国際ロマンス詐欺師に『詐欺だとわかった』ということを伝えるべきではない理由。これは何度も記事に書きました。しかし『国際ロマンス詐欺』に関する認知度があがるにつれ、詐欺師に『詐欺だとわかった証拠』を送り付ける被害者(金銭被害まで言ってない方を含む)が結構見受けられるようになりました。
被害者の多くは、詐欺師は一人の人間だと信じています。その一人の人間が他の人の写真を使って他の人に成りすましていると言うところまでは理解しているでしょう。しかし詐欺師の多くは組織犯罪であると言うことまで認識していません。だから、相手に「お前の写真はここに晒されている」とか、「手口はここに書かれている」などといってスクリーンショットを送り付けたりする。
さて、あなたが詐欺師だったとします。あなたが獲物にしていた被害者が、『お前が詐欺師だと言うことはわかった。この写真はどこそこのサイトに掲載されているモデルの写真だ』といってあなたが盗んできた写真を送りつけてきたら…どう感じますか?
もし、あなたが単独犯で、どこか適当なサイトから写真を見つけてきて使っていて、しかもその写真しか入手する術がなくて、それがカモにしていた相手にばれたのだとしたら「ドキッ」と来るかもしれませんね。しかしその感覚でいては大きな間違いなのです。
詐欺師たちが盗んでくる写真は自分の写真ではありません。使っている名前も自分の名前ではありません。そして、被害者に教えている住所も本物ではありません。全てうその情報なのです。そして写真はネットでいくらでも手に入るものです。誰にでも写真を公開しているSNSユーザーや、毎日自分の写真をアップするブロガー、何枚もの写真ファイルを詐欺師に送っている前の被害者。
ここでもう一度、詐欺師の立場になって考えてみましょう。あなたがカモにしていた相手から写真が偽物で名前も住所もでたらめであることがわかったと言って写真が掲載されているサイトのスクショを送り付けられます。あなたならどう判断し、どう行動しますか?
あなたの答えはでたでしょうか?
「あなたが詐欺だとわかっているのよ」と言いたい被害者の動機は、相手をギャフンと言わせたいということ。
おそらくは言った後は気分がスカッとして気持ちが良いでしょう。詐欺師をギャフンと言わせたという気分になれる。
しかしその戦法は、本当に的を射ていますか?
大金をごっそりだまし取られた被害者の方も、送金被害には遭っていないが相手にさんざん心と時間を無駄にさせられた被害未遂の方でも、相手がなりすましだと気づいた時点で何か一言言ってやりたいと言う気持ちになるのはよく理解できます。確かに一言言ってやれば気分スッキリ、気持ちはよいでしょう。
しかし詐欺師にとっては、打撃は大きくないことは確かです。相手は組織犯罪であると言うことを考えてみましょう。一人の貧しい青年が小遣いはたいて買ったパソコンかスマホを使って薄暗い部屋でこそこそと犯行を行なっているのではないのです。
あなたが顧客からクレームを受けたレストランの店長だったらどうしますか? おそらくはクレームを受けた原因を精査し、それに対する対策を講じますよね。例えばウェイターの態度が悪いと言われたらウェイターを教育する。味に文句をつけられたら、料理そのものの改善や、ソースや付け合わせの工夫などをする。クレームをしてきた客はもう来ないかもしれません。しかしこの時に改善したサービスや味で、次に来る客を常連客にすることに成功できるかもしれないですよね。お店の味やサービスが気に入らなかったら黙って来なくなる客の方が圧倒的に多いので、ほんの1%くらいのクレームをしてくる客は非常に貴重ではないでしょうか?
詐欺師も同じです。相手は組織犯罪です。うまくゆかなかったらその原因を解析します。うまくゆかなかった原因をカモっていた相手が教えてくれればしめたものです。
すぐばれやすい写真や設定はやめるでしょう。手口に少しばかり味を添えて、『典型的な国際ロマンス詐欺の手口です』とちょっとでもこの詐欺の知識がある人なら簡単に言えるような内容を詐欺ストーリーから排除するかもしれない。そして改善を重ねます。
被害者が『ギャフンと言わせた』と思っている決定的な一言は、レストランのクレーマーによる苦情と同じように詐欺団から歓迎さえされるものです。
結論として、ギャフンと言わせたつもりで送った『詐欺である証拠』の画像や詐欺情報サイトのリンクなどは全く詐欺団には堪えないのです。これはあたかもゴジラに水鉄砲で攻撃するようなものです。
それどころか、詐欺師側にとっては大きな益になります。自分たちのやり方を改善する機会になるからです。そして、それは次の犯行をより効果的にできる助けとなります。
つまり、「ギャフン」と言わせたと信じている一言で、詐欺師に無料で最高のトレーニングを施したことになるのです。次の犯行では同じヘマをしないでしょう。そしてそのターゲットは、推理ショーをしてくれた被害者になることもあり得ます。実際、ミリタリー詐欺に騙されてミリタリー詐欺の手口を熟知していると自認していた被害者の方が『マレーシアにいる欧米人ビジネスマン』を自称する詐欺師にすっかり騙されて送金してしまったというケースもあります。被害者が無料で詐欺師にトレーニングを施して、詐欺師がその恩返しとして更にお金を騙し取るわけですね。あまりにも悲しい事実です。
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