横山大さんの「仮面の君に告ぐ」(講談社)

 

   目覚めた時、涌井和沙は病院のベッドに寝かされていました。何が起きたのか、全く覚えていません。そんな彼女に看護師は「森さん」と呼びかけ、ベッドには「森千鶴」という名札が。鏡を見せてもらうと、映っていたのは見知らぬ女の顔でした。

   さらに、和沙は”涌井和沙”が一年前に殺されていたことを知ります。

   結婚寸前だった恋人、早田慎介のもとを訪れても、もちろん彼には気づいてもらえません。しかも、慎介は歯科医の仕事をやめて物流センターの作業員となり、小さな安アパートに引っ越していました。

   和沙は森千鶴の弟、アニメオタクの潤にすべてを語ります。半信半疑だった潤を納得させ、彼の手を借り、慎介のアパートの隣の部屋に引っ越すのですが・・・・・・

 

 

   ふくちゃんさんのブログ、”つる姫の本の館”で紹介いただいた一冊。

   https://hama-sush-jp.pro/kaguya294/entry-12368661483.html?frm_id=v.mypage-checklist--article--blog----kaguya294_12368661483

 

   和沙が千鶴のからだを借りていられるのは10日間だけ。この期限内に、和沙がやらなけれならないこととは、いったい何なのか。

 

   和沙は慎介が転職と転居をした理由を探り当てます。和沙を殺した容疑で逮捕されたものの、証拠不十分で釈放された男、矢田部への復讐のためではないか、と。10日間は慎介を説得して、復讐をやめさせるための期間ではないのか。

 

  最初はその役目がすんだら千鶴にからだを返そうと思っていた和沙。しかし、慎介が彼女が和沙であることに気づき、彼に恋人として接していくうちに、迷いが生じてきます。10日を刻むタイマーかわりの時計をこわせば、このまま千鶴のからだに留まっていられることに気づいた和沙。潤は、それもひとつの選択だと述べます。潤にも和沙への情が生じていたのでした。

 

  そして、判明する和沙殺しの真相。

 

  時計をこわすのか、こわさないのか、和沙の選択は? 

 

  正直言って、よくできてはいるが、ありがちなミステリーだと感じながら読んでいました。

  しかし、ラストの大どんでん返しがすごい。こんな展開を誰が予想したでしょうか。驚きが鎮まってから再読すると、一見ありふれたストーリーから、まったく別の物語が浮かび上がって見えてきます。しかも、伏線のどこにも矛盾がありません。これは、すごい作品だと思いました。

 

  余談ながら、千鶴の弟、潤のキャラがとても良いです。ただのオタクなんですけどね。