コトラー氏のマーケティングの教科書によると、マーケティングマネジメントの定義として「ターゲット市場を選択し、優れた顧客価値を創造し、提供し、伝達することによって、顧客を獲得し、維持し、育ててゆく技術及び科学」と定義されています。つまり、製品を売り込む技術だけがマーケティングではないのです。
勿論、大学を出ていない犯罪者集団が経営コンサルタントが使うようなマーケティングフレームワークを知るはずもないですが、しかし彼らの使う手口はマーケティングの手法を巧みに使っています。
詐欺ビジネスの究極の目的はお金です。恋愛ではありません。しかし、その究極の目的を達成するために利用する手段が、国際ロマンス詐欺の場合「恋愛」という道具です。
ウェブマーケティングという視点から国際ロマンス詐欺を説明されているブロガーさんがおられますが、確かにダイレクト・レスポンス・マーケティングという手法をロマンス詐欺師が使っていることは確かでしょう。ダイレクトマーケティングとは、仲介業者を使わずに消費者直接販売チャンネルを利用して顧客に到達し、財やサービスを届けるというもの。詐欺師はリアルタイムで直接顧客に接し、パーソナライズされた「サービス」として愛や気遣いの言葉や励ましなど、顧客が価値を感じるものを提供し、信頼を構築します。この信頼が構築されると、顧客ロイヤリティが向上し、被害者が詐欺師をなかなか裏切らなくなる。
詐欺師の誘いに応じてしまった被害者の方の持つニーズを、詐欺師は巧みに探り出します。ファーストコンタクトで詐欺師は被害者候補とチャットをし、顧客(被害者)のニーズを探ります。既婚か未婚か、「他の人に悩みを聞いてほしい」「自分を理解してくれる人が欲しい」「優しい言葉をかけてくれる人が欲しい」といったニーズがないかを探る。職業を聞いてどれくらいお金がとれるかを見積もり、優良顧客を選別する。詐欺団によっては、日本人狙いとか既婚者狙いなど、ターゲットを明確に持ったグループもあります。
顧客(被害者)からの信頼を得るための愛の言葉や気遣いなどは、手軽に提供し顧客がニーズを満たされていると感じさせるためのコンテンツマーケティングです。ロマンス詐欺師は、被害者一人ひとりに向けた、プレミアム広告のようなコンテンツとしての愛の言葉や送金への感謝の言葉などを提供している。
それから、設定したキャラクターを売り込むためのパーソナルブランディングも行います。被害者にとって理想の相手の姿を作り出すためです。口癖のように「神様の思し召し」などといって信心深さを常にアピールしたり、「君に理解してほしい」と繰り返し言って「理解者を探している」ということをアピールしたり。愛の言葉を連発することで、写真と「愛」が連結され、被害者は写真の人に愛されていると錯覚を起こす。また、盗用している写真でいかにお金持ちであるかを見せたり。偽のLVやプラダのバッグがあっという間に壊れるのと同じで、彼らの嘘はすぐにばれてしまいますけれどね!
参考資料:
コトラー、ケラー「マーケティングマネジメント」第12版 平成26年4月10日. 丸善出版
グローバルリンク. 国際ロマンス詐欺で女性を騙す輩はウェブマーケティングのプロ. グローバル化とネットビジネス
http://bulknet.asia/blog/archives/5366 (viewed 2018.9.4)

