「ねぇ、お姉ちゃんは、ひっくり返っていることに気づいている?あなたは誰?」
「・・・わたしは、わたし。わたしは、未来のあなた自身よ」
「そう・・・時計を巻き戻してここにきたわけね」
全く驚きもせず、さも当たり前のことのように少女は言う。
「マヤちゃんには、どうして、それがわかるの?」
「時計だって正面から見れば時計回りだけど、裏から時計を見れば反対に回っているから。時間を巻き戻すのって、これと同じ原理を使うのでしょ?」
少女はどこまでも透明な声を発している。
「ねぇ、マヤちゃん、お姉ちゃんも粘土を一緒にやってもいい?」
「いいよ」
こうして二人は、しばらく一緒に粘土で遊んでいた。教室にいる先生も、子どもたちも、未来からやってきたマヤの姿が見えないようだった。しかし、粘土を破壊した少年だけが、未来のマヤのことをジッと見つめている。逆回転の少年には、未来から来た人が見えるのだろうか?
時間を逆回転させてここに来たのだから、逆回転の少年にはその姿が見えてもおかしくないのかもしれない。もしかしたら、あの少年も未来の時空から・・・?
そんな疑問がよぎった瞬間に、少年は慌てて後ろを向くと、奇声をはりあげながら駆けて行ってしまった。
湖で撮影された鏡の世界
「ねぇ、マヤちゃん・・・まんマルは、なんで龍になったと思う?」
「たった一人で、退屈だったからよ」
なんの迷いもなく、少女は即答するのだった。
「そうね。きっと、宇宙だって、一人はつまらないんだよね。ねぇ、あの男の子、本当はマヤちゃんと一緒に粘土したいんじゃない?一緒にやろうよって、言ってみたら」
「いいの、別に」
「二人で作ったら、また別の宇宙ができるかもしれないよ」
以上、「宇宙の羅針盤(上)」より転載しました。(次回へつづく)


