■見えない人・改(あらため)
ぱんだ 少女の足抜けを手伝うの事
 
白い少女が立っていた。
 
白く美しい輝きに包まれながら、どこか恨めし気な悲しい目をしていた。
 
近寄ってよく見ると、白く輝く体のあちこちが欠けていたり表面が削れていた。
 
「どうしましたか?」と聞くと、だまって私の背中に負ぶさってきた。
 
人の言葉であらわせば、悲しみ、不安、諦め、そして憤りになるだろうか?
 
背中の少女から伝わってくるものに申し訳ない気持ちなった。
 
少女は大樹に宿る精霊の類で、土地由来の神様のお使いとして成り立った者だった。
 
彼女から伝わるイメージを見ていると・・・
 
いつの頃から樹に抱きつく者、手の平で強くなでまわす者が増えてきて、それが辛い事、中にはお酒や塩水をかける者がいて、それが苦しくて仕方がない・・・そんな事がわかった。
 
『自分を敬い、労わり、そっと訪れる者ならば、お互い生きる者としてその命を分け合う事も厭わない。
 
しかし多くの者は自分を乱暴に扱い、ただ奪い、穢れを押し付けて行く。
 
自分に力が有れば下郎どもを懲らしめてやれるものを・・・』
 
そこまで知ると申し訳なさしかなかった。
 
背中の少女の緊張が高まり、なんともやるせない感覚が伝わってきた数舜後、前方から衣服に木の皮の欠片を付けた人たちが、「いっぱいもらった。いっぱいもらった。」と満面の笑みで近づいてきた。
 
少女の宿っている樹は、一部がエグレ補修されていたり、木肌が薄れてテカテカになっていた。
 
「この姿を見て、まだ貴女から奪って行くのですね。」と、そう言う私に少女は「ここでないどこかに行きたい、こんな所に生れたくはなかった。」と返してきた。
 
自分が宿る樹の前を通り過ぎても、少女は私の背中から降りず、本当にここでないどこかに行きたいのが分かった。
 
「それでは足抜けいたしますか?手前きっと無事に連れ出してみせます。」と伝えると、初めて少女から喜びが伝わってきた。
 
土地の神様に七つの約束事をして、少女は無事に今我が家の庭木に仮住まいしている。
 
今日の見えない人でした。