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どうして沙代の口から ”如月柊也” という名前が出たのか、

柊也には不可解だったが、彼女が ”如月柊也についてのこと” を、

知ったことは間違いなさそうだった。

思いあぐねく柊也の気持ちを、沙代は察したのか、

「 柊也、あそこの別室で座って話さない?

  今、誰もいない。 」

沙代の示す方へ目を向けると、

先程までクラスメートたちが数人、談笑していた小広間内にある別室には、

もう誰もいない。

「 ・・そうしようか・・・。

  沙代も立ちっぱなしだし、疲れただろう? 」

「 ありがとう・・・柊也。 」

返事をしながら沙代は思った。

ーー心が揺れてる時でも、柊也は気配りの出来る優しい人・・・。

2人は飲み物だけ手に持ち、扉が開け放たれている別室に移動すると、

幾つかある小さなテーブル席の一つに落ち着いた。

そこは6畳間ぐらいの広さ、内装が淡いピンク色で、

天井にあるスズランの照明が、とても可愛らしい。

少しの間、部屋の雰囲気を堪能していた2人だったが、先に沙代が口を開いた。

「 どうして私が ”如月柊也” のことが気になったか、

  柊也は知りたいんでしょ? 」

無言で微かに頷いた柊也に、沙代は昼間、ワイドショーで観たことの、

一部始終を話した後、

「 私・・・率直に ”如月柊也” は、すごい人なんだって思った。

  カイトを立ち直らせる原動力の一部になった人なんだもの!

  きっと人間的にも、素晴らしい人なんじゃないかなって・・・。

  私も胎教に聴いてみたくなっちゃった。

  ・・・でも私には引っ掛かることがあったの。

  ”如月柊也” の ”柊也” という名前と、

  愛した人のために、彼が弾いていたと伝えのあった ”夜想曲” ・・・。

  柊也と深い繋がりがあるような気がしてならなかった。

  でも、ほんの直感に過ぎなかったから、半信半疑な気持ちもあったけど、

  その直感を見過ごしてはいけないような気がして、調べさせてもらった。

  如月柊也はプロのピアニストの傍ら、

  K音大でピアノの講師もしていたんだったね。

  教授の娘と婚姻していながらも、そこに通う音大生と不倫関係になった。

  その不倫相手の音大生は ”夜想曲” が好きだった・・・。

  K音大には、柊也のお母さんも、昔、音大生として通っていて、

  ”夜想曲” が、お母さんの好きな曲だったって、

  高校生の時、柊也は言っていたよね?

  それは如月柊也がピアノの講師をしていた時期と同時期だったんじゃ? 」

「 そうだよ。 」

沙代の問い掛けに、柊也はハッキリと答えた。

「 沙代の想像する通りだ。

  如月柊也・・・本名・中垣忠雄は、オレの父親だ。 」

「 やっぱり・・・そうだったんだね。 」

沙代は声を潜めると、

「 私、実はね。

  卒業式の2日前に、修平くんから、柊也の少年時代のことなど、

  全てを聞いていたの。

  柊也のお父さんとお母さんが不倫をしていたことも・・・。

  あっ・・・誤解しないで!

  修平くんはね、なぜ柊也が母親に執着しているのかを話すことで、

  私の誤解を解きたかっただけなの。 

  柊也のことを思うからこそ・・・。 」

「 わかってるよ、沙代。

  修平は面白がって、そんなこと話すヤツじゃないって・・・。

  きっと沙代にだったらと、話す気持ちになったんだと思う。 」

柊也は優しく笑ってみせると、沙代に全てを打ち明けようと決心し、話し始めた。

20歳の誕生日を迎えた時に、母親・響子が柊也宛にと書き残していた手紙を、

祖父母たちから受け取ったこと。

その手紙には、父親・中垣忠雄と響子との馴れ初め、

講師と学生の関係で、不倫だったとはいえ、2人は本当に愛し合っていたこと。

中垣自身の経歴、人格。

後(のち)の中垣の離婚、響子のアパートでの同棲生活。

そして中垣と響子が別れてしまった根本的な引き金となった ”事件” 。

・・・中垣が響子の身を守るために、元妻の愛人を殺害してしまったこと・・・。

例え、正当防衛で法的には罪に問われなかったとはいえ、

社会的な中傷、好奇の目から、まだ若かった響子を守るために、

中垣が自ら彼女に別れを告げて縁を切った上、

音楽界から社会から消息を絶った後響子が妊娠に気付き、

自分が生まれたこと・・・。

柊也は、響子の書いた手紙の内容を包み隠さず、沙代に話したのだった。

そして柊也が21歳になって、初めて中垣と親子としての対面を果たした時に、

知った真実・・・中垣が響子に別れを告げた、もう一つの理由。

それは、あの事件をきっかけに、精神疾患を患ってしまった元妻へ、

中垣が長い年月を掛けて、償いをしていた真実であった。

そんな、こんなで柊也は等身大の父親の姿を知り、お互いに心打ち解けあい、

本当の親子として歩み出せると思いきや、

中垣が脊髄小脳変性症という不治の病を患っていたことを知り、

彼が残りの人生を穏やかに過ごせるようにと、

これまで出来る限りのことをしてきたこと・・・。

それらを話し終えた柊也に、沙代は言った。

「 柊也が、お父さんに会うことが出来てよかった。

  でも・・・脊髄小脳変性症だなんて・・・。 」

沙代は昔、テレビドラマで観た、同じ病気のヒロインを思い浮かべ、

思わず胸が苦しくなった。

「 今のお父さんの病状は、どうなの?

  不自由があるんじゃ? 」

沙代の問い掛けに、柊也は目を伏せ、ゆっくり首を横に振ると、

「 介護施設にいた父さんは7ヶ月前の5月に亡くなった。

  安らかで、優しい顔だった。

  父さんが、オレや家族宛てにと残した、介護士代筆の手紙には、

  ”幸せな人生だった” と書かれてあった。

  でも父さんは、本当に幸せだったんだろうかって、

  オレは不安になってた。 」

「 ・・・そうだったんだね・・・。 」

柊也の気持ちを思うと、どう言葉を掛けてあげたらいいのか、

沙代にはわからなかった。

「 でもな・・・沙代。

  オレの奥さんが、こう言ったんだ。

  ”お義父さんらしく生きられたんじゃないか”

  ”だから幸せだったんじゃないかと思う” って・・・。

  オレ・・・それを信じようと思った。

  闘病生活を送っていながらも、いつも父さんは穏やかだったから・・・。 」

「 ・・・そうだね、柊也。

  柊也の家族間のことを、何も知らない私が言うのも、

  デシャバリに聞こえるとは思うけど、私も奥さんの言ってたことを信じる。

  自分らしく生きられたからこそ、幸せだったからこそ、

  お父さんは安らかな表情をして、旅立って逝けたって・・・。 」

「 沙代・・・ありがとう。 」

「 うん・・・きっと大丈夫。 」

しばらく柊也と沙代は見つめ合ってはいたが、

「 ”自分らしく生きる” 。

  それが出来たんじゃないかと思える柊也のお父さんは素晴らしいと思う。

  柊也・・・。

  私、半年前、不思議な夢をみたの。

  高校3年生の時の私の学校生活が卒業式の日まで再現されて、

  夢の中の大人の私は、第三者として、それを見ているの。

  その夢が・・・夢の中の再現に出てきた柊也が、

  再び私に教えてくれた。

  自分らしく生きることを忘れかけていた私に、思い出させてくれた。 」

不思議な表情をする柊也を横目に、更に沙代は言葉を続けた。

「 ねぇ、矢部先生が卒業式の時に言っていたこと覚えてる?

  ”どんな試練も受け入れ、自分らしく生きる” 。

  私・・・卒業式の後に、体育館裏で、柊也と2人っきりになった時、

  面と向かって言えなかったんだけど、

  あれ・・・ ”柊也そのもの” だって感じてたの。

  そう感じたら、柊也のこと尊敬している自分に気付いた。

  あの時点から柊也は、私の目標になっていたのかもしれない。

  だから柊也には、これからも自分らしく生きていってほしい。

  変わらないで・・・。

  そんな柊也が、私が私らしく生きる原動力になるから・・・。

  どんな試練があっても、自分らしさを失わずに、お互いに成長していこうね。

  また会う時も、お互いに ”幸せ” を感じ合いながら、会いたい! 」

「 沙代!!

  沙代に目標にされてたなんて・・・オレって・・・。

  なんだか嬉しい。

  実はオレも、半年前、一度だけ沙代の夢をみたんだ。

  夢の中の高校生の沙代・・・笑顔で満ちていて可愛かった。

  オレの中にある高校時代のノスタルジアは、絶対、沙代の笑顔だった。

  だから沙代の夢をみた時、会えたような気がして、すごく嬉しかったよ。 」

「 柊也・・・。 」

「 オレと沙代は、これからも同志。

  頑張っている沙代を心に留めて、これからもオレ、自分らしく生きていく。 」

2人の間に、恋人同士だった頃の空気は、もう無くなってはいたが、

お互いが、お互いを理解し合える関係が築けていることを、

柊也も、沙代も実感していた。

「 ねぇ、柊也!

  乾杯しない? 」

「 うん、しよっか!

  じゃあ音頭は、オレがとる!! 」

沙代の提案に、柊也ものった。

「 オレと沙代。

  これからも2人が自分らしく生きる同志であることに、

  乾杯っっっっっ!!! 」

「 乾杯っっっっっ!!! 」

カシャンッッ・・・。

重なり合ったグラスの透き通った音の響きは2人の、

これからの人生の祝福を奏でるような余韻を残した



~~終~~


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< ひとこと >


やっと今 (本日11時45分丁度 笑) 小説を書き終えました (;^_^A


はい ( ̄_ ̄ i)


今日は家事を犠牲にしています汗


今日の更新に、間に合わなかったら、どうしようという、


プレッシャーがありましたが、書き終えて、ホッとしています。


一応、推敲しながら書きましたが、気ばかりが焦っていたこともあり、


文章に自信がありません。


読んでもらっている、皆さんに内容が伝わりずらかったら、


申し訳ないのですがあせる ヽ(;´Д`)ノ


「 ノスタルジア~追憶~ 」 今日をもって、終了させてもらいます。


読者のみなさん、ありがとうございました m(_ _ )m


次回は 「 あとがき 」 で o(〃^▽^〃)o


TSUBASA