< 登場人物 >
村上沙代 ・・・ 25歳 美容師の資格を持つ
村上康太 ・・・ 27歳 沙代の夫 美容師という職業に誇りを持つ
村上海晴(みはる) ・・・ 2歳5ヶ月 沙代と康太の娘
佐伯医師
< 今までのストーリー >
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「11」 「12」 「13」 「14」 「15」 「16」 「17」 「18」 「19」 「20」
「21」 「22」 「23」 「24」 「25」 「26」 「27」 「28」 「29」 「30」
「31」 「32」 「33」 「34」 「35」 「36」 「37」
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S総合病院・処置室。
「 沙代・・・沙代・・・。 」
自分の名前を呼び続ける声に、
薄っすらと目を開いた沙代の視界の中に入ったものは、
清潔感ある白い天井、白い壁、白い布のパーテーション、点滴、
そして心配そうに彼女を見守っている夫・康太・・・。
「 ・・・・・康・・太・・・? 」
傍にいる人物が康太だと分かると、沙代は安堵の息を漏らし、
起き上がろうとしたが、彼に止められてしまった。
狭い処置室の中には、康太以外、誰の姿もない。
「 沙代が目を覚ましそうな様子だったから、思わず名前を呼び掛けてしまった。
もっと眠らせておけばよかったかな? 」
「 ・・・うううん・・・康太が呼び掛けてくれて、よかった。 」
「 沙代? 」
ーー康太がいるからこそ、私は・・・。
「 大丈夫か?
海晴の診察が終った後、小児科で沙代が倒れたと、
佐伯先生から、仕事場に電話が入って、ここに駆けつけて来たんだ。
佐伯先生といえば、3年前に沙代がお世話になった先生だろう? 」
「 ・・佐伯先生・・・。 」
最近の沙代は ”或る迷い” を抱えていた。
なかなか康太にも、それを打ち明けられずにいたのだったが、
先程の過去からのメッセージの影響もあり、
”迷い” に対し、既に前向きに、答えを出していた沙代は、
その ”佐伯” という名をスンナリと受け入れることによって、
康太にも打ち明けようと、決心してはいたが、同時に別の後悔も押寄せた。
ーー迷っていた私が馬鹿だった。
答えは一つのはずなのに・・・。
康太に打ち明けて、前向きな気持ちで、早く受診すれば、よかった。
そしたら康太にも迷惑を掛けずに済んだのに・・・。
「 ・・・康太・・・ごめんね。
仕事中だったんでしょ。
康太にも、お客さんにも、迷惑を掛けてしまったね。 」
「 お客さんの方は大丈夫だ。
こちらの事情があるからと、カットの途中で、大切なお客さんを放り出せないし、
他の美容師に頼むことなんて出来ない。
・・・とはいえ、その時のお客さんが、カットだけの中学生の女の子で、
正直に助かった。
ちゃんとキッチリとセットまで済ませて、帰したよ。
オレらしいだろ? 」
「 ・・・なら、よかった・・・ホント、康太らしいね・・・。 」
「 なぁんて言っても、本当は沙代の顔を見るまで、心在らずで落ち着かなかった。
微妙に声がうわずって、身体が震えてた。
カッコ悪いな・・・オレって。
悔しいくらい、頭の中は沙代のことばかり・・・。 」
「 カッコ悪くなんかないよ、康太は・・・。
ありがとう。 」
「 沙代・・・。 」
照れて目を伏せる康太の横顔が、沙代には、とても美しく映った。
決して長身という訳でもなく、キャシャな体格で、甘いマスクを持つ康太は、
その見た目だけで、ナヨナヨ系な男と誤解されてしまうところがあるが、
本当は男っぽく情熱的だ。
ーー康太は自分の仕事に、強いプロ意識と責任感を持つ人。
一見、仕事人間と誤解されがちだけど、
仕事とプライベートとのメリハリをつけることが上手。
仕事面では厳しいけど、仕事を離れると優しくって、ユーモアのセンスもある人。
最初は、そのギャップに驚かされたけど、
私は康太の、そんなところに惹かれた。
今まで恋愛関係になった人たちの中で、
私が一生を添い遂げたいと思った人は康太だけだった。
沙代は一層に康太のことを愛おしく思った。
しばらく2人は恋人同士に戻ったかのように、お互いに照れ合ってはいたが、
突然、沙代は我に返り、慌てだすと、
「 ねぇ!
海晴は?
あの子は、どこ?
まさか・・・喘息の発作が、また酷くなって入院になってしまったの?
一人で不安になっているんじゃ・・・。
私・・・海晴にハンバーグを作る約束をしてたのに・・・。 」
「 海晴なら、大丈夫だ。
発作の方も落ち着いてて、今、院内の保育士さんとプレイルームで遊んでる。 」
「 そう・・・よかった。 」
「 海晴ったらな。
オレが声を掛けると、真っ先に ”ママは?” って聞くんだ。
ママなら大丈夫だよって言うと、ホッとしたのかな・・・。
堰(せき)を切ったかのように泣き出した。
オレが来るまで、ずっと堪えていたんだろうな。
なんだか可愛くなって、いっぱい抱きしめちゃったよ。
小さいクセして、根性があるんだ、海晴って・・・。
あっ・・・これって間違いなく、親バカかな? 」
康太は笑ってはいたものの、一変して感慨深い表情になると、
「 それに・・・海晴・・しゃくりあげながらも、
”ミハル、いい子じゃないから?” なぁんて言うんだ。 」
「 海晴が?! 」
「 あぁ・・そうだよ。
沙代が倒れたこと、自分のせいかなって思ったんだろうな。
小さいなりに、心を傷めていたんだよ・・・海晴も・・・。
優しい、いい子に育っているじゃないか。
2歳になってから、反抗期に入って、沙代も何かと苦労があるとは思うけど、
普段、一番に関わりの多い母親である沙代のお陰で、
海晴も少しずつ成長しているんだなって実感できたし、改めて感謝もしてた。
いつもありがとうな。 」
「 私ばかりじゃないよ・・・康太だって、いいパパをしてる・・・。
私・・・康太や海晴がいるからこそ、
幸せなんだって気付かされたの。 」
「 沙代・・・。
実は・・・オレも・・・さっき沙代と同じように感じてた。
オレたち、気が合うな。 」
沙代と康太に、ほっこりとした沈黙が広がっていたが、
そのあと2人は、どちらからともなく、話し出そうとして、
「 あっ・・・私たち、同時に話し出しちゃったね。
康太から話して・・・。 」
「 あぁ、じゃあ、そうさせてもらう。 」
康太は心を決めたかのように、軽く息を吸い込むと、
「 沙代・・・今朝はイライラして、ついお前に当ってしまった。
ごめんな。 」
「 うううん・・・今朝のことは、私も空気が読めてなかったのかも・・・。
嫌な気分のままで、仕事に行かせてしまって、ごめんね。
仲直りできて、よかった!
でもね、ここに康太が来てくれてた時点で、
もう、とっくに仲直りだって思ってたよ! 」
「 そうだなっ! 」
沙代と康太は微笑み、見つめ合ってはいたが、
「 実はオレ・・沙代に内緒で或る計画を立てていたんだ。
内緒とは言っても、順調に起動に乗ったら、すぐに打ち明けるつもりでいた。 」
「 計画? 」
不思議がる沙代に、バツの悪い顔をし、康太は笑った。
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< つぶやき > 9月12日記述
康太の呼び声によって、現実へと呼び戻された沙代は、
妻として、母親として、一人の人間として、
生まれ変わったと信じたいですね (*⌒∇⌒*)
次回は沙代が倒れた根底の理由がわかります ( ̄▽+ ̄*)
それは沙代の迷っていたこととも関係します。
今週も、ご愛読を、ありがとうございました m(_ _ )m
TSUBASA