「ここにパステルガァル!強化合宿夏休みSPを宣言する!」

ハチマキを巻いたるりかが、声を高らかに拳を振り上げた。



「おお~、強化っていうのが、なんか燃えてきた!」

朱色の炎を目に映らせながらあかねも拳を振り上げる。



ここはみつば邸の庭。

暑い陽射しの中、みんなちゃんと帽子をかぶって、日陰で話をしている。



夏休み一発目にミーティングと称して、パステルガァル!ズたち4人はみつば邸に集ったのだ。



「合宿って…どこで、ですの?」

みつばは不安が的中しないように祈った。



「え? じゃあ何か? 他に別荘でもあるってか?」

るりかがニヤリと笑う。



「あ、いや、もともとこの屋敷が別荘みたいな扱いだったのですわ」



「別荘!? ぶんぶんすごーい!」

ちえりは取りあえず興奮。



「…るりかさん、ここで、ですわね、合宿。そういいたいのでしょう?」

半泣きなみつばだ。



「あら、あたし何も言ってないわよ。うそ!いいの、みつば邸使って!?」



「…わざとらしい…ですわ」

げんなりなみつばだ。



「まあ、考えてもみなよ。中2のあたしと、中1のあかねがいるのよ。みつばとちえり。ふたりの夏休みの宿題くらい面倒みてやろうじゃないの」



「るりねー。あたし、勉強はちょっと^^;」

勉強や宿題の話となると、急に弱腰なあかね。



「まあ、なんでもいいわ、それよりちえり、例のチラシある?」



「うん!あ、忘れた!」

笑顔で答える!



「って、コラ!それじゃ話がすすまない…ってそれよ!ちえり手に持ってるじゃない!」



「あ、忘れてないのを忘れてた!」

さらに笑顔で答える!!



「これよ!」

るりかはちえりの手から、チラシらしき紙をぶんどった。



チラシには「3日間の体験ダンス教室!スタジオパッパラダイス」と書いてあった。



「あのね、うちのダンススタジオで、ダンスの体験教室するんだよ」



「体験教室?ちえり様の通っているところで?」



「うん。タダで出来るんだって!」



るりかは他3人にぐっと顔を近づけた。

「そう!まずはこれに参加するのよ!ちえりは生徒だけどね。あたしら3人は未経験者。まずはダンスで基本的なバランスとか呼吸とか、リズムを学ぶのよ」



「基礎的なことなら、空手で十分やってるけど…」

あかねは渋る。



「だったら、なおさら余裕じゃない?空手の凄さを逆に魅せつけるチャンスでもあるわ!」

るりかお得意の口八丁手八丁。



「…まあ、そうだけどさ」



「いーい!? 今時のガールズ戦士は、エンディングでダンス踊れるのが必須事項なの!」



全員、ゼンゼン意味が分からんかった。何を強化したいのやら。



「チームワークを強化するってことよ!」

なんとなく繋がっちゃう、るりかは姑息です。



「ちえり、楽しみ!みんなとダンスの練習するの!」



「…そうですわね…わたくしも、ちえり様と一緒なら、楽しいですわ」

「ねー。おとまり会もたのしみだよねー」



「ダンスでも、なにか空手に取り入れるような、技術があるかもしれない」

あかねもまんざらではないようだ。




「ひひひひ、思惑通り。取りあえず、なし崩し的にみつばんちもOKになったしね」

まったく、うちの部屋のクーラー壊れちゃって、どうしようって悩んでたとこだったのよ。



リーダーの悪意ある組織利用、とはまさにこのことだった。



「あらあら、みつばちゃん、おともだちいっぱいでにぎやかねぇ」

「あ、翡翠森(ヒスイモリ)のおばさま、おじさま!」



庭越しの柵から顔を出したのは、これまた隣の豪邸にすむ老夫婦だった。



「こんにちは。ご機嫌いかがですか? 騒がしくて申し訳ございませんわ。すぐにお部屋に移りますわ」

みつばはきっとこのガァル!ズたちが騒いでいるので、注意されたかと思った。



「いやいや、大丈夫だよ、むしろ元気な声が、心地良いくらいだ」

おじさまはそういった。



「ええ、まるで、そう、かえでもね、ちょうどあなたたちと同じくらいにですね」

おばさまの方は遠い目をしながら、意味不明なことを口走っている。



「これ、よさないか、ほらもう時間だ」

おじさまが話を遮ると、玄関に待たせてある車の方へおばさまを誘導する。



「じゃあね、みつばちゃん、お友達。気にしないで、おしゃべりしててくださいね」



ぽかんとする、他3人。



「となりの、お金持ちさん? ヒスイモリ?っていかにも金持ちって感じの苗字ね」

るりかが移動する車を目で追いかけながら、そういった。



「ええ、そうですわ。でも、昔、子どもを交通事故でなくされたんですって。ばあやが言ってましたわ」



「つらいな」

あかねがぼそりといった。



「そうですの。ちょうどわたくしたちと同じくらいの年代で亡くなられたんですって。最近良く話すようになったんですけど、よくお食事とか誘ってくださいますのよ」



「さみしいんだね。かわいそう」

ちえりもほろりと言う。



「なんかしんみりしちゃったけど、合宿の間は、あのおじさん、おばさんにはちゃんと挨拶しようか!」

はーいとみんなでそうすることにした、パステルガァル!



「って決定なのですわね!!」

合宿は結局みつばの合意とは関係なく強行的に決定されたのであった。