小一時間たって、体験レッスンは終了した。
「ふいー」
みんな入り口の広場でジュースを飲んでいる。
「あれ?おねーさんは飲まないの?」
ぼっと立っているグリーンにちえりが話しかける。
「え?飲み物?」
ぽかんとするグリーン。
「飲まないと、ネッショウチュウになるのです」
ちえりが恐ろしそうな顔でいった。
「それをいうなら、熱中症でしょうが(^^;熱唱してどうするwカラオケか」
るりかが丁寧に突っ込んだ。
「じゃあ、はい、ちえりのをどーぞ」
ちえりの飲みかけを渡され、グリーンは戸惑ったが、恐る恐る口をつける。
「つ、つめたっ!」
「凍らせて、持ってきたの。おいしいよね~?」
「…そ、そうね。…冷たくて、おいしい」
なんなのかしら…!
グリーンは戸惑っていた。
どうも、調子が狂う。相手のペースに乗せられるというか、空気感というか。
なんとか隙を見つけたいが、逆にこちらに隙ができてしまう。
しかし、このまま、何もしないわけには行かないのだ。
「そろそろ帰りましょう。ばぁやも夕食を作って待ってますわ」
ペットボトルの蓋をしめると、みつばが皆を促す。
「つかそのまえにシャワーだね。汗だくよ」
るりかが首にかけたタオルで汗を吹きながら言った。
「おねーさんは?」
ふいにちえりが何とはなしにグリーンに聞く?
「え?わたし? え~っと、みんなで合宿やってるの?」
「そうだ。秘密の強化訓練だ」
あかねが拳を突き出した。
「あんま秘密にしてないけど^^;」
るりかが苦笑いしながらいう。
「ねー、おねーさんも一緒にあそぼ!ちょっとだけ、ぶんぶんちで!」
屈託の無い笑顔でちえりはグリーンを誘う。
「コラコラちえり、いきなり会った人に遊ぼうは無いでしょ。おねーさんも予定あるのよ。
…ってさくらんぼう!アンタね、強化訓練でしょ。一緒にあそぼーじゃないっての!」
ちえりを小突いた。
「表向きは、ですわ」
みつばが茶化す。
「いや、昨日の神経衰弱は、本当に衰弱したけどな」
あかねが頭を抑えていった。
「要領がわるいのよ、あかねは」
などと話していると…
「あの、じゃあ、少しだけ、私も遊びに行っていい?」
「え?まじすか?」
るりかが面食らった。
「わーい!ぶんぶん、ダイジョブだよね!?」
「ええ、少しだけなら、大丈夫ですわ。…いまさら4人も5人も迷惑なことには変わりませんわ!」
みつばは躊躇なく笑顔でどくをはいた!
ちえりはかわした!
るりかはかわした!
あかねはどくにおかされた!
「ぐふ、みつば、そんなに迷惑か?」
「冗談ですわ(^_^;」
「じゃあ一緒に行こう、おねーさんも行こう」
グリーンの手をつないでつないで歩き出す。
「あらら。あのおねーさん、ちえりに気に入られちゃってるわね」
るりかが前を歩くふたりを見て言う。
「なんか、あの人の頼りない感じが、ちえりのおもちゃになっちゃってんじゃないか?」
あかねも苦笑した。
「ちょっと、ちえりさま!みつばの手もつないで下さい!」
ふたりをみつばが追う。
「こら!公道は横に広がって歩いちゃだめよ~!」
声の主をふりかえると、そこにはそあらがいた。
「あ、そあら先生!今日はありがとう。また明日もよろしくね」
「うん、るりかちゃん、また明日。あかねちゃんも!」
そあらは笑顔で手をふった。
「ありがとうございました!」
ちょっと照れくさそうにあかねが挨拶を返した。この辺は恥ずかしながらも、空手の礼儀作法の賜物か?
「そあら先生ってあたしとタメなのにしっかりしてて、さらに爽やかよね」
スタジオに入るそあらの背中を見ながら、しんみりとるりかが言った。
「るりねー?なんだ?劣等感か?」
あかねがニヤリとした。
「ちがうわ、性格もさることながら名前がアヤシイわね…
あれは、脇役の名前じゃないわ!『天神(あまがみ)そあら』って!」
るりかの背負ったバッグの中にいる“かあら”の「おバカですカラ」と言う声が
不意に、漏れた。