七尾ナナキさんのマンガ「ヘルク」(裏サンデーコミックス)

 

   魔界の一角で、ある魔王が勇者によって倒されました。

   3か月後、魔界では、倒された魔王に代わる新魔王の座をめぐって、新魔王決定戦が開催されます。責任者は、魔界四天王のひとり、美少女ヴァミリオ。大会参加者の平均レベルが45(強めの戦士がレベル30くらい)と聞き、ヴァミリオは期待を大きくします。

   ところが、予選を勝ち抜いた猛者たちの中に、ひときわ強い男が。男の名はヘルク。なんと、人間だったのでした。人間が魔王になるなどとんでもない、なにか企んでいるのではと疑うヴァミリオ。ヘルクを排除しようとしますが、ヘルクのレベルは99.。四天王たちよりも強いのでした。

   インタビューを求められたヘルクは「人間が憎い」と語ります。続いて、満面の笑顔で「人間、滅ぼそう」と。会場は、ヘルク人気で盛り上がりっぱなし。

   そんなところに、またひとり、ウルム魔王が正体不明の敵に倒されたとの急報が。それを知った四天王のひとりアズドラは、新魔王決定戦の決勝戦をウルム城奪還に決めます。ヴァミリオは運営のアンと名乗って、ヘルクたち決勝戦参加者に同行するのですが・・・・・・・

 

 

   とにかく、ヘルクの強さがハンパではありません。その上、器用で、料理もうまい。向かうところ敵なしの状態です。その上、満面の笑顔が好印象。とある事故から、ヘルクとヴァミリオはふたりきりの旅をせざるを得なくなるのですが、旅の途中でも、ヘルクは万能ぶりを発揮します。

 

   ギャグ漫画のようにはじまり、3巻目くらいまでは、おバカな展開が続くのですが、その後、物語は急にシリアス展開に。

 

   ヘルクのような無敵の強さと万能ぶりを備えていても、防ぐことのできない悲劇があるという現実を思い知らされます。その辺が昨今のラノベの「俺つぇぇぇ」ものとは、一線を画しています。

 

   全編を主人公ヘルクの魅力が支えています。その秘められた過去。満面の笑顔に秘められたエピソード。内面に抱えた悲しみと苦しさ。その苦しさを、ヴァミリオのひと言が救う7巻のラストは非常に感動的です。

 

   ヘルクもいいのですが、とりまくキャラたちも良いです。疑い深くすなおになれないヴァミリオ、そのヴァミリオ第一主義の一見ヘタレな四天王アズドラ、旅先で仲間になった不思議な生物ピウィ、兵士時代のヘルクの戦友アリシア、魔界にやってきたヘルクを泊めた俊足のケンロスなど。

 

   現在、既刊は11巻。笑いのパートがどんどん少なくなっていますが、上質のファンタジーとして読ませます。先が楽しみです。