牧野修さんの「奇病探偵」(タソガレ文庫)

 

   森田彼岸は高卒の19歳の青年。就活にことごとく失敗し、つい履歴書に「医療事務経験あり」と嘘を書いてしまいます。するとさっそく、求人の口が。そこは、日本疾病管理予防研究所、通称、JCDC。感染症に関しては、日本一の研究所です。

   なぜか、即、採用された彼岸。女性所長の伊丹桜、女性研究員の田崎美女(うつくし)をはじめ、所内にあふれるウーマンパワーに彼岸は圧倒されるばかり。

   そんなところに、ひどいDV事件が起きたという知らせが。さっそくでかける所長のお供を命じられる彼岸。DVと感染症にどんな関係があるのか。「バッケスホーフ脳炎」。

 

 

   感染症とは無関係に思える現象を、感染症の症例として解明していく連作医療ミステリー。いや、厳密にいえば医療ミステリーとは呼べません。登場する感染症は、すべて架空のものばかり。

 

   ある地域で、異常な数のゴミ屋敷が出現した謎を解く「蒐集吸虫」も秀逸。実在する寄生虫トキソプラズマの症例などを引き合いに出し、いかにも蒐集吸虫という寄生虫が実在するかのような錯覚を引き起こされてしまいます。

 

   キャラの中で際立っているのが、田崎美女。名は体をあらわすで、その名のとおり美女なのですが、気の弱い彼岸を引っ張りまわしてはトラブルに巻き込むお騒がせ美女。

 

  研究所のエピソードと並行して、何者かの企んでいる陰謀が進行するようすが描かれていきます。最終的に、ふたつのエピソードはひとつにつながります。

 

  牧野修さんの作品にしては、怖さがありません。ただ、医療ミステリーとしては、知念実希人さんの「天久鷹央の推理カルテ」には、意外性という点で一歩及ばないように思いました。