仕事が非番の今日

腰を怪我した母の代わりに実家の惣菜屋を手伝いに来ている

店から車で10分程度のところに実家があり

母はのんびり日頃は見れないテレビでも見ながら休んでいるはずだ


シャッターが下ったままの店舗が目立ち始めた商店街に店はある

末っ子の弟が店を継いだのだが

人通りも疎らになった商店街での経営は苦しい

商店街が賑わっていた頃には

数人の従業員を雇って店を切り盛りしていたが

売り上げの落ち込んだ今は、高齢の両親と弟で賄っている

その母が腰を悪くしてからは

仕事が非番の日には店を手伝うようにと母から頼まれている

いや、強制されている

「私だって働いているのに…」

元々口から先に産まれてきたような母である

店の手伝いを断ろうものなら、どんな非難の言葉を浴びせられるか

想像しないでもわかる

どうせ刃向うことが出来ないのなら、最初から大人しく従った方が楽だ

料理を作ることが出来ない私は

もっぱら野菜の下ごしらえと店番だ

けれど今日は
近所で行われるお祭り会場への仕出し弁当の注文が入っている

弟が作った料理を弁当に詰める作業をひたすら続けている

慣れない詰め物作業で肩がパンパンに張ってきた

朝からずーと立ちぱなしで足が棒のようだ

「あー疲れた」とふと顔を上げると

普段は見かけることのない若いカップルが
お店の中を見るように通り過ぎていく

「あら?めずらしい」

今や錆びれた商店街で見かけるのは常連客だけになってしまっている

「こんな所でデートでもあるまいし、変だな」

暫くすると、去って行った方向から戻ってきた

今度は店の中を見ながカップルの女の子の方が軽く会釈した

「うん?弟の知り合い」

「ならば、声をかけなきゃ」と数歩近寄ると

薄く靄のかかった記憶の底から

懐かしい幼き少女の顔が浮かび上がってきた

『凛ちゃん?凛ちゃんじゃない?』

『ハイ』と小さく頷く顔にかすかに面影が

凛ちゃんは私の上の弟の長女である

凛ちゃんが小学2年生の時、弟は離婚し凛ちゃんと双子の弟妹は

嫁と一緒に出ていった

それっきり、家族の誰も彼女達親子に会うことが出来ずにいた

離婚の原因は

長男である上の弟が稼業の惣菜屋を継いだのだが

両親と弟家族が同居することになり

口うるさい姑の母と弟の嫁は、周りの想像どうり上手くいかず

その二人の仲裁役の弟がストレスから不倫相手に溺れたこと

ひとえにうちの家族が悪いんだ

だから、嫁には私達に一切子供達とは関わるなと約束させれた

その一件が原因で上の弟は蒸発

家族の誰も居場所を知らないまま時が過ぎた

あれから八年

高校生になった凛ちゃんは「自分のルーツを知る旅」という名目で

昔住んでいた実家と店を訪ねに来たのだ

一緒に付き添っているのはボーイフレンドらしい

ここより先に実家に行ったのだが

チャイムを押す勇気が持てず店に来たらしい

ひとしきり話した後に

『パパは?』と凛ちゃんは尋ねた

一番に会いたかったのはやっぱりパパなんだ

実は去年、蒸発した弟からメール受け取った

住み込みで料理屋で働き資金を貯めたので

自分で居酒屋を開店する、その準備中らしい

この事は家族には内緒にしてあるので

今ここで凛ちゃんに話すことができない

下の弟から連絡を受けた母が腰の痛みも忘れすっ飛んできて

人目も憚らず凛ちゃんを抱きしめ大号泣

あれよあれよという間に

実家に連れて帰ってしまった

今日実家を訪れることは勿論、凛ちゃんはママには内緒なので

長居をせずにすぐに帰ったようだった

凛ちゃんとメルアドの交換はできた

弟のことは折をみてメールしよう

それよりもだ

あの母に凛ちゃんにママの悪口だけは言わないようにと

よく釘を刺すのが先決だ



私にとって身につまされるお話であり

凛ちゃんの気持ちを考えると切ないためいき

ドラマのワンシーンのようなお話だけれども

ノンフィクションですが登場人物の名称は架空のものです

夫婦は分かれてしまえば他人だが

親子はどこまでいっても親子

血というものは因果なものだ

子が望めば、夫婦は各々親の役割を果たす義務があるように思う

今回の出来事で凛ちゃんを取り巻く大人達が凛ちゃん家族の幸せを導くように
関わりが持てるようになればいいと祈りたい

今夏も届きました

長男宛に謎のおかき詰め合わせ




家族一同、謎やな?

盆と正月に届く謎のおかきを見て思う

他にもっとすべき事があるのではないの?貴方


 
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