閨を後にして
チェヨンは再び兵舎に戻りトクマンが聞き出した
少年らの調べ書きに
目を通した
月半ばにいつも現れると言う
人買いの噂
元より海賊船でやって来る
ということくらいしか
少年たちも知らないようだった
何と言っても
初めて売り飛ばそうと
思った相手がポム
分が悪すぎた
罪人にならずに済んで
幸いだったな
チェヨンは呟いた
トクマン
明日
チュンソクが出仕したら
嫁御の話も合わせて
まとめておくよう伝えろ
この国の弱き民たちを
金で買っていくなど
決して許せぬ
イェ!
トクマンがきりりと
返事をした
チェヨンは
王様への報告は
全貌を
明らかにしてからだと考え
チュンソクの代わりに
雑務をこなしてから
邸に戻ることにした
兵舎の外に出ると
ちらちらと雪が
降り始めていた
チェヨンが
邸に戻ると庭先まで
ウンスが走り出して来て
どん!と胸に飛び込んでくる
いかがしたのだ?
帰ってくるのが
よくわかったな
タンは?
今はヘジャが見てるわ
だってさっき
気がついたらヨンは
兵舎に戻っていたから
帰ってこないかなって
タンと
ずっと外を眺めていたのよ
目が覚めていなくて
寂しかったのか?
イムジャも
タンと同じ赤子のようだな
ウンスがちょっと
照れながら頷いて
チェヨンにしがみつく
また寝入ったイムジャが
目覚めた時に
暗くないようにと
灯りをつけて
閨を出たんだが
それでも
目覚めた時にいないと
がっかりよ
タンがいるではないか
それはそうだけど
今日は甘えたい気分なの
甘ったれイムジャだな
ふふふ
たくさん寝たから
なんだかすっきりした
ヘジャが美味しい夕餉を
作ってくれたの
お腹すいちゃった
そうか
くるくる変わる表情に
チェヨンは笑って
ウンスを
ぎゅっと抱きしめてから
さて中へ入るか
雪が降っているゆえ
からだが冷えるぞ
ウンスの髪についた
雪を払った
昼間は春だと思うくらい
暖かな陽射しだったのに
ずいぶん冷えて来たわね
チェヨンに
肩を抱かれながら
ウンスが言った
そうだな
あのな イムジャ
飯を食いながらで構わんが
耳に入れて置きたいことが
あるのだ
さっき言ってたこと?
昼に戻れなかった訳ね
ああ
どうせ明日になれば
本人が黙っていられぬ
だろうからな
驚かないようにと思ってな
実は ポム殿のことだ
え?ポム?
何かあったの?
心配はいらんぞ
もう終わったことだ
ちゃんと解決したし
ポム殿は傷一つ負ってはいない
ああ そうそうそれからな
チャン・デホの娘が
イムジャに
よろしくと言うてたぞ
ポムにキンスさん?
なんのこと?
さっぱりわかんないわ
追い追い話すゆえ
まずは飯だ
チェヨンの返答に
わかったわ
ポムは
大丈夫なんでしょう?
チェヨンが頷くのを
確認してから
ヘジャ 旦那様のお帰りよ
夕餉の支度をお願いね
奥の間の隣の
寝台にいるタンを
あやしていたヘジャに
声をかけた
はーい ただいま
ヘジャにお任せを
ウンスと入れ替わりに
ヘジャは厨房へと急ぐ
タンは足を伸ばしたり
縮めたり ばたばたしながら
寝台で遊んでいた
ウンスとチェヨンを見つけると
二人の方にゴロンと横になり
勢いあまって回転した
あ!
見た?
ねえ見た?ヨン
ああ
寝返りしたわよね
ね
寝返りよね!
きゃー すごーい
タン すごいわね~
ウンスの顔がほころんだ
当の本人は
なんでうつ伏せになったか
わからないみたいで
キョトンとして
ウンスとチェヨンを見上げた
あ~あ~うっ うっ
なんだかすごいわね
昨日までできなかったことも
こうして一つずつ
出来るように
なっていくんだもの
ウンスの優しい笑顔に
チェヨンは見惚れながら
そうだなと頷いた
ウンスはまだ興奮が
冷めないようで
頬を薔薇色に染めて
タンを見つめている
こうやって
俺たちも父上や母上に
見守って貰ったんだろうな
うん そうね
きっとそうだわ
ヨンの寝返りもきっと
お母様が見守っていたわよ
そうだな
ウンスはチェヨンの腕に
腕を絡めた
チェヨンとふたり
男と女でいる時も
夫と妻でいる時も
父上と母上でいる時も
どれも大切な時間だ
ヘジャがいい匂いのする
鍋を持って奥の間に
戻ってきた
お魚のどっさり入っている
海鮮鍋
湯気は幸せを運んでくる
ウンスはそう思った
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『今日よりも明日もっと』
一緒に見守っていきたい
どんな時も
どんなことも
あなたの隣で