黒田研二さんの「ウェディング・ドレス」(講談社文庫)

 

  祥子は31歳。不器用で口下手、引っ込み思案なフリーター。現在、喫茶店でアルバイトしながら、細々と童話を書き続けています。ヒロインはいつも泣き虫の女の子。

  そんな彼女が、母親の四十九日の法要の帰り道に出会った男。それが、3歳年下のユウくん。彼は、何から何まで祥子とは対照的。あっという間にふたりは恋人になり、3カ月後には、ユウくんからプロポーズ。もちろん、祥子はOK。おさない頃から通っていた小さな教会で、なじみのキング牧師に結婚式を挙げてもらうことに決めます。

  そして当日、祥子は母の形見のウェディング・ドレスを着て、ユウくんとともに教会へ。ところが指輪を忘れたユウくんはとりに戻ります。待つ祥子。そんな彼女のもとにかかってきた電話。ユウくんの同僚だという男はユウくんが事故に遭ったと告げます。やがて、迎えの車に乗った祥子を待っていたのは、誘拐とレイプという残酷な運命でした。もうろうとした意識のままま逃げ出した彼女が見たのは、荒野に建つ黒い建物「悪魔の館」。かつて惨劇が起こった舞台でした。そして、館内には、全裸でハリツケにされた銀色の髪の美少女が。

 いったい、何が企みで、何が真実なのか・・・・・・

 

 

 2000年、第16回メフィスト賞の受賞作。

 過去のメフィスト賞の受賞履歴をみて、感じたのが、すでに絶版になっている作品が多いこと、そして、作家さんたちも「過去の人」になってしまっていることが見られることでした。

 これから、ぽつぽつと、かこの受賞作を読んでいきたいと思います。

 

 この「ウェディング・ドレス」も絶版ですが、文庫化されるまでは「もった」ということになるので、扱いとしては、まあ、そこそこだと思います。

 

 おどろおどろしいプロローグから、一転、本編に入り、第2章に突入したところで、かなりの人が「あ、これは、”あの”パターンね」と気づいてしまうのでは、と思います。2000年当時なら、斬新だったのかというと・・・・・・これは、もうあの”名作”や、同じメフィスト賞のあの”先行受賞作”がありますから、ミステリー界に”貢献”したとは言い難いかなというのが、正直な感想です。

 あえて言えば、登場人物をふやし、オカルトAVをからめ、プロットをやたら複雑にして差別化をはかったとういうことなのでしょうが、作者の意図は、みごとに空回り。稀に見る「複雑怪奇な」改悪版となってしまっています。だいたい、このパターンの作品はキャラが少なければ少ないほど、そしてメインプロットがシンプルであればあるほど、効果的なのですよね。

  しかも、 致命的な欠点が。これって、ちゃんと、キャラの描き分けをしているの?という疑問が湧き起る。特に男キャラ。佐竹さんだけはどうにか判別できるけど、三笠も五條も大貫も諸原も・・・・みんな金太郎飴キャラ。特に〇〇と〇〇の書き分け。重要ポイントでしょうに。なので、肝心のあの場所で、驚けないし、騙された感も・・・・はっきり言って、”無い”! 似たようなキャラたちが並ぶ中、それって誰?状態。 完璧置いてけぼりです。

 

 この種の作品はネタバレを避けるために、アマゾンのレビューの先読みは厳禁なのですが、これに関しては、たぶん見ても大丈夫。

たぶん、ちゃんとオチを理解したうえで書かれたレビューは存在しないのでは、と。理解するために再読するのも、なんだか面倒だという困った作品です。

 

 論議をかもしている「悪魔の館」の密室殺人トリック。確かに、あれはねぇとは思いますし、否定派が多いですが、歌野晶午さんの「長い家」のアレが許せるならと、広い心で許容できなくもないと思います。

 

 それにしても「小説になってない」「キャラが書かけてない」と、当時酷評された綾辻行人さんの「十角館」。今にしてみれば、輝ける金字塔というにふさわしい名作ですね。島崎藤村の「桜の実の熟する時」は歴史に埋もれても「十角館」は輝き続けるとおもいます。

 

 黒田さん、その後どうなさったかというと、RPGツクール作のフリーホラーゲーム「青鬼」のノベライズを書かれているようです。

 

 「青鬼」はフリーゲームの名作。ホラー好きならぜひ一度、挑戦を。

 でも・・・・・少なくとも私は小説版を読みたいとは思わないです。