百貨店での仕事の振り返り話です。
去年の春先に、地方の百貨店での外国フェアにて、雑貨等の販売の仕事を依頼されたことがありました。
たしか平日の午前中だったと記憶しているのですが、小学校低学年ぐらいの女の子とそのお母さんが、担当するブース内へやって来て、雑貨を手に取りながら見ていました。
メイン商品の木製ボタンを見つけた娘さんが『これ欲しい!』と言いながら、気に入ったものを手持ちのトレーへ選び出して、その様子をお母さんは見守っていたのですが、娘さんが8個ぐらい選んだ辺りで値段を見て『えっ!こんなにするの!』と、たまげていました。(※外国から輸入したものなので、1つ400円以上するものも)
『○○ちゃん、こんなにたくさん買えないよ〜。減らそう、減らそう!』と、トレーからいくつか戻そうとするものの、娘さんは、渋る渋る。
そんな押収が長時間続いて、見かねて私から『ボタンご購入のお客様へ、ハート型のボタンを1つプレゼントしているんです。特別に2つお渡ししますから、(娘さんの方を見て)数を減らしてもいい?どう?』と提案したら納得してくれたみたいで、レジまで案内をして、会計後に催事場を出られたのを、遠目から見ていました。
ところが。
5分も経っていない内に、その親子連れは売場へ戻ってきて、お母さんが私へ『娘がやっぱりボタンいらないって言うんです。返品させてもらえます?』と言ってきたものだから、もう脳内が吹っ飛ぶしかありませんでした🚀🌋🤯
きっと顔が引きつっていたかと思われ【マスクに助けられた一場面】として、ずっと忘れることは無いかと。
『か····会計から、ものの数分しか経っていませんけど!?選んで悩んで説得までのやり取りって一体何だったの!?何よりちゃんと、娘さんと対話したの!?』ぬぁんて、言えるはずも無いわけで。
食品ではないため要望を叶えることは可能ながら、いったん売場から持ち出された物なので、【取消】ではなく【返品作業】となり、これが百貨店側にもお客様側にとっても、かなり手間取ることになります。
先に会計担当の百貨店の社員さんへ、その旨を伝えに行ったら『えぇっ!?』と、かなり戸惑っていました。(返品理由の書類を経理課へ提出したりと、本当に仕事が増えちゃうのです)
遠くからレジの様子を眺めていたら、返品・返金対応を終えたのちに、その親子連れは私の元へやって来て(←キッチリしているんだか、していないのだか)『ほら、あんたも謝りなさいよ〜』と、お母さんがヘラヘラしながら、娘さんへ謝罪を促していました。
娘さんは一言も発さずに 私をじいっと見つめるのみで、私も引きつり笑いしか出来ませんでした。(その日マスクに助けられた場面、2回目)
彼女の大切なお母さんを否定する態度なんて、出せるはずが無い。でもだからといって『大丈夫ですよ』と口にしたら、何かを大きく歪ませてしまう。
でも本当にはこの子は全て、見通しているんだろうなぁ。
“私のお母さんの態度はいま、世界から受け容れられてはいない”って。
実は彼女がボタンをまさぐっている時から、本気で欲しがっているようには見えませんでした。
珍しいものを見つけて、気まぐれで好みのものを選んで、どこか意地になって買った、みたいな。小さい子どもが好みそうな絵柄でも、ありませんでしたし。(でも立場上『本当に欲しいの?』なんて、聞けるはずもありませんしね)
偉そうなことを、言える立場ではないけれど。
お母さんがちゃんと娘さんへ心を寄せて、本心から欲しいのかを見極めてあげて欲しかったと思う。もしくはオマケを付けた店員の善意を思って、返品はしないと言い聞かせて学ばせるとか、謝る時はヘラヘラしたりせずに、誠実な態度を貫くとか。
どれか1つでもあのお母さんが選べて、毅然と振る舞えたなら、娘さんの道の心強さや兆しとなるに、違いないはずなのに。
子どもや店員だけに限らず、普段から誰にも心を近寄せていないことが伺い見えて、それほど混乱しているということだけど、その不安定に子どもが巻き込まれているかと思うと、やるせなくなりました。
ただ、“何も出来ないから”と無力感を感じていたけれど、あの場で精算前に“納得のいく買い物ができますように”と、祈るぐらいは出来たかもしれません。
そういうたくさんの細やかな祈りが束になって、いつか、あの親子の混乱を少しでも鎮めてくれていたらなぁと、願ってやみません。
Arisa