メッセージやメールでご相談くださる国際ロマンス詐欺被害者の方にも、私のブログ記事でも、いつも『詐欺師をブロックしてください』とアドバイスしています。本当にその通りになさる方もおられますが、そうできない方々もおられます。一度ブロックしても、再度ブロックを解いてしまう方もおられる。『ブロックしました』と仰るので信じていたら、しばらくしてから『詐欺師に脅されています、どうすればいいですか?』とご相談いただいたこともあります。話をよく聞くと、やはり言われた通りにブロックなさっていなかった。被害者の方々のお気持ちは分かりますが、結局は犯罪グループと繋がり続けることになんの益も得られないのです。
『XXXを見てはいけません』と言われると『見たくなるのが人の傾向』です。1980年に公開された米伊合作のローマ皇帝カリギュラの話を映画化した作品があまりにも過激な場面が多いため、上映地域が制限されたそうです。それがかえって人々の関心を引いたということから、「見るな」と言われるとかえって見たくなることを『カリギュラ効果』といいます。
『見てはいけない』と言われて『見てしまった』というお話は神話や伝説、昔話、宗教書などでいろいろ語られています。ここで宗教談義や比較文化論などを論じるつもりはなく、『なぜこの人は見てしまったのか』ということを『国際ロマンス詐欺の被害者』が『ブロックしてください』といわれても相手の詐欺師をなかなかブロックできなかったり、メールやメッセージを既読にしてしまうことに結び付けて考察しました。宗教的・文化的解釈や細かい意味合いではなく、「動機」に焦点を当てていますので、各ストーリーに伴う『教訓』とかについては詳しく触れません。今回は旧約聖書のロトの妻です。
3) ロトの妻…後にしてきた楽しいこと
Lot and daughters escape the destruction of Sodom. Mosaic at Monreal Cathedral.
物語:-------------------
旧約聖書に登場するロトという人物は、アブラハムの甥です。叔父と一緒に遊牧生活を続けていましたが、アブラハムの牧夫と自分の牧夫との間で争いが起きたため、アブラハムが別々に行動することを提案し、ロトにどちらに進むかを選ばせます。ロトは肥沃なソドムのほうへ移動し、そこで生活をします。
ソドムとゴモラという都市は、ユダヤ教の視点では忌むべきことを習わしにしているところでした。ヘブライ人の神様がロトに天使を使わして、その都市を滅ぼすことを予告します。ロトと妻と2人の娘はソドムを脱出して近隣の都市に向かいます。天使から『逃げる間後ろを振り返ってはいけない』と告げられます。しかし、ロトの妻は逃げる途中で後ろを振り返ってしまい、塩の柱となってしまいます。
ロトの妻がこの時後ろを振り返ってしまった理由は、旧約聖書には説明されていません。しかし、新約聖書でイエス・キリストが言及している箇所があります。
ルカによる福音書17章31,32節『その日には、屋上にいる者は、家の中に家財道具があっても、それを取り出そうとして下に降りてはならない。同じように、畑にいる者も帰ってはならない。 ロトの妻のことを思い出しなさい』
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ロトの妻が後ろを振り返ってしまった理由は…ソドムでの物質的なもの・豊かな生活、つまりはソドムに住んでいた時の『楽しい思い出』
ロトたちは、アブラハムの一行と別れて肥沃な土地に移動しました。そこで良い生活が出来たことでしょう。都市は治安が悪いひどいところだったかもしれません。しかしそこでの生活は悪いことばかりではなかったはず。楽しい思い出もたくさんあったでしょう。その後にしたものを惜しんで後ろを振り返ってしまったことが、ロトの妻にとって悲劇となりました。
国際ロマンス詐欺において、『詐欺師との接触を断って、ブロックして関わらないようにしてください』とアドバイスしてもなかなか聞けない被害者の方々の中にも、詐欺師とお付き合いしていた期間がとても楽しく充実していたと感じる方々がおられることでしょう。
お金をなかなか振り込まなかったり、あるいは疑いをさしはさんだり突込みを入れたりすると相手は怒りだす。脅しに近いことを言われたこともあるでしょう。しかし一方で、楽しく甘い思い出もあるのではないでしょうか。あたかも、暴虐に満ちた都市に住んでいても、楽しい思い出があったと感じたロトの妻と同じように。あなたのお相手だった詐欺師は優しい言葉をかけてくれたり、相談に乗ってくれていたかもしれない。悪いことばかりじゃなかったと思えるかもしれません。
しかし楽しい思い出を懐かしむあまり後ろを振り返ってしまうと、ロトの妻が塩の柱となってしまったのと同様に悲しい結果に陥ります。相手は喜んで迎え入れてくれるかもしれない。相手が再び優しい言葉をかけてくれて、警戒心も緩むかもしれない。一度だまされた人は二度騙される可能性があると言われています。再度送金させられる結果に陥ってしまうかもしれない。
相手との接触を断とうとするときに、相手とのやり取りが楽しかったことを思い出され、「許してあげよう」と思ったり、「またあの楽しい会話に戻りたい」と感じたりするのであれば、是非リアルで会える家族や友人との親交深めるようにしてください。それらの家族や友人こそ、詐欺師を絶った後のロスを埋めてくれる大切な人々です。
次回は、前回のオルフェウスと酷似したイザナギのお話とゆきましょう。
