ゆっくりでよかったんだね
福岡市の中心街にある大きな赤いビルで働いていたときは、いつも上へ、上へと「上昇」することだけを目指していた。
シェア拡大、スピードアップ、競争力の向上、売り上げ増。世の中も、「上昇」と同義語の「成長」が善とされた。それを公約にせずに選挙に勝てる政治家はほとんどいなかった。
東日本大震災を機に「転換」が合言葉になった。それでもまだ、社会は「成長」を引きずっている。
体調を崩し、サラリーマンを人より少し早く辞めた。上昇を捨て、ゆっくりと「下降」することを念頭に生きようと思った。
締め切りに追われることはなくなった。
時間はたっぷりある。
料理を作る。
野菜を作る。
弁当箱を作る。
テーブルや書棚を作る。
建具や床を塗装する。
気乗りしない飲み会には行かない。
収入は減ったが、支出も格段に減った。
意識をちょっと変えただけで、
人生が豊かになった。
家族の会話が増えた。
気づくと体調も回復した。
あのころ、なぜ、あんなに「上昇」を目指していたんだろう。
どうして、生き急いでいたんだろう。
亡き妻のブログを読んだ。
絶妙のタイミングで、今の僕が読むべき本を紹介してくれていた。
以前、この本を読んだのは、休みなく働いていた17年前。
もう一度、読んでみようと思う。
新たな気づきがあるかもしれない。
わたしたちは、何を急いで生きているんだろう(2008年4月30日)
ここのところ、佐賀にお邪魔すること多し。
2008年4月29日
何をするでもなく、人ん家の庭の縁側でごろんと横になったり。
人の家の庭の大きな岩の上でごろんと横になったり。
木に寄りかかって目を閉じたり。
森の中でマイナスイオン浴びたり。
佐賀には、素敵な人々が、自分らしく生き生きと生きている。
そんな佐賀と福岡を結ぶ三瀬ループ橋が、今秋完成する。
それはそれは立派な橋だ。
これで、福岡佐賀間が、15分短縮されるらしい。
・・・
15分。
たかが15分、されど15分。
人間には、急がなければいけないときも確かにある。
でも・・・
ループ橋の下の道には、緑がいっぱいあるのに。
いままで、その緑を楽しみながら山まで行くのがよかったのに。
ループ橋の総工費はうん十億円とかなんとか。
そのお金、他にもいっぱい使い道ありそう。
そんなニュースを耳に入れるたんびに、
私たちは、何をそんなに急いで生きているんだろうなあ、と思うようになった。
これを読んでから、特にそう思うんだ。
で、これを読んでいたら、本の中で見覚えのある本が紹介されていた。
「ん?!」と思って、自分の本棚を見に行くと、同じ本がありました。
これは、私が大学1年生のとき、
父が「この本は読んどけよ。お前の人生の宝になるから」と言って手渡してくれた本。
こんなに近くにあったのに、
10数年間、ほとんど開かれることなく本棚にたたずんでいたのだ。
父からこの本をもらったときに、ちらっと読んだだけだった。
正直、その時は、ちっともわからなかった。
でも、今ならよくわかるんだ。
父と話したくなった。
まあ、今、父と話すとなると、あの世まで行かなくちゃなんないから、
できれば、この世でこれからの世の中のできごとの成り行きをもう少し見届けたいもの。
私の父さんは、何の勲章も賞もない人だった。
でも、私にとっては偉大。
父を超える人になるのは、私が56歳まで生きること。
56歳を超えたら、わたしは、どんな思いでこの本をもう一度読んでいるのかな。
お父さん、やっぱり、
「ゆっくり」でいいんだねえ。








