20メートルくらいはあるだろうか?

 

大きな影だった。

 

頭の上を横切るように不意に現われ、そして「ずぅぅぅぅ・・・」と地響きのような音をたてながら気配が揺れた。

 

ふと見ると体の三分の一ほどが消えたまま、そこに縫い留められたように動けなくなっていた。

 

見えない者達が、長い真っ直ぐな道を進んでいる途中で、進行方向に対して垂直に遮る力が働くと、それだけで動けなくなることがあるが、どうやらこの大きな影にも同じ事が起こっているようだった。

 

これは直線に対して一定方向に働いている力を、途中で遮ることで力の行き場を無くすというシンプルな結界の原理で、私はまじないの一部に使うこともあります。

何台か車が走り去って行ったので、その動きの連なりが運悪くこの影の進む道を遮ることになったのだろう。

 

放置しておいて何か害があってはいけないと思い、影に向かって「道を結び直して良いか体に触って良いか?」を確認してから手をつける。

 

体を元に戻してから道を結び直す作業に入ったのだが、体が元に戻った途端アレコレ話し出し、その内容が内心「やっかいだな・・・」と思った。

 

影はどこかの神様の使いらしく、その使いの道を遮り、体の一部を奪ったことが不敬であると罪を断じていた。

 

そしてこの断罪のエネルギーの行先は誰でもいい、道を遮った本人でもいいし、手を差し伸べた私でもいい。

 

道を結び直しながら、「魔法のランプに千年閉じ込められた魔人は、千年のストレスを自分を自由にしてくれた人にぶつける」と言う話を思い出す。

 

「千年やったらまぁ分からん事ないけど、2分やそこらでどんだけ短気やねん、ようそれで神様の使いでけたな」と思いながら結び直しの仕上げをした。

 

もちろん仕上げた瞬間に断罪はされたくないので、直線の4ヶ所を直角に曲げておいた。

 

これも結界を使ったまじないの一つで、力の作用点をずらして怨恨や嫉みを迷子にするのに役立つ。

 

 

今日の見えない人でした。