3年前の夏、私はトコトコ青山を歩いていました。

青山には、当時、新風舎という出版社がありました。

「あなたの本を出版します」というお定まりの広告に釣られて原稿を送ったら、

「出版しましょう。説明だけでも。片道出します」

「片道出します」に釣られて、20年ぶりの上京となりました。

東京の友人にも会いたかったし、

出版社というものも見たかったし、

編集者という人種(ごめんなさい)も見てみたかった。


私のため集まってくれた友人にも会い、

新風舎で丁寧な説明を受け、

全ての用事を済ませた後、


二箇所、立ち寄りたいところがありました。

西麻布のアウトドアショップ スポーツトレイン  と   万年筆専門店。



地図で調べると、青山墓地のそばに、

新風舎、アウトドアショップS・万年筆老舗が、一辺1.5㎞のトライアングルのようにありました。

その前の年、私は脚の手術を受けたばかり。タクシーでぜーんぶまわりました。


出版のお話は、私のほうも費用を持たないといけないので、ボツ。


次に立ち寄ったショップSは、

1970年代、

アウトドアというと登山用品が主流、キャンプも体育会系の精神主義が多かった時代、

「楽しくくつろぐ」ためのキャンプ用品を売り出した、草分け的な存在のお店です。

キャンプ大好き、おたくな私は、見るだけで目の保養なお品ばかりでした。


ここでは冷やかしであるにもかかわらず、コーヒーをごちそうになりました。

カウンターがお店の奥にあって、店長やスタッフの方、目とお肌の綺麗なお嬢さんがいらして、

立ち寄る常連のお客様と楽しくおしゃべりしている・・・そんな感じで。


実はこの店長さん、さる著名な映画に、家康役で出演された俳優さんです。

ひととおりおしゃべりして、お店のものも見せていただいて、


次に寄った万年筆老舗。

当然のことながら、お店中、万年筆。

ガラスの中をのぞき込み、ため息。

またまた、見るだけで一時間過ごしてしまいました。

お店の裏庭は、塀で囲まれて、カフェになっています。

いちばんお安いグレープフルーツジュースが、¥900。

はしたないのですが、もう一度繰り返します。

きゅーひゃーくーえーん。でも、心中はおくびにも出さず、

いつもいただいております という風情で、にっこり。

さりげなく注文し、東京での最後の時を過ごしました。

言いたくはございませんけど、10杯分で、片道の運賃になってしまいます。(*^。^*)


どうして今日この記事になったかといいますと、

マイパソコンを息子に占領されて、父母の画像をアップできない→介護について書けない からと、

テレビのインタビュー番組に、かのアウトドアショップの店長さんが出ておられたからです。

白いお髭で、円熟して、ますます素敵になっていらっしゃいました。


3年前、東京から帰ってすぐ、お世話になった方たちに、お礼状と共に四国の銘菓をお送りしました。


その三日後、電話が鳴りました。低い、聞き覚えのない男性の声です。

「**さんのお宅ですか?」

「はい、そうですが」

「**XXXXさんのお宅ですね」

声は、地底から響いてくるようにますます低く、私のフルネームを確かめます。

「はい、そうですが。どちらさまでしょうか?」

と、一挙にトーンが変わり、明るい大きな声でお菓子のお礼を述べられたのは、ショップの店長さん。

たべものなので、確認されたものと思われます。


受話器を置いた後、じわじわ、実感が迫ってきました。

東京での二日間はあっという間に過ぎたから、夢の中の出来事のよう。ほっぺたをつねったりしていまし

たが、

やっぱり、本当に行ったんだ。

それにしても、やっぱり俳優さんはすごい。あの声。

まさしく地の底からよみがえってきた、徳川家康の声だったのです。