明日に控え
テマンはチェヨンとともに
早めにチェ家の屋敷に
帰宅していた
真新しい家具は
テマンの新居に搬入されるのを
待つばかりで
新房ももうすぐ完成予定だ
ウンスはお式に向けて
寂しい気持ちと
慌しい気持ちを抱え
明日 この屋敷を出て行く
テマンのために
心ばかりの夕餉を用意していた
今度チェ家で夕餉を食べるときは
きっとジュヒやコハクも一緒だろう
それはそれで嬉しいことだが
今夜の夕餉はまた特別な気がする
チェヨンとテマンは
料理が並ぶ前から
黙々と酒を飲み始めて
へジャはそんな二人に特上の酒の
お代わりを次々運んだ
あんまり飲みすぎないでよ
新郎が二日酔いだなんて
困るもの
ヨンも酔いが回らないように
気をつけてね
俺はいくら飲んでも酔わぬのだ
ゆえに心配いらぬ
ほんとかしら?
いむりゃ〜ってくだを巻くくせに
ウンスは笑って答えた
テマンも思い出したように
笑っている
テマン
部屋の荷物は
旅行に出かけている間に
あちらの新房に
家具と一緒に届けておくから
ありがとうございます
医仙様
あんないい部屋を
作ってもらったのに
あんまり住めなくてすみません
ううん
私の方こそ
もっと早くにそうするべきだった
ごめんね
テマンはずっと使用人の部屋の
一室を自室にしていた
イサの休憩部屋を作った時に
テマンの部屋もこしらえたのだが
兵舎に寝泊まりすることが多くて
あまり使わずじまい
もともと少ない私物が
チェ家に置いてあったが
着替えやわずかな書物や
身の回りの品も
テマンの部屋の片隅にまとめられ
すっきりと片付いた
ウンスたちの新婚の頃は
よく一緒に過ごしたものだったが
そういえば
タンが生まれてからは
遠慮したのか
屋敷で寝泊まりすることも
徐々に減った
寂しくなるわね・・・と
言いかけて
その言葉を飲み込んだウンスは
旅行の話をテマンに振る
テマンはチェヨンの計らいで
少しの間 休みをもらって
チェ家もよく使っている
ボルムタルの温泉宿に
ジュヒとともに出かけることに
なっていた
へジャとソクテの仲が
近づいたのもあの宿
温泉の質もいいしご飯も美味しい
きっとゆっくりと過ごせるだろう
話は通してあるけど
困ったことがあったら女将さんに
言ったらいいわ
部屋から海が見えるし
ジュヒも故郷を思い出して
懐かしいかもね
はい 医仙様
ありがとうございます
コハクは
ご両親が見てくれるんだって?
はい
そう よかった
お祖父様たちと一緒なら
寂しくないわね きっと
はい・・・
ところで?
テマンとジュヒって
ジュヒの方が年上だっけ?
ウンスはふとそんなことを尋ねた
ジュヒと知り合った頃はまだ
少年みたいに見えたジュヒも
今ではすっかり両班の奥方様
えっと・・・ジュヒ・・・の
方・・・が 一つ上かな?
まあ そうなのね
姉さん女房かぁ
ジュヒはしっかり者だから
きっといい奥さんになるわ
ウンスはクスッと笑って
頷いた
テマンが戸惑いながら
新婦の名を呼ぶ姿が
可愛らしく見える
私も姉さん女房よ
ね?ヨン?
あ?ああ
チェヨンは短く答えて
酒を飲んだ
最初はもっと歳が離れていたの
それが時のいたずらで
今は一歳違いだっけ?
へえ そんなことが?
あるんですか?
テマンは目をくりくりさせて
ウンスの話を聞いている
まあね 天界から来ると
色々 複雑なのよ うふふ
時間の歪みでいつのまにか
二人の歳が近づいたことなど
どうにも説明のしようがない
チェヨンはそのことを
分かっているようだが・・・
ウンスは適当にごまかし答えた
ヨン
お酒ばっかり飲んでないで
テマンに何か話はないの?
ほら 婿入りの前夜よ
こう・・・なんていうか
結婚の心得とか?
夫の心得とか?
ない
いつも以上に饒舌なウンスと
いつも以上に寡黙なチェヨン
テマンは料理を並べる
へジャの手伝いをしながら
二人を見た
二人の想いが伝わって来る
てまなぁ?
それまで大人しく
料理の用意を待っていたタンが
首を傾げてテマンを呼んだ
なんですか?若様?
あのね
てまなぁ
コハクのあっぱぁなの?
え?はい・・・明日から
うちの
てまなぁじゃないの?
ウンスは不意に言葉に詰まった
なんだか泣きそうになる
タンったら・・・
テマンは私と父上みたいに
ジュヒと結婚するの
夫婦になるのよ
だからコハクはテマンの
子供になるの
これからはコハクの住む屋敷で
一緒に暮らすのよ
え〜〜〜
や〜〜よ〜〜〜
てまなぁ いないの
や〜〜よ〜〜〜
あしょぶの〜いっしょに
いかないで〜てまなぁ
タン そんなこと言わないのよ
タンはコハクが大好きでしょう?
あい
大好きなコハクが
大好きなテマンの息子になるのよ
すごいでしょう?
だから
おめでとうなのよ
タンはしゅんとした顔で
テマンに聞いた
てまなぁ
タン きらいになった?
若様 そんなこと
絶対・・・ない・・・です
テマンは言葉に詰まった
まっすぐ見つめてくる
つぶらな瞳
胸の中に屋敷を出て行く
寂しさがよぎる
ほら
飯が冷えるぞ
タン 食え
チェヨンは急に
タンのお椀におかずを乗せて
ボソッと言った
あい・・・
タン ペゴパ
そうね
ご飯にしましょう
あ サン それはまだダメよ
もう 目を離したら
なんでも口に入れるんだから
柔らかく煮た鶏よりも
佃煮を口に入れようとして
ウンスに取り上げられたサンが
派手に泣き始め
スニョンとユニョンも
つられて泣き出し
しんみりしていたはずの
奥の間は大にぎわいへと変わる
ごめんね テマン
賑やかで・・・
子供達が寝たら
ヨンとゆっくり話をしてね
ありがとうございます
医仙様
でも これがいいんです
なんだか本当に自分も
家族みたいで嬉しいから
それに上護軍
夜は
医仙様といっしょじゃなきゃ
機嫌悪くなるし・・・
明日早いし 俺 寝ます
ウンスにボソボソ告げると
にっと笑った
テマンはうちの家族よ
婿に行ってもどこで暮らしても
それは変わらないわよ
ウンスは微笑むと
チェヨンの代わりに
テマンに答えた
チェヨンは黙って酒を飲む
それから夕餉の後
湯浴みをすませると
テマンは本当に
部屋に引き上げた
チェヨンはまだ奥の間で
寝る前の一騒ぎとばかりに
子供らがはしゃぐ仕草を肴に
静かに酒を飲んでいる
口下手なのは
相変わらずね
ウンスはずっと酒を飲んでいる
チェヨンの背中に抱きついて呟く
そうか?
うん でも愛しい
チェヨンは自分の肩に置かれた
ウンスの手に手を重ねて
少しだけ微笑んだ
明日は秋晴れ
いいお式になるわね
そうだな
タンは何かを感じ取ったのか
二人の様子に「悋気よ」とは言わず
時々両親をちらちら見ながら
三つ子と一緒に遊んでいた
が
そのうち 眠くなったのか
うつらうつら始めた子供達
そろそろ
寝るか イムジャ
うん
子供部屋に連れていかなきゃ
ああ
ねえ ヨン
あ?
今夜は甘えてもいいよ
許可する
あほう 何を言う
照れたようなチェヨンの声が
一層 愛しく思えた夜だった
*******
『今日よりも明日もっと』
言葉はなくても
気持ちが伝わる
愛し君の心のうちが・・・
またおつきあいくださいませ
