FNN プライムオンライン 2020年7月1日『日本は「新型コロナ感染は自業自得」と思う割合がアメリカの10倍…理由を大阪大教授に聞いた』
日本人は他国に比べて『自業自得』という考え方が強いそうです。新型コロナウィルスに感染した方々に対してバッシングが起きていることも、それを裏付けるものでしょう。
大阪大学の研究グループの調査結果によると、日本・アメリカ・イギリス・イタリア・中国の5か国それぞれ400~500人に対して調査を行なった結果、『新型コロナウィルスに感染した人がいたとしたら、それは本人のせいだと思う』『新型コロナウィルスに感染する人は自業自得だと思う』という問いに対して『どちらかといえばそう思う」「ややそう思う」「非常にそう思う」と回答した人の割合は:
『感染は本人のせい』
日本 15.25%
米国 4.75%
英国 3.48%
イタリア 12.32%
中国 9.46%
『感染は自業自得』
日本 11.50%
米国 1.00%
英国 1.49%
イタリア 2.51%
中国 4.83%
もちろん『そう思わない』と答えた人のほうが圧倒的に多いのですが、それでも『本人のせい』『自業自得』と考える回答者が日本人の場合他国に比べて高い割合です。この記事によると、現時点では原因が分からないとのことですが、日本人の文化的傾向として公正世界信念が強いということが考えられます。
公正世界仮説とは
『人間の行いに対して公正な結果が返ってくるものである、と考える認知バイアス、もしくは思い込みである。公正世界仮説は社会心理学者によって広く研究されてきており、メルビン・J・ラーナーが1960年代初頭に行った研究が嚆矢とされる。以来、様々な状況下や文化圏における、公正世界仮説に基づく行動予測の検証が行われ、それによって公正世界信念の理論的な理解の明確化と拡張が行なわれてきた。』
テレビのニュースを茶の間で見ていると、重大な事件の経緯が報道される。その事件の報道を聞いて、時として深刻な被害に遭った人に対してその人格を非難したりする傾向がないでしょうか? 例えば、強姦事件を例にとると、『被害者側が挑発的な服装をしていたのでは?』といった意見も出てくるかもしれません。つまり、悪いことが起きたら被害を受けた人も何らかの原因を作っていた、何らかの落ち度があったというのです。それが公正世界仮説。
公正世界仮説というのは、『世界は突然の不運に見舞われることのない公正で安全な場所であり、人はその人にふさわしいものを手にしている』とする信念のことです。人は幼児期からそのように教え込まれます。しかしそれを覆すような事件が起きると、その信念が脅威にさらされるのです。そこで、本来は罪のない被害者に『何か落ち度があったに違いない』という理由を付けて非難する結果となります。
この公正世界仮説は様々な研究がなされています。事件・事故の被害者と加害者を様々な設定(やくざ、フリーター、大学生、弁護士など)に設定し、被験者に被害者に対する肯定的態度・否定的態度、加害者に対する量刑判断を回答してもらったところ、「被害者に全く落ち度がない場合であっても否定的要素が強くなるにつれて被害者に対する同情などの肯定的要素は弱くなり、逆にその被害を天罰や自業自得とする否定的な態度が強くなる」という仮説が支持される結果となったそうです。(山岡重行・風間文明(2004). 『被害者の否定的要素と量刑判断』. 法と心理. 第三巻第一号.)
公正世界に対する信念は、ステレオタイプとも結びついています。例えば、中高年の恋愛は近年では受け入れられつつあるとはいえ、いまだに恥ずかしいこととみなす傾向もあります。中高年の恋愛は気持ちが悪いといった記事がメディアで取り上げられたりもしています。
そうすると、『国際ロマンス詐欺の被害者』が40代以上であるというだけで、被害者に他に何の落ち度もなかったとしても年齢が『否定的要素』として傍観者には捉えられ、結果として同情よりも非難が出てくる結果となる。
善良な人が理不尽な事件や事故に遭うことを認めてしまうことは、公正な世界を否定することになってしまいます。被害者に落ち度があると考えるなら、この公正世界という信念を否定されないですむわけです。この公正世界仮説は、プラス面もあります。公正世界仮説により、生活満足度と幸福度を高め、抑うつ的な感情を減少させ、精神衛生面に良い影響があるからです。
しかし、ここで考えるべきなのは『法的にも倫理的にも本当に悪かったのは誰か』という点です。被害者を非難することは、被害者を追い詰め、声を上げることすらできなくさせる。詐欺事件なら悪いのは詐欺を働いた犯人だということは明白です。被害者が不幸にして理不尽な目にあってしまったことの原因を被害者にあるという方向に持ってゆくべきではないのです。
犯罪被害者を『自業自得』として責めることは、責めた側は公正世界の信念を維持でき、長期的な目標を持てるようになり、幸福感を感じられます。しかし、被害者を責めることは、結果として被害者を追い詰め、最悪の場合自殺まで追い込む結果になり得ることを考慮するべきでしょう。
下記にリンクいたしました心理学ミュージアム『人はなぜ被害者を責めるのか? 公正世界仮説がもたらすもの』は非常にわかりやすい記事なので是非ご覧ください。
参考資料
山岡重行・風間文明(2004). 『被害者の否定的要素と量刑判断』. 法と心理. 第三巻第一号.)
心理学ミュージアム『人はなぜ被害者を責めるのか? 公正世界仮説がもたらすもの』 https://psychmuseum.jp/show_room/just_world/
Wikipedia 『公正世界仮説』
悪賢いサルが成敗されるむかしばなし、「さるかに合戦」のイラストはACイラストのはりうーさんのを使用。
https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=oBavIHmG&area=1

