現在もいろんな癌腫の肝転移のカテーテル治療をしています。

ほとんどの患者さんは、当院の方針に基づき、後半戦治療としてカテーテルをしているので、肝転移しかない、という方は少なく、肺やリンパ節、時には腹膜播種など複数の臓器に同時に転移を認めることがほとんどです。

転移が1箇所あれば、今までいろんなブログで書いた通り、目に見えない転移も含めて同じ臓器、別の臓器に同時に転移が併存することが多いです。
だから、血液からがんの変異遺伝子が見つかるのです。
すでに、がんは全身化しているから。

でも、素人目線だと、その根本的なことを忘れて、画像で見えている臓器だけにしか転移がないと思い込んでしまいます。

だから、複数の臓器に転移がある人が、一番大きな病気だけでも局所治療(カテーテル、放射線、焼灼療法など)をしてほしいという発想になるんです。

がん治療をする場合、前半戦と後半戦とでは、考え方を変える必要があります。前半戦はやはり転移がある以上、絶対に薬物治療中心に考えるべきです。当たり前です。それが一番長生きする方法です。目に見えない病気に対しても効果が期待できるから。

一方、後半戦を考えるとき、これは多くの医者も勘違いしているかもしれませんが、前半戦と同じように考えては危険です。

例をあげましょう。

もう使える薬は1つしかない。でもその抗がん剤の効果は余命の中央値を1ヶ月だけしか伸ばせない可能性がある薬。副作用も強い。100人いて50番目の患者さんが1ヶ月伸びる可能性がある薬。当然もっと長く生きる人もいれば、逆の人も。がんが極端に小さくなる人も、全く効かずに副作用だけの人も。
よくその患者さんの病状をみると、肝臓に複数の粗大な転移があって、肝機能のいくつかは3桁まで上昇しており、肝機能障害のせいで倦怠感や食思不振がでている。肝臓さえコントロールすれば、元気になるだけでなく、余命に直結する肝転移を小さくすれば延命も可能になる。ただ、肺には1cmほどの転移が5−6個ある。

こういう患者さんは結構多いです。

うちでは、後半戦でまず考えることは、予後に直結する臓器だけでも救おうとします。通常の方法では全ての臓器を救えないから。

でも一般の先生方は、臓器の順位づけをしません。複数転移があったら、全部に対して治療しないと治療ではないといいます。

それは全くの正論であり、ただ、後半戦を患者と闘っている医師からみたら邪道です。

後半戦に、全部の臓器に効く薬があればそれでもいいです。
全部ではなくても一部でも効く薬があればそれでもいいです。
でも後半戦で、それも最後のほうで、がんを縮小させるパワーのある薬はそうそうありません。
保険で承認される仕組みも、がんが小さくなるためではなく、1−2ヶ月の生存延長が証明されたから。
それ自体は立派なことですが、肝機能や画像から、まずは肝転移を救えば余命で半年、1年と延長が期待できるのに、肝転移が小さくならない=肝機能がよくならない薬剤を試すのかと。
それであれば、短期間でも予後に直結する肝臓を救済し、生存にゆとりを持てた時点で残された薬、または肝臓の治療をしている間に新たに出てきた薬を使えばよい。

そのような考え方で、後半戦のカテーテル治療をしています。

時に、同時に別の場所も命や症状に関係するときは、放射線治療も併用したりします。うちには優秀な放射線治療医がいるので助かってます。


「肺にも転移があるのに肝臓だけ治療しても意味がない」


多くの患者さんがそう言われて当院に紹介されますが、
それでも当院で治療できた患者さん(適応だった患者さん)は確実に延命できていると思いますし、最近の癌治療薬の承認速度アップで新しい治療にたどり着けている人も多くなっています。

だから、上のセリフを言う先生が多い中、肝臓が予後因子だからそこだけでも救ってほしい、と紹介してくれる先生をみつけると、めっちゃ嬉しくなり、治療も頑張っています、。