詐欺アカウントかどうかを確かめる方法として、『相手がビデオチャットに応じなければ詐欺師だ』と判断できるというものがあります。
この方法は完全に『間違い』ではありませんが、これではネットで知り合ってまだ実際に会っていない国際ロマンス詐欺師である可能性の大きい相手とビデオチャットが出来たために、詐欺師を信じてしまう被害者がでてくるというリスクが残ります。もちろん、これは詐欺師を見分ける方法の一つを書いて注意喚起したブロガーやジャーナリストの責任ではありませんが。
相手が『ビデオチャットに応じない』『ビデオチャットに切り替えたら突然切れる』といった感じでビデオチャットができない場合、相手が『顔出し』できない理由があるのであり、もし『ビデオチャットができない』のであれば『なりすまし』であると断定できます。
しかし、この段階で確認ができたことは何かというと、相手がビデオチャットに応じなければ『偽物』であることであり、応じた場合に『本物』であるということを保証するものではありません。
それはなぜか。
それは、『動画を使ったトリック』を活用する詐欺団が存在するということです。
そんなことできるんですかと疑う方々もおられるかと思います。しかしこれは技術的に証明できる方法です。
例えば自分のホームページやYoutubeなどに動画を沢山投稿している人の動画なら、簡単に入手できます。特にチャットや自撮りで撮った動画であれば、ほぼ間違いなくチャット画面のように見せかけることができる。
「私の場合はビデオチャットができたので相手は本当に写真の人です」とおっしゃる被害者の方にしばしば遭遇します。相手の写真を拝見すると、Donald Yoon医師とかFernando Gomez Pinto医師などYoutube動画がたくさん出回っている方の写真であることが多いです。
以前、ある被害者の方が詐欺師とビデオチャットしたので相手は詐欺師ではないと仰って、忠告を聞き入れて下さりませんでした。その詐欺師が使っていた写真はかなり前から詐欺に使われていて、2019年に有罪判決を受けた小崎啓子受刑者さんをだました詐欺師も使っていたStephen Murphy氏の写真でした。その後その方がどうなったかはわかりません。更に騙されてお金を取られているかもしれません。『ビデオチャットが出来た』ということが招いた悲劇でしょう。
多くの日本語による『国際ロマンス詐欺を防ぐ方法』や『国際ロマンス詐欺を見破る方法』などの記事では、『相手にビデオチャットを使用しようと言ってみて下さい。ビデオチャットが出来なければ偽物』と書いてあります。もちろん、そういったアドバイスが完全に間違っているわけではないですが、ビデオトリックの存在も是非知ってください。
リブログした2月29日のブログ記事を再掲します。
ビデオチャットが出来るかできないかによる判断は以下のようにするべきです。
1) 何らかの理由をつけてビデオチャットを拒否すれば、かなり高い確率で詐欺師。
2) 何らかの理由をつけてビデオチャットは出来るがすぐにできないと言われれば、ビデオトリックの準備をする可能性を疑ってみる。
3) すぐにビデオチャットに応じてくれたとしても、それだけを強力な証拠として相手が詐欺師ではないと信じてはいけない。ビデオチャットに応じたということは、拒否はしないと言うことを証明しただけであり、手元にすぐに使える状態でチャット用ビデオがあれば当然ながらすぐに応じてくれるのだから。
さて、ビデオチャット中でも注意が必要。
⇒ ビデオチャットが長く続かない、すぐ切れる…これはあらかじめYoutubeなどから盗んでいるビデオであることをバレなくするため。
⇒ ビデオチャットがスムーズに進んでいるが、口パクと言葉が合わない、声と顔がなんだかミスマッチ…ストリーミングでビデオを流して詐欺師がアテレコしているため。
であれば明らかにおかしいですね。
ビデオチャットがスムーズにできたと感じさせられる場合もあるでしょう。(もちろんこれには被害者が都合の良いことだけ受け入れる『認知バイアス』が働いているためとも考えられます。)
ビデオトリックかどうか試してみる方法として、何らかのジェスチャーをリクエストしてみるというものもありますが、これも気を付けるべきです。
例えば非常に準備の良い詐欺師であればビデオトリックを疑う被害者からよく来るリクエストのジェスチャー(手を振る、ウィンクする、投げキッスをするなど)をブックマークしていて、「手を振って」「投げキッスをして」といったジェスチャーを求めるとその部分に飛んで言われたジェスチャーを流してくることもできるのです。
何らかの動きで相手をテストする場合、絶対に本人がそこにいてあなたに対してでなければできないこと(例えば目の前でノートにマジックペンを使ってあなたのフルネームを書いてみるように言うなど)をさせるべきでしょう。これを要求して怒ったり何らかの言い訳をしたり、時間をおいて次のチャットの時にやってのけたりすれば、明らかにビデオトリックをしていたのだとわかるでしょう。
しかし!! 本当に納得できるビデオチャットができても、実際に会うまで信じるべきではない! テクノロジーが変化しているので、そのうちだれでも手軽に人間そっくりのアバターを作って、あたかもその人が画面の向こうにいるような動画を作ってチャットが出来るようになるでしょう。かつてはプロしか使えなかった機能がアプリで素人でも簡単にできるようになる日がもうすぐ近くに来ています。そうしたら、目の前で紙に名前を書いて見せるなんていう動作も簡単にできてしまうようになります。
では、技術的実証といきましょう。
このリンクしたYoutubeビデオはAlec Couros博士のビデオです。Couros博士自身も、詐欺師に頻繁に写真を使われたなりすましの被害者です。彼の写真を使った詐欺師に騙された被害者の多くはこの教授の写真を使った詐欺師とビデオチャットをしているのです!
当然ですがCouros博士は詐欺とはかんけいありません。彼はなりすまし被害者です。詐欺師はどうやって彼になりすましてビデオチャットを被害者たちとするのでしょうか。
例えばManycamといったアプリがあります。この種のアプリはもちろん犯罪に使う目的だけではなく、様々な用途があるでしょう。複数の動画(例えばプレゼンテーションで使う複数の動画など)を簡単に切り替えて使うといった便利で真っ当な使い方があるのです。
Youtubeなどインターネット上でのビデオをダウンロードするツールも多数あります。例えばKeepvidというアプリはポピュラーです。ダウンロードした動画の動きをしっかりと把握しておけば、あらかじめ取ってあるビデオを使ってチャット相手を詐欺師が騙すことは簡単なのです。
Manycamというアプリは複数のウィンドウから動画を選択して相手に見せることが出来るもので、Keepvidなどでダウンロードした動画ももちろん使えるわけです。
そしてチャットが始まる前に元のカメラの画面(LIVE)から、ダウンロードして別ウィンドーに表示したビデオに切り替えるなら、SkypeでもHangoutでもなんでも、チャット相手にあらかじめダウンロードしておいたチャット画面を見せることもできるのです。
■ まとめ ■
- 『ビデオチャットができるかどうかを詐欺師かどうかを判断する方法とする』のは完全に間違いではないが、不十分である。『ビデオチャットができない』場合は詐欺だと疑ってかかって良いが、できる場合はあらかじめ取ってある動画を使ったビデオトリックを疑うべし。
- ビデオチャットが出来た相手が本物かどうか確認するには、その場であなた(被害者)のフルネームを書かせて見せてもらうなどの既存の動画ではできない動作をさせるべき。しかし技術の進歩でそれも効かなくなる可能性もあり。
- 『ビデオチャット』であらかじめダウンロードしておいたYoutubeなどの動画をライブ配信に見せかけて相手に見せる方法はアプリを使って簡単にできる。(技術的に可能である)
