立ちくらみのような感覚からヨロヨロとグリーンは立ち上がった。

目の前に広がる世界を見渡す。

道端に雨の中、「かえで」形態で自分が立ち尽くしている。
見渡せば、家々が立ち並び、まばらだが人が行き交う。
ここは紛れもない、人間の世界だ。


「う…そ、私、消えなかった…」

嬉しさとともに現実的な不安も込み上げてくる。

「…でも、私はこれから…どこに行けば良いの?」

雨に打たれ、うなだれる。
涙がこぼれて来る。

キキ~っ!

と、突然、車が停まった。
呆然と立ち尽くす「かえで」の前に。

「キミ!どうしたんだ、みつばちゃんのお友達だよね」

「まあまあ!こんなにびしょ濡れになって!風邪をひきますよ」

老夫婦、2人は車からおりて、かえでのもとに近づいた。

「…翡翠森のおじさん、おばさん」

涙がぶわっとさらに込み上げる。

「私、帰るとこが…ない…」

翡翠森の夫人はかえでを抱きしめた。
「事情はわからないけど、うちへいらっしゃい。あなたが帰りたくなるまで、うちにいればいいのよ」

「そうだ、それがいい。まずお風呂に入りなさい。夕ご飯を一緒に食べて、それからゆっくり話を聞こうじゃないか」
主人はその2人を包み込むように抱きしめた。

通り雨だと思った雨は、本格的に降り出して来た。

けれど、その雨の雫は、かえでにとってどこまでも優しい雨だった。




「ぐ、パステルガァル!め。なんなんだ、あやつらのチカラは…たかだか低級色が人間の力を借りただけだというのに、一瞬でもこのダークネス・フォーを凌駕するとは…これが人間の感情…ココロなのか」

彼の根城、ダークネス・キャッスルに戻ったレッドはダメージを抱えたまま、床に伏していた。

「あらあら、天下のレッド様が、ずいぶんと無様なカッコをしてるわねえ」

コツコツという足音と共に誰かが近づいて来る。

「ダークネス・ブルーか。笑いたければ、笑えばいい。この失態はあまりにも計算外だ…」

今回の敗北をダークネス・レッドは素直に認めた。

「もー、そういう素直なところホントかわいいんだからぁ」

青いショートカットの女性が彼の目の前に現れた。
軽い口調と裏腹にひどく冷酷な目だ。
「あたし、良いこと考えちゃった」

壁に持たれかかるダークネス・レッドの脇に来た彼女は、彼の耳元で囁く。
「逆に人間たちのココロをダークネス・オーブに取り込んじゃうのよ」

「…バカな…どうやって」

「ココロの色を侵色するのよん」

パステルガァル!たちに新たな試練が待ち受けようとしていた…。