典医寺から戻り
軽い夕餉を終えると
湯浴みをする気にもなれず
寝ているタンを抱えて
閨にこもったウンスに
扉越しにヘジャが言う


ヘミさんとヒョリさんが
邸に泊まってくれることに
なりました


チェヨンがいない時の
警護は抜かりなく
ウダルチもしょっちゅう
巡回に来ていた


そう
離れを使って貰ってね


はい ヘジャにお任せを


ヘジャたちはどうするの?
前の使用人部屋は
集賢殿の人が使っているわ


奥の間の片隅を
お借りしてもよろしいですか?
奥様のお部屋にも
近いですし


構わないわ


では
おやすみなさいませ
何かありましたら
お声掛けを


ふうと
ため息をついて
寝台に横になった
タンは転がるから
柵のついたタンの寝台に
寝かしつけた

昨夜は川の字
今夜はひとりきり

ヨン

名前を呼ぶと余計に
寂しくなる

チェヨンのことは考えない!
すぐに帰ってくるもの

ウンスはポムの赤ん坊の
ことを思った

しっかりした骨格の
赤ん坊だった
名前?なんだろう?

両家の親の許しを得てから
お披露目すると言っていた
律儀なチュンソクらしい
ウンスはふふっと笑った
笑うと少し元気になる

そう言えば
薬員の子が
オ・アムがまた何やら
やらかしたと言っていたな
明日
サラに話を聞かなくちゃ

ウンスは疲れた体を
少しでも休ませることだけ
考えて目を閉じた

タンは健やかな寝息を立て
深い眠りについている

せっかくの休みが
全然一緒にいられなかったね

発疹はまだ消えてはいない
この分だと
明日も育児室には
連れて行けないか?

ウンスの頭の中を
チェヨンとタンの顔が
ぐるぐる回っていた

こうなること
予想してたから?
だから運気調息したの?
熱のあるタンを
置いて行けなくて?

チェヨンなら
それくらいの見通しは
立てるだろうと
ウンスは思った

それにしても
寝台が広い
こんなに広かったっけ?

ウンスは頭を振って
布団をかぶり
ひたすら寝ることだけに
集中した


━─━─━─━─━─


海に通じる河口に
わずかな手勢を率いて立つ
チェヨンは
真っ暗な目の前の海を
見渡した

荒れ狂う海は
遥か向こうに見える
敵の船の動きを封じている

倭寇はこの時期
この地に集まる穀物を狙い
はるばる海を越えて
やって来た
手ぶらで帰るはずがない


多いな
此処からでは雷功も使えぬ


はっ


隣に控えるトクマンが
答えた


船は
ざっと四百といったとこ
でしょうか?


そんなところか
嵐で自滅してくれたらよいが
沖に逃れたまま停泊し
長期戦になるかも知れん


はっ


トクマンは身震いした
久方ぶりの
チェヨンと一緒の戦

倭冦の船はいつもよりも
ずっと多かった
いくら雷功の使い手とは言え
遥か沖の船までは
その威力は届かない
早く戦を 終いにしたい
チェヨンの苛立がわかる

そして
チュンソクもいない


赤ん坊
無事に生まれてよかったです


その場には似つかわしくない
とんちんかんな話だが
トクマンは言わずには
いられなかった

チェヨンが
チュンソクを王宮に残すために
愛しい妻子を残して
自ら先陣を切ったことくらい
トクマンといえどもわかる

この方のためにも
隊長のためにも
負けるわけにはいかない


チュンソクへの祝儀だ
赤ん坊のためにも
此処から一歩たりとも
敵を通してはならん
とっとと片をつけ
都へ戻るぞ


チェヨンはきりっと
敵方を睨みつけた


はっ 上護軍


今宵は河口まで
近づけまい
見張りを交代で置いて
他の者は待機だ
陣営に戻るぞ


はっ!


いっそのこと
大嵐になって
倭冦船がすべて沈めば
よいものを


チェヨンの願いが通じたのか
嵐はますますひどくなって
いった


━─━─━─━─━─


翌朝
天候は回復せず
雨がトラジの花に容赦なく
降っていた


ヘジャとオクリョンは
そのまま王宮の邸に残り
タンの子守りをする
ウンスはタンを任せて
典医寺に行くことにした


奥様 これをポム様に


ありがとう


朝餉で食したアワビ粥を
ヘジャはポムの分も
用意していてくれた


それからこれは隊長様に


キンパや野菜の煮付けが
ぎっしりつまったお弁当


ありがとう ヘジャ
助かるわ


久しぶりに 料理の匂いが
集賢殿に立ちこめた
ウンスはタンに


なるべく早くに戻るから
いい子にしてるのよ


ちゅっと口づけた
集賢殿の周りは
チェ尚宮の配慮で衛兵が並び
タンの警備に着いている


オ〜〜オ〜〜〜


タンがウンスを
呼ぶ声がする
振り返って駆け寄り
もう一度抱きしめると
武閣氏とともに
典医寺に向かった


母子ともに異常なしと
宿直の医員に報告を受けたが
ウンスは朝一番に
病室のポムのもとを訪れた

幸せそうなポムが
赤ん坊の顔と文字を
見比べながら微笑んでいる
その隣でチュンソクが
ポムの手を握っていた

ウンスが入って来たことに
最初気がつかなかったようで
驚いた様子で ポムが言った


医仙様 
名前 見ちゃいました?


え? ええ まあ
一瞬だけど・・・
それに 私 
漢字がいまいち読めないし


そうでするか
でも医仙様には
もうお披露目して
構わないですよね?旦那様


ああ


旦那様がお父様と
お話ししてから正式に
決まるですけど
みんな反対しないと思います
あのね・・・


白い紙に墨で
きっちり書かれた一文字


『勉』


ミョンと言いまする
医仙様
努力家で一生懸命で
何事にも手を抜かない
旦那様らしい名付けだと
ポムは思うでする
ねえ ミョン 


ポムはうれしそうに
息子に向かって言った


*******


『今日よりも明日もっと』
大切な人のために
幸せであれと 祈りを込めて



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


勉(ミョン)
努力家になりそうな予感
(///∇//)
どんな風に成長するのか
楽しみです


またおつき合いくださいね



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