屋敷に戻り 買ったものを
玄関先にひろげると
ウンスは 思案顔


あら そう言えば
私 人を縫うのは得意なのに
布を縫うのは苦手だったわ


横からヘジャが


わたくしでよろしければ
お役に立てるかと


あら ほんと?
助かるわ



ウンスが
ほっとした顔を見せた


イムジャ 縫えもしない生地を
こんなに買ったのか?


チェヨンがやや呆れ顔で
ウンスに尋ねる


ええ いざとなったら
王宮のお針子さんに
お願いしようかなんて
虫がよすぎたわね


ウンスはぺろっと
舌を出して笑った


それにしても何にするのだ
このようにたくさんの生地


だっ かっ らっ
あなたにはまだナイショ


夫婦で隠し事はなしであろう


チェヨンがむくれる


すぐにわかるわよ
今日もいっしょに
湯浴みするでしょう


あ?
ああ
なんだが体よく
誤摩化してないか?


してない してない
うふふ


ウンスは笑った


さあ ヘジャ
じゃあこれを
頼もうかしら?
直ぐ出来る?


ああ これならば直ぐに


そう よかった
じゃあ ヘジャに
縫い物をしてもらう間
今宵は 私が
夕餉の支度をいたそう


ウンスが戯けて言った


奥様 夕餉の支度なら
もう整っております
召し上がりながら
お待ち下さいませ


ありゃ うふふ
さすが ヘジャね


*******


夕餉の卓を囲みながら
スヨンと話したことを
チェヨンに伝えた


ねえ 私達を見て
もう一度 やり直そうと
思ったんですって
うふふ 私達そんなに
幸せそうにみえるかしら?


み?みえる??
イムジャはどうなのだ?


さあね?


さ さあ? ね?
それは 俺といて幸せじゃ


ばか
そんなわけないでしょう
もう 戯れ言にもすぐ
ムキになるんだから
ふふっ


ウンスは箸を止めると
まっすぐチェヨンを見つめて
微笑んで言った


幸せよ
これ以上ないくらい
だから この幸せを
失いたくないわ


チェヨンが
自分の膝をぽんぽんと叩き
ウンスに言った


おいで 


まだ ごはんが少し残ってる


かまわぬ
なんだか無性に・・・


チェヨンが
言い終わらぬうちに 
ウンスは膝の上・・・
チェヨンの胸にしがみつく


幸せよ 決まってるじゃない
ヨンを あいしてる
だから 絶対 
私をひとりにしないで


ウンスがチェヨンにそっと言う


ああ 決して


重ねた唇
口づけはチェ家のジャンの
味がした


いつの間にかやってきた
ヘジャがごほんと咳払いをする


あら? 
まさかもう終わったの?


ウンスが丸い目で尋ねる


あの程度のこと
朝飯前にございます


ヘジャが胸をはって言った
そして2人に向かって


湯殿の支度が整いました
夕餉がお済みでしたら
どうぞ 湯殿へ
なんなら 旦那様が
そのままお運びになられては?


ふと 自分がチェヨンの
膝の上で抱きかかえられている
ことを思い出し
慌てて降りようとするウンス


いまさら 遅いぞ


チェヨンが笑う


はい いまさらでございます


ヘジャが平然と答えた


飯はもうよい
先ほどの布地
どんな仕掛けなのか
湯殿に行けばわかるのか?
気になるゆえ
早う参るぞ


チェヨンはヘジャが言う通り
ウンスをさっと抱き上げると
そのまま湯殿へと向かった


********


ふたり仲良く
湯船の中


チェヨンが手のひらで
水鉄砲と作り
湯船のお湯を飛ばしている


もう ヨンたら
子どもみたい


ウンスには
みぃが大きくなって
湯船の中で チェヨンと
水鉄砲でお湯を飛ばしあう
そんな光景が見えた

衣を脱ぐと
お腹がぽんと丸いことが
わかる自分のお腹を
慈しみながら
チェヨンを見つめる

チェヨンはふるりと丸く
豊かな妊婦の胸を
美しいと思いながら
ウンスを見つめた

互いを確かめるように
どちらからともなく
触れる肌

湯殿の中に暖かな湯気が
ぽわぽわと
浮かんでいた


湯浴みを終えて
脱衣場で ウンスは
さきほどヘジャが
あっと言う間に縫い上げた
白い布をチェヨンに渡した


あのね 買った布の一部で
ボクテ(腹帯)もどきを
作ってもらったの


ボクテ?


ええ あまりきついと
苦しいから苦手だけど
これ 巻いてくれる?
みぃの寝床に


ん? これを?


うん 
ほんとはね 天界式はもう少し
違うんだけど
ここは高麗だもの
これで代用ね


そうそう そうやって
包帯の要領で
うふふ 思った通り上手ね


ウンスが感心する


みぃも喜んでいるわ
父上に守ってもらって
いるみたい


あたりまえだ
イムジャとみぃのことは
何があろうと俺が守る


うん 
あ! けった!
みぃも よろしくだって


ウンスが笑う


そうか みぃにも
わかるのか
いい子だな


チェヨンはボクテを巻いた
ばかりのお腹に
そっと口づけた


明日は 晴れそうだ
雲ひとつない夕空が
ふたりの頭上に広がっていた


*******


『今日よりも明日もっと』
ささいな毎日が
積み重なることを
幸せと言う



★ゆーぴょん様
腹帯のエピソードありがとう
ございました (*^▽^*)
ウンスもまねしてみました


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