朱川湊人さんの短編集「花まんま」(文春文庫)

 

   昭和30年~40年代の大坂を舞台にした短編が6編収録されています。

 

   主人公は全員、小学生の少年たち。

 

   表題作の「花まんま」の内容は。

   幼い妹が、突然、大人びた言動をとるようになります。そればかりか、電車に乗って、遠くまで行ってしまったり・・・・・・そして、妹の自由帳に書かれた「繁田喜代美」という名前。妹と、この喜代美という女性の間にはいったいどんな関係が・・・・・・?

 

   謎で読者をひきつけておき、最後にほろりとさせます。謎の答えは、途中で察しがつくのですが、今度は、物語がどう着地するのかという興味で読ませます。

 

   50代、60代の方には、たいへん、懐かしく読めるのではないでしょうか。昭和の大坂の風物が、ふんだんに散りばめられています。レトロでノスタルジックです。

 

   6編のうち、異色なのが3つ目の「摩訶不思議」。

   甲斐性のない叔父が死に、葬儀が執り行われるのですが、そこで起こった、ちょっと摩訶不思議な出来事を描いた1編。他の作品とは異なり、コミカルな味付けになっています。

 

   読んでいて辛かったのが、最後の「凍蝶」。

   孤独な少年と18歳の女性との交流を描いているのですが、女性の境遇があまりにも悲しいです。

 

   朱川湊人さんは、「世にも奇妙な物語」の傑作「昨日公園」の原作者です。

   「昨日公園」の収録されている「都市伝説セピア」など、他の作品も読んでみたいと思います。