近代建築の原稿を書いているとき、一番気になるのが建物の存在。雑誌なら取材して原稿を書き、すぐ出版、という流れなので、そんな不安感はあり得ませんが、書籍となると取材、原稿書きから出版までそれなりに月日がかかります。そこで生まれるのが「あの建物大丈夫かな?」という不安感。校正ゲラも出た段階で、大丈夫か、と現地に赴くと建物がなかった、ということはざら。もちろん、それなりの情報はあるのですが、出版されたとき、建物がなかったでは済まされません。
そこで、いっそのこと没になってしまった建物、つまり今では消え去った建物を紹介したらどうだろうか、そんなことを考えました。
まず、第一回目は銀座にあった「瀧山町ビル」。外装材にスクラッチタイルを使用しているところから、資料にあたらなくとも昭和初期の建物、と推測できるたてもので、実際、竣工は関東大震災後の昭和3年。ネオ・ルネサンス様式の建築物に当時流行のアールデコ調のテラコッタ装飾が飾られというほどデコではないのだけれども、縦に伸びるテラコッタ装飾が横に広がるビルの広がりを改めて力強く印象付けさせられます。昭和名建築の一つ。惜
しいビルをなくしました! 2010年、解体され、雑居ビルとしてのさまざまな想い出とともに消し去られてしまいました。
