2018年に警察に国際ロマンス詐欺の被害を届け出るべき理由について書きました。しかしながら、被害者の方々からは『警察に行っても真面目に捜査してもらえない』という声を聴きます。実際何も起きていないのか、そのことについてSCARSの「Scammer Urban Legends Chapter 7, No One Is Doing Anything!」をベースに書いてゆきたいと思います。
前回は、SCARSの資料から国際オンライン詐欺の逮捕が増えている話、そして腐敗認識指数に照らし合わせて犯人がいると思われる国の協力を得ることが難しいことや、犯人が国籍自称する国に捜査依頼しても架空の自国民についての捜査はできない、そんな中で逮捕が増えているのは大きな進展という話を書きました。
国際詐欺の被害を受け方々の多くは、犯人の名前を差し出せば警察がすぐに世界中のネットワークをフルに活用して捜査してくれると信じているかもしれません。しかし国境を越えた捜査に誰がお金を負担するのでしょうか。
まず最初に話をすべきなのは自国の地元の警察署なのです。ある被害者の方がマレーシアの警察に直接連絡したところ、日本の警察から依頼があれば捜査協力すると言われたそうです。つまり、被害者が地元の警察に被害を届け出る。そしてそれをもとに外国の捜査機関に依頼をしてもらう。日本の警察も外国の警察もそれぞれ自国の税金で働いています。国境を越えた捜査をする場合、まず正式なプロセスを経る必要があります。
フランスに留学していた日本人の学生がチリ人の留学生に殺された事件がありました。殺人事件で容疑者がはっきりわかっていたので、最終的にチリの当局がフランス当局に容疑者の引き渡しを認めました。2016年に起きた殺人事件で容疑者の身柄引き渡しが決まったのが2020年4月。容疑者がほぼ明らかだった事件でもこれだけ時間がかかる。
SCARSによると、世界中の多くの国際ロマンス詐欺被害者は警察になかなか届け出ないそうです。そうすると、実際の被害件数よりも届け出られる被害件数がはるかに小さい。ほとんど起きないとみなされる国際的な事件に、警察は国民が支払った税金を使って外国の警察に捜査を依頼できるでしょうか。
『私は警察のデータのために届け出るのではない』と感じられる方もおられるかもしれませんが、警察が税金使って捜査するのはデータに基づいた重要度によるものです。統計データは現代の組織における意思決定に非常に重要なものなのです。数値ベースで重要度を証明できなければ、誰も人材とコストをかけて捜査すべしとは考えない。なぜ日本の警察がオレオレ詐欺の捜査に力を入れているかというと、被害件数が多いからです。多くの国民が被っている被害であるからこそ、税金と時間を使って重点的に捜査し、検挙をするわけです。国際ロマンス詐欺、もしくは国際オンライン詐欺のカテゴリーが警察の統計に出てくるようになれば、今後取り組むべき大きな課題として警察も力を入れるでしょう。
届け出がないと、警察は事件として認識できません。警察が税金使って行動をとるべきと判断できるだけの十分な事例の積み重ねが必要なのです。警察に届け出が来るすべての小さな事件に警察は一つ一つ対応できるリソースがあるわけではないのです。警察に事件のデータが積み重なり、これが本当に重要なのだと認識し、税金使って捜査すべきことだと判断される必要があるのです。今まで警察に行ってネガティブな反応や、親切な対応ではあっても『調書だけです』といったがっかりするような対応を経験し、警察に行っても何もならないと考えている被害者の方は多いと思いますが、その突き返されたその時に警察が受け取っていたデータの積み重ねが、現在の犯人や共犯者の逮捕につながっているのです。警察に届け出ていやな思いしたかもしれませんが、警察に届け出に行った方々の勇気と努力一つ一つの積み重ねが大きく貢献していると言えます。
(続く)
参考資料:SCARS(Society of Citizens Against Relationship Scams)
「Scammer Urban Legends Chapter 7, No One Is Doing Anything!」
https://romancescamsnow.com/dating-scams/scammer-urban-legends-chapter-7/

