何度も書いていますがマネーミュールというのは国際詐欺において資金洗浄を手助けする共犯者にされた被害者や金で雇われた何も知らない共犯者のこと。

 

ドラッグミュールが薬物の運び屋であるのと同様、「お金の運び屋」です。

 

ミュールとはラバのこと。ラバは馬とロバを掛け合わせた動物で、ロバの耐久力と馬の力を兼ね備えていて労役に向いていると言われている。つまり犯罪グループの末端で労役を課せられるリソースということになります。

 

マネーミュールはお金で雇われた在宅でバイトする感覚でする人もいますが、詐欺被害者の中から育成されることもしばしば。

 

インターネットを使ったロマンス詐欺師は被害者からお金を奪いながらも強い信頼関係を構築します。つまり、詐欺師はお金が自分の銀行口座に送られてきても、それを全部取ってしまわない人物を育成するのです

 

やがて信頼関係が構築され、裏切ることがないように教育された被害者はマネーミュールと化する。詐欺師から何らかの手伝い・協力を頼まれ、送金した金額の一部が戻ることを詐欺師が約束する。相手を助けたいとかお金がわずかだが戻ってくることの期待から、詐欺被害者がそれに応じる。個人的な銀行口座を使ったり、詐欺師から依頼されてダミー会社名義で口座を作る場合もある。

 

別の被害者たちがお金を送金してくると、マネーミュールは自分の約束された取り分をとって残りをウェスタンユニオンなどの『受け取り側の足がつかない方法』で送金する。ナイジェリアやガーナのウェスタンユニオンには詐欺団のスパイ(モグラ)が潜んでおり、かなり甘いチェックで、偽名であってもお金が受け取れる。従ってウェスタンユニオン送金ではマネーミュールはウェスタンユニオンの窓口でIDを提示しなければならないが、主犯がお金を受け取るときには甘いチェックで足がつかない。

 

マネーミュールはまた、詐欺師が盗んだクレジットカードで買った商品を受け取る役割も担う。他の被害者への贈り物(ぬいぐるみや花束など)や自分の買いたいものをオンラインで購入し、マネーミュールに受け取らせる。マネーミュールは指定された住所にその荷物を転送する。マネーミュールは盗んだクレジットカードで購入したものを受け取り、それを転送したことで、盗んだクレジットカードで買った商品の直接の受け取り手となる。(つまり盗んだクレジットカードでの買い物の責任を負う。)

 

この種の犯罪にかかわってしまうと、最前線に立たされて警察から見つかりやすいのがマネーミュール。詐欺団にとっては捨て駒である。

 

マネーミュールは別の被害者から送金されたお金を受け取ることで詐欺の片棒を担いだことになる。そして、一部を自分のものとし、お金を主犯へ移動したことで、マネーロンダリングの片棒も担いだことになる。

 

マネーミュールは国際詐欺の非常に重大な役割を果たしている。

1)詐欺師の足がつかない。つまり、他の被害者が直接知っているリアルの住所や口座番号はマネーミュールだけ。それ以外のもの、例えば詐欺師が自称する人物は架空であり、住所や居所も架空のもの。マネーミュールが間に入ることで他の被害者たちから姿を隠せる。逮捕のリスクはマネーミュールに残る。

2)マネーミュールは分け前をわずかだがもらえるので、「失ったお金が一部でも返ってくる」ことになり、相手を「詐欺師ではない」と認識する。

3)物品の場合、マネーミュールの住所を介して合法的な住所に送られるため、詐欺師は盗んだクレジットカードを使って安心して買い物ができる。

 

しかし、それだけ大事な役割を果たしているにもかかわらず、マネーミュールは捨て駒。警察に捕まったり銀行口座が凍結されても詐欺師は何のケアもしてくれない。

 

自分も被害者なのだから、自分のお金が詐欺師から返ってくるのだから、誰から送金されてきたものであっても構わないという被害者の方もおられると聞いている。しかし、マネーミュールになることは、犯罪に加わったことになる。

 

マネーミュールのリスク:

1)マネーミュールは詐欺行為に加担したということで起訴される可能性がある。(詐欺被害者が騙されて知らないでやったということが証明されれば情状酌量もあります。マネーミュールにされていたことに気づいたら自分が騙されていた証拠をそろえて警察に報告してください。)

 

2)送金した被害者にお金を返す義務が生じる。(これは当然の義務です。詐欺師が「お金を返してくれた」というのはマネーミュールの勝手な言い分で、本当は「他の被害者が送金した」わけですから。)

 

3)個人情報が犯罪組織に知られている。従って犯罪組織が何らかの方法で利用する可能性がある。

 

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マネーミュールも被害者なのになぜ犯罪者扱いされるのか、他の犯罪で考えてみましょう。

 

金正男氏を殺害した2人の出稼ぎの女の子たち。彼女たちの主張を完全に信じるなら、男に騙されて遊びの感覚でまさか相手が死ぬとは思わずに実行犯となりました。でも人を殺したことへの責任は逃れることはできない。

 

ドラッグの運び屋にされた人々で検挙されるケースの中には、本当にドラッグが入っていたことすら知らなかった方々も少なくありません。国によっては運び屋をしただけで死刑ですし、たいていの国では刑務所に入れられます。知らないで運んだとしても、言い訳にならないのです。薬物を国に「持ち込んだ」という「事実」から運び屋として刑を受ける結果となる。

 

同じように、詐欺師に騙されてお金を受け取って、その一部を詐欺師に送金したことはマネーロンダリングですし、送金してきた人々は他の被害者。知らないでやったとしても、他の被害者のお金の一部を「詐欺師から返してもらったお金」として自分の物にしている。だから詐欺被害者としての情状酌量はあるとしても最低限被害者への返金や銀行口座の凍結などは免れないのです。

 

だから、マネーミュールには絶対にならないで! 一生棒に振ります!

 

 

 

 

 

参考資料:Romance scams now:The Basic Money Mule Model

 

 

ビデオは英国の被害者のストーリー