
弐〇〇八年 八月**日
神戸は、暑かった。
異人館めぐりをしていた私は、英国館の二階の窓にうつった人影を見て、あやうく声をあげそうに
なった。
‘あの人’が、神戸に?
まさか!
そんな!!!!!
「XXX 円です。他の異人館も廻れるおとくなチケットもございます。いかがですか?」
「持ってます!!!」
チケットチェックのおばさんに説明するのもまだるっこしく、私は館内に走りこんだ。
ひんやりした、真昼でも薄暗い一階……。
どっしりしたアンティークの家具や、イングリッシュティーカップなどが展示されている。
突き当りには、毎日5時から開かれるというバーのカウンター。
若いカップルが楽しそうにおしゃべりしながら、携帯カメラにおさめていく。
私は、とにかく二階への階段を探して駆け上がった。

ベーカー街 221番地
コツ、コツ。 ドアをノックすると、太ったご婦人が出てきた。
「****さんにお会いしたいのですが」
「どうぞ、こちらへ」
案内される廊下に、おいしそうな匂いが漂っている。
一つの部屋のドアが開けたままになっていて、テーブルに並べられた朝食が見えた。

どこからかバイオリンの音が聞こえ、だんだん大きくなって……。
コン!コン!
「****さまに、お客様です」
「ありがとう、ハドソン夫人」
一人の男性が私を部屋に招き入れ、暖炉のそばの椅子に座らせてくれた。
正直そうな暖かい目。
‘あの人’の相棒にちがいない。
バイオリンはまだ続いている。
音色に引き込まれそうになりながら、私はゆっくり部屋を見回した。
思い描いていたより少し狭く、すべてが小作りである。

窓際のカーテンの内側に、‘あの人’の胸像が置かれている。
犯人に在宅と思わせ、安心させるために置かれたものだ。
机の上に並べられた、ビーカーやフラスコ・アルコールランプなどは、化学の実験用。
事件解明のための。
壁には、ムチ、ボクシングのグローブ。
美しい女性の写真の隣に、ビクトリア女王の肖像画がかけられている。
女王の方は、穴だらけだ。
‘あの人’がダーツの練習に使っているからで、いつか、その相棒が、
「あきれたものだ」と書いている。
部屋の奥には暖炉があり、石炭が勢いよく燃えていた。
夏なのに、少しも暑くない。どころか、私は、さっきからぞくぞく寒気がしている。
「あ!?」
窓の外。
猛暑の神戸ではなく、陰気な街並みと、ガス灯と、スモッグたちこめる灰色の空が見える。
そう。ここは昔のロンドン。
先ほどのイギリス男性は、‘あの人’の相棒、ワトソン氏。
そして……
バイオリンの音がやみ、その人が、暖炉前の椅子に愛器と弓を置いた。
私は立ち上がり、握手の手を差し出した。
「はじめまして。
小学生のころから、あなたの大ファンでした。
こちらのワトソン氏が記録された、あなたの事件は、すべて覚えています。
お会いできてうれしいです。
シャーロック・ホームズさま」
というわけで、前回のクイズの正解は、 シャーロックホームズ でした。
偶然、きのうのNHKニュースで、
このシャーロックホームズの部屋が出ていました。
一年前、英国館に再現されたそうです。
読み返すと、私もかなり‘おたく’ですねー。
このあと、ですか?
ホームズさんは事件が入って出かけてしまったので、
私は
「ご自由に変装しておたのしみください」
と掛けられてあった
ホームズ時代の男性用帽子・マント・ステッキを身に着け、
英国館の窓からガーデンなど眺め、
一時間半ほどもあそびました。
私自身の相棒を待つための時間つぶしではありますが、
その部屋で一時間半もひとり遊びできるとは、
シャーロキアン=シャーロックおたく と呼んでくださっても結構です。はい。
♪ ホームズ様のためならば ♪
そこでばったり知り合ったのが、私のブログお友達第一号のさゆみんさんです。
彼女は一人旅で、変装した自分を撮ろうとしていて・・・・・
お互い、女シャーロックになって、撮りっこしました。
お別れするとき、Yahooブログのお話を聞き、おもしろそうだなと。
それで、神戸から帰って、私もこのブログを立ち上げました。
お世話になってます!
<今日の記事の前半はフィクションであり、実在の人物・団体とは、何等関係がありません。>
<英国館・ホームズの部屋・ロウ細工のイギリスの朝食は、たしかに展示されていて、おすすめです>
