去る7月16日、ねこの医学会主催の学会『第10回 猫の集会』でポスターセッションをしてまいりました。
ポスターセッションの目的は、家庭内で合成洗剤や香水や柔軟剤の粒子を吸入せざるを得ない猫ちゃん達を、ひとりでも多く救出するための啓蒙活動です。家庭内で使用する洗剤やパーソナルケア用品などで犬猫に健康被害が出ることを、ひとりでも多くの獣医師、動物看護士の方々に周知できたらと思いました。
A0サイズのポスターを作成して細長い筒状の箱に入れて、いざ新幹線に!
初めは白い風呂敷に包み肩に掛けて出かけようとしたら、家族に『ソレ、日本刀かバズーカ砲でも入っているみたいだよ。車内で不審者とみなされて連行されるかもね。笑』と言われ、模様のある肩掛けできない風呂敷に替えました。

自画自賛ですが、一番見やすいポスターだったと思います。ポスターお隣だった北海道の動物病院の先生に『とても勉強になりました!』と言われたので、目的は少しは達成できたかなと思いました。
猫を飼っていると、意外なところに危険があり、その注意喚起としてとても有用な発表ですね。とおっしゃってくださった審査員もおられましたが、「エビデンス」はあるのか?という質問もいただきました。 家庭用洗剤は多くの化学物質の混合液ですから、実際に’その‘洗剤を使って、猫にどのくらいの量を飲ませるとどうなるのか?少ない量だけど毎日吸入するとどうなるのか?元気そうだけど肺の組織を顕微鏡でみるとどうなのか?寿命に与える影響は? などなどを調べないとエビデンスは得られませんが、これは現実的には不可能です。
化学物質それぞれのマウスやラットを使った実験データは、入手出来ることがあります。 大量に摂取すれば死に至りますが、しかし少量を、生涯毎日摂取するとどうなるかを調査したデータはなかなか見つけられません。 猫の寿命は15年として毎日摂取させて亡くなったら解剖して…といった実験を何十頭も行わなければなりません。これは、壮大・膨大な実験、しかも猫を使うなんて辛いですね。
私が獣医循環器学会誌に投稿した『家庭用塩素系洗浄剤の暴露による呼吸器障害ならびに心筋傷害を疑った猫の1例』(ポスターの症例1)は、最初に投稿した某学会で、『そこにいた人間は無症状なのに猫だけそんなことになる訳ない。これまで次亜塩素酸ナトリウムの曝露で同様の傷害を受けた猫やヒトの症例報告がないのだったら、それは次亜塩素酸ナトリウムによるものではなく過量な点滴やステロイドの注射を打ったことが原因ではないか?』と言われて即却下されました。
これまで症例報告が無いから『初めての』症例報告をするに、前例がないから却下って…せめて次亜塩素酸ナトリウムで健康被害が発現したヒトの症例報告が見つけられれば…と私は2年間程探したのですがどうしても探し出せませんでした。そうこうしているうちにある日ふと、人間の医者をしている友達にLINE相談したところ、その日のうちにヒトの症例報告数例を手にしました。
持つべきものは優秀な友達です。彼は勤務先の大病院の附属図書館ですぐさま調べてくださいました。しかし、このいただいた症例報告も強力なエビデンスがある訳ではありませんでした。ましてや経口ではなく吸入となると証明することは困難です。したがって見つけたこれらの症例報告は、有名な科学雑誌への投稿ではなく、県の医師会などの小さな小さな学会での症例発表の抄録でした。でも、症例報告は症例報告です。私はこれらを参考文献に、再度獣医循環器学会に症例報告をして、結果はご報告の通りです。


