最高級の織物で
豪華な刺繍がちりばめられた
婚礼衣装
深紅のファルオッが
部屋に飾られていた
女中たちは口々に
その豪華さを褒め称え
将来有望なパク・インギュとの
婚儀に羨望の眼差し
だが
イ・ヨルムは
小さなため息をついた
どうせあの人は
私が何を着ようと
興味なんかないわ
だいたい私の顔さえ覚えて
ないもの
そのようなことはございません
この婚礼衣装を着た
お嬢様を見て
懸想しないわけがありません
女中は微笑んだ
嫁入り前で気持ちが
浮き沈みしているのだろうと
長年の経験で
そう読み取ったのだ
そうかしら?
あの人
相手は誰でもいいのよ
自分の利になればそれでいい
そう言う人なの
元来婚姻とはそう言うものに
ございます
お家の繁栄あってこそ
それにこの家の跡取の
お子をもうけることが
第一のお役目
その点 パク様は
申し分ございません
パク・インギュは
ヨルムが一人娘のため
婚礼後 イ家に住まうことに
なっていた
儒学者だった父親が
現王の側近として
仕えることになってから
ヨルムの人生も変わってしまった
今や最高官位となった父の娘
あれよあれよと
子供のできない王妃様の代わりに
お世継ぎをと
白羽の矢が立って
勧められるままに王の側室
女の身で抗うことなど
許されるわけはないと諦めた
ところが
思わぬことで側室話が流れ
王様の側室に
なり損ねたご息女と
なってしまった
哀れむような皆の口ぶり
人々の同情が疎ましくて
もうどこにも嫁になど
行くものかと塞ぎ込んだ
そなただけを大切に
思うてくれる男に嫁ぎなさい
年頃の娘の行く末を
案じた父親は
パク・インギュに
娘の将来を託した
パク・インギュ・・・
それは かつてヨルムが密かに
淡い恋心を抱いた男だった
王様の側室になると決めた時
封印したその思い
だから
彼の妻になることは
自分にとって幸せな選択のはず
だがインギュは
ヨルムのことなど
まるで気にもかけてはくれない
挨拶に来た日
インギュは ヨルムに言った
婚儀は所詮 家と家の結びつき
浮ついた気持ちはありませぬ
ですが イ家とパク家が
姻戚になるのは
両家にとって悪い話ではない
互いの利となることでしょう
イ家のご息女として
大切にいたします
私が必要なのは
家のため
私は道具でしかないのだ
王の側室になるのも
インギュと結婚するのも
自分にとっては
そう変わらないことだと
思い知る
誰かに恋慕われて
その人の妻になるなど
所詮は夢の中の話だ・・・
そのころインギュは
チェヨンとともにお役目についた
公主様の祝賀の儀の準備で忙しく
妻となる相手を
気遣う暇などなかった
それから 密命に奔走し
その後集賢殿の職責に就き
時を惜しんで役目に邁進する日々
一度 挨拶に来たきり
顔を合わせることはなかった
豪華な婚礼衣装を
眺めながら
夫となる人に見向きもされない
惨めな自分を哀れんだ
思えば
父親が政に担ぎ出したのも
側室の話が潰されたのも
インギュがお役目で忙しいのも
すべては
チェヨンという男の存在のせい
そしてその男が
あろうことか晴れの日の仲人
しかもそれを決めたのは
夫になるパク・インギュ
婚礼前日
ヨルムはますます気が重くなり
人知れずまた ため息をつき
思い巡らせた
━─━─━─━─━─
パク・インギュは今
仕事が面白くて仕方なかった
幼いころから崇拝してきた
チェヨンの指揮のもと
軍事や政の政策を王様に進言する
集賢殿の役割は
一つのことに収まりきらない
才能を持ったチェヨンに
またとない舞台であったし
それを補佐し政策を実行に
移してく自分の立場も
気に入っていた
難を言うなら
義弟のウダルチ隊長との
絆に入り込めないことぐらいで
忌々しく思いながら
目の前に座るチュンソクを
じっと見つめていた
明日はいよいよ婚儀か
お前でもぼうっとするんだな
執務室で書をまとめていた
チェヨンがインギュを
からかうように言った
そのようなことでは
ありません
インギュはムキになって
反論する
先ほどからチュンソクは
インギュにじろりと睨まれて
いるようでなんとも
落ち着かない心地だったので
インギュが視線をそらして
ほっとした
王様もご出席なさるゆえ
ウダルチも物々しい警備だ
なあ チュンソク
頼むぞ
はっ
インギュの視線がちくりと
痛い
インギュ お前
今日は早めに上がれよ
明日の準備もあるだろう
チェヨンは自分の婚礼を
思い出して言った
心が弾んで
弾みすぎて
寝付けないぐらいだった前日
ウンスの為にあれこれ
準備した婚儀
できるなら何度でも
あの美しい花嫁姿を
見たいものだとウンスの姿を
目に浮かべた
某は奥方に腑抜けな上官とは
違いますゆえ
お役目を果たしてから
帰宅致します
ふ ふぬけな 上官
だと!
妻が大事で何が悪い
何か間違いが?
物事には限度と言うものが
ございましょう
上護軍の奥様の溺愛ぶりは
度を超しておりますゆえ
相変わらずの辛辣な言い様に
チェヨンは口をぱくぱく
そんな二人のやり取りを
チュンソクは
笑いをかみ殺しながら
密かに眺めていた
チュンソク
兵舎に参る!
鍛錬だ
武士は体を動かさねば!
はっ
なりませぬ
まだここに上奏がこんなに
知るか!
俺は武士だ
腑抜けな上官は必要ないだろ?
あとは任せた
上護軍!!
チェヨンはうまく
集賢殿を抜け出した
門を抜けると
木立の中をよちよち歩きの
タンがウンスに手を引かれ
邸の方に向かって来ていた
チェヨンを見つけて
駆け出そうとするのを
ウンスに止められていた
その姿がかわいらしくて
チェヨンは目を細めた
俺は腑抜けで結構
妻と子が一番で何が悪い
はっ まったく
その通りで
先頃 父親になった
チュンソクも頷き言った
では 某は
先に兵舎に戻ります
ああ
チュンソクが気を利かせて
行ってしまってから
チェヨンは急ぎ駆け出し
ウンスのもとへ
ヨン 兵舎へ行くの?
ああ でもイムジャが
邸にいるなら
行くのはやめた
うふふ だめよ
ちゃんと鍛錬して来て
それに明日の打ち合わせとかも
あるでしょう?
私は市場に寄りたいから
先に帰るわ
それをいいに来たの
それに 顔 見たかったし
ね タン
ネ〜〜
一生懸命歩いている
タンがウンスに返事をした
そうか わかった
気をつけて帰るのだぞ
うん ヘミやヒョリもいるから
大丈夫よ
ああ
じっと見つめ合う二人に
ヘミとヒョリは心得たもので
後ろを向いた
ちゅっと重なる唇
ポ〜〜ポポ〜
ポ〜〜
うふふ タンがいると
バレちゃうわね
ウンスが重なった唇の先を
震わせながら囁いた
そうだな 致し方あるまい
うん
ポ〜〜〜
うふふ おいで
タン
抱き上げられたタンは
ウンスとチェヨンに挟まれて
ポッポ(キス)
満面の笑みを浮かべた
この幸せがわからぬとは
インギュも気の毒な奴だ
そして
それから
市場に向かったウンスは
そこで思いがけないことに
出くわすこととなる
夏の暑さとは違った
儚さを帯びた秋暑
婚礼前日の夕方のことだった
*******
『今日よりも明日もっと』
たった一人の誰かと
巡り逢えることは
幸運なことだ
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
婚礼前日が続いております
昨日のうちにアップ予定が
時間がずれ込みました
m(_ _ )m
相変わらずの牛歩

さて婚礼まで無事に
辿り着けるだろうか?(;^_^A
また
おつき合いくださいませ
にほんブログ村