鳥飼否宇さんの「隠蔽人類」(光文社)

 

  アマゾンの奥地で白色人種の村が発見されたという報告が。教授の日谷は、それがホモサピエンスとは別種の人類、つまり、隠蔽人類なのではないかと疑問を投げかけ、調査隊を組織します。

  アマゾン川をさかのぼること数日、日谷の一行はついに目的の地、キスギ族の村にたどり着きます。村の住民たちは、みごとなまでの純血白色人種。言葉も、周辺の原住民たちとは異なります。持ちこんだ酒で、キスギ族の友好を勝ち得た教授たち。さっそく隊員の尾崎と、キスギ族の美女ミラの血液を採取し、DNA鑑定します。両者のDNA構成はまったく異なったものでした。隠蔽人類発見と沸き立つ調査隊を前に、日谷がとった驚くべき行動とは?

 

 

  たいへんに面白いSFミステリーです。これがミシュランだったら、文句なしに五つ星です。

 

  ミステリー部分を支える謎はただひとつ。隠蔽人類は誰なのかということ。

  このたったひとつの謎をめぐって、二転三転するストーリー展開。いや、これほど、小説のストーリーというものに引っ張りまわされたのは、久しぶりの体験でした。次々に判明する思いがけない事実(らしきもの)。トンデモと紙ひとつのキャラたちの動向。ストーリーを追うだけで、ワクワクします。しかも、本格推理的エピソードあり、復讐劇ありと、けっして読者を退屈させないサービス精神。

 

  そして、あきらかになる、本当の真相。

 

  真相が明かされたあとの第5章は蛇足に感じられましたが、現代世界というものの現実を描写するなら、やはりこれはきちんと書かれるべきエピソードなのでしょう。

 

  読み終わって、余韻を堪能しつつ、浮かんだ疑問がひとつ。

  隠蔽人類が誰なのかは明らかになりました。しかし、”そんなこと”がほんとうに可能なのかということ。

  無理があるような感じもしますが、壮大なスケールの真相は極めて魅力的なので、ここは素直に受け入れたい気分です。