< 登場人物 >

指輪 根本沙代 ・・・ 心の奥底にある柊也への思いははてなマーク


王冠1 森田柊也 ・・・ 沙代の元カレ 


< 今までのストーリー >

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~~~過去のスクリーンの映像~~~

体育館裏で柊也を待って、どれくらいの時間が過ぎただろう。

沙代には、その数分が長い時間に感じられたが、

彼女の決心が揺らぐことはなかった。

ーー私が自分の直感、自分の心に忠実になって決めたこと。

   この選択・・・きっと私は後悔しない。

沙代は顔を上げ、最近になって咲き始めたばかりの桜の木を見た。

彼女の立つ体育館裏には、たった一本だが、桜の木があった。

たとえ日陰な場所というハンデがあっても、一生懸命に咲こうとする健気な桜の木に、

小さな頃からの柊也を重ね合わせ、沙代が心打たれていると、

こちらに駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。

「 沙代!!

  遅くなって、ごめん。

  待たせたかな。 」

息を切らす柊也に、沙代は優しく微笑むと、

「 いいよ、私は大丈夫だよ。

  柊也も大変だったね。

  相変わらずモテテるんだなぁって思っちゃった。 」

先程、数人の女の子たちにボタンを渡していた証ともいえるのだろうか。

柊也の着ている学ランは前がはだけ、中のYシャツが見えていたが、

或る一点の部分のお陰で、かろうじて学ランの前が、

完全に、はだけてない状態になっていた。

その学ランの一点に目が留まると沙代は驚きで目を見開いた。

それも、そのはず・・・柊也の学ランには、まだ第二ボタンが残されていたから・・・。

更に彼の学ランは袖口のボタンまでが無くなっており、

ただ唯一、残っているのは、第二ボタンのみだったのだ。

柊也は意識的に第二ボタンだけを残したのだろうか?

ーー柊也・・・。

沙代は、一昨日、修平の言っていたことを思い出した。

”アイツを見てるとわかる。

 まだ沙代ちゃんを好きだって”

彼女は動揺を隠すように、学ランから目を逸らし、柊也の目を真っ直ぐに見ると、

「 柊也・・・ありがとう。

  ここに柊也を呼び出したのは、

  最後に私の気持ちを伝えたかったから・・・。 」

「 聞くよ、沙代・・・。 」

穏やかな表情の柊也に、沙代は、どこか安堵感を覚えると、

「 柊也とは、私の我が儘で別れてしまう結果になってしまったけど、

  私・・・柊也みたいな人のカノジョになれたこと、後悔していないよ。 」

そう言い、一瞬、照れたように笑うと、沙代は真剣な表情で彼を見つめ、

「 私は、柊也には酷いことを言ってしまった。

  まず最初に・・・それを謝りたかったの・・・ごめんなさい。

  私・・・・・すごく自分が恥ずかしい・・・・。

  私は・・・私の気持ちなんか、柊也にはわからない・・・なんて言ってしまったけど、

  私の方こそ、柊也の気持ちを考えてなかった。

  私は自分のことばかりだったのかも・・・。

  だから一方的に柊也ばかりを責めて、傷つけてしまった。

  カノジョとして、最低、最悪だった。

  それなのに柊也は、私を恨むどころか、

  別れた後も、変わらずに自然体なまま関わってくれてた。

  こんなこと、なかなか出来ることじゃないと思うよ。

  でも柊也は本当に、そのままだった。

  一度だって、私のことを責めることもしなかった。

  柊也は別の意味で ”強い人” なんだって、私は思う。 」

そして沙代は心の中で、それに続く言葉を、彼の心に囁くかのように呟いた。

ーー柊也は心根の強い人なんだね。

   きっと亡くなったお母さんだって喜んでくれていると思うよ。

「 強い人か・・・。

  沙代に、そんなこと言われるなんて、思ってもみなかった。 」

次第に涙目になっていく柊也・・・。

そんな彼に気付かない振りをした沙代は、

「 柊也が、そういう人だからこそ、私も別れたことなんか忘れるくらいに、

  楽しく過ごすことができたんだよ。

  柊也・・・ありがとう。

  そういうところが柊也のいいとこなんだって、改めて気付かされたの。

  別れてから気付く私って、鈍感過ぎだよね。

  今更、遅いけど・・・私が逃がしてしまった魚は、

  とてつもなく大きかったのかも!

  あっ・・・魚に例えちゃったりしてごめんね。

  今度は私なんかより、いいカノジョを見つけてね! 」

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 」

柊也の頬を一筋、二筋と、涙が伝っていくのを見た沙代は、

自分も泣きそうになるのを堪えながら、

「 あっ・・・遅れちゃったけど、K音大合格おめでとう!!

  柊也なら、成し遂げるって思ってた。

  あとはライフセーバーの資格を取ったら、

  念願のライフセーバーやってる音大生だね!

  私は都内のR美容師専門学校に、地元から離れて、

  学生寮から通うことにしたの。

  だから・・・今日の卒業式を最後に離れ離れにはなるけど、

  縁が切れたなんて、私は思わないからね!

  柊也とは恋人の関係とは違う種の深い繋がりでいたいの。

  ・・・ちょっと照れるけど、”家族の絆に似た繋がり” かな・・・。

  ごめんね・・・私が言うのも、おこがましいかな?

  でも恋愛感情を告るよりも、これを柊也に伝えることの方が、

  正直に、すごく勇気が要った。 」

恥ずかしそうに頬を赤らめる沙代を、柊也は優しく見つめると、

「 家族の絆に似た繋がりか・・・。

  おこがましくなんかない、嬉しいよ。

  沙代・・・ありがとう。  

  離れ離れになっても、オレと沙代は、そういう深い繋がりを持っているんだな。 」

「 そうだよ!

  私は、柊也と、そうやって繋がっていると感じられたら嬉しい。

  恋人の関係では失敗してしまったけど、私・・・柊也のような人と出会ったこと、

  高校生活の中で一番の宝物になったと思ってる

  あっ・・うううん・・・それ以上に誇りに思う。

  柊也・・・ありがとう・・・。

  これから私たちは別々の道を歩くことにはなるけど、

  お互いに幸せが舞い込むように、いつも笑っていようね!

  私たち、繋がっているんだから、2人とも幸せにならなくちゃ、意味ない。

  約束だよ!!

  それと・・・さっき、やべっちも言ってたけど、

  ”数々の試練の中に、これからの人生への鍵になるメッセージが含まれてる。

   だから試練を糧に変えて自分らしく生きる”

  やべっちにしては、いいこと言うよね。

  私、この教訓、気に入っちゃった。

  それを肝に据えて、試練を乗り越えて成長したい。

  私たちも頑張ろうね。 」

「 頑張ろうな。

  自分らしく生きて、幸せを掴もうな。 」

しばらく2人は、お互いを理解し合う同志のように見つめ合ってはいたが、

沙代の視線は、自然に柊也の学ランの第二ボタンへと留まった。

ーー柊也の第二ボタン・・・。

先程、彼に群がる女の子たちを傍観視していた時とは違った感情が、

沙代の中に湧き出た。

その湧き出た感情のままに、彼女は、それを言葉にした。

「 ・・・・・最後に・・・ダメ元も承知してるけど、

  柊也と付き合った思い出として、第二ボタンをください。

  私・・・柊也の第二ボタンが欲しい・・・。 」

「 沙代・・・。 」

柊也は涙を流しながら、惜しみもなく、自分の学ランの第二ボタンを手で捥ぎ取ると、

沙代の手に握らせた。

「 ・・よかった・・・よかった、沙代が貰ってくれて・・・。

  他の女の子たちも欲しがってた超レアものなんだぞ。

  ・・・大切にしろよな・・・。

  沙代は最低、最悪なカノジョなんかじゃなかった。

  オレのこと、理解しようと、努力してくれたじゃないか。

  そんな子・・・沙代が初めてだったんだ。

  沙代のこと、オレも誇りに思う。

  沙代の彼氏として一緒に過ごした時間は、

  オレの高校生活の中でも一番の思い出になった。

  ・・・すごく感謝してる。 」

ーー柊也・・・・。

彼の言葉に目頭が熱くなったが、沙代は必死に笑顔を作ると、

「 そんな風に言ってもらえて、ありがとう!!

  なんだか救われたような気持ち・・・。

  柊也の第二ボタンが貰えて嬉しいよ。

  もちろん大切にするに決まってるじゃん!

  ありがとう・・・柊也・・・本当に・・ありがとう・・・。

  じゃあ・・・もう私・・行くよ。

  柊也のこと忘れない・・絶対に・・。 

  私たち・・・ずっと・・繋がってるんだから・・・。

  だから・・・さよならは言わないよ。 」

「 うん・・・・・繋がってるんだな・・・。

  ・・・ありがとう・・・沙代・・・。 」

柊也の ”ありがとう” の言葉を最後に、沙代は精一杯な笑顔で手を振ると、

貰ったボタンを握り締め、走り出した。

柊也に背を向けた途端、堪えられなかったように、

次から次へと涙が溢れ、彼女の頬を伝った。

そして沙代の脳裏に、再び、或る言葉が浮かび上がった。

ーー”尊敬” ・・・さっき感じた一瞬の直感から得た私の気持ち、答え。

   私の柊也への気持ちは、いつしか恋愛感情から、

   尊敬する気持ちに変わっていったことに、その時、気付いたの。

   ・・・私の尊敬する人は・・・他の誰でもなく、森田柊也でしかない。

   私も、柊也のように、自分らしさを失わない強い生き方をしたい。

   自分らしく生きる同志としての、深い絆の繋がりであるが故に、

   お互い、ふと思い出すと、安心できるような、そんな存在でありたい。

   ・・・柊也みたいな人には、きっと私以上に、柊也のことを理解し、

   柊也をまるごと受け入れることのできる女性(ひと)が、

   必ず現れてくれる・・・。

   柊也は、私に対しては、

   自分の全てをさらけ出せてると言っていたことがあったけど、

   一つだけ、さらけ出せなかったものがあったんだよ。

   それは ”弱さ” ・・・。

   私の前では決して見せることがなかった ”弱さ” を、

   安心してさらけ出せる女性が・・・必ず・・・きっと・・・現れてくれることを、

   私は信じているよ・・・柊也・・・。

ふと立ち止まり、見上げた空は、沙代の純粋な心を映し出したように、

透明感のある澄んだ青色だった。

~~~





~~~村上沙代・25歳、夢の中~~~

夢の中、高校生の根本沙代の姿を、ずっと映し出していたスクリーンは消えたが、

沙代の中に清々しい感情と、忘れていた思いが甦った。

ーー卒業式の日、私は柊也と約束した。

   ”幸せが舞い込むように、いつも笑っていようね” と・・・。

   それなのに日常的な生活に流されて、不平ばかり言ってて、

   いつの間にか、今の私は心から笑うことさえも忘れていたんだね。

   私は危うく、自分らしさを失ってしまうところだったんだ・・・。

   生きていれば、試練があることは避けられないけど、

   これからの私は前向きに試練を受け入れたい。

   大切な人たち・・・康太や海晴と笑って過ごしていきたい。

   凹んだ時は ”どんまい、沙代” って、自分を奮い立たせ、

   それでも時には堪えきれなくなったら強がらずに、

   自分だけで背負おうとせず、康太にだって頼ってもいい。

   高校生の根本沙代、現在の私・村上沙代を、

   そういう気持ちにさせてくれたのは、森田柊也・・・。

   小さな頃から、どんな試練を受けても、

   真っ直ぐに自分らしく生きようとした柊也・・・。

   そんな柊也の強さに、私は心を打たれた。

   私にとって、柊也は尊敬できる人に値することに、

   今でも変わりがない・・・だから、あの時の選択に後悔はない。

   柊也と私は、あの時、恋人同士に戻る選択はしなかったけど、

   今でも恋愛感情とは別の種の深い絆で繋がっていると信じてる。

そして沙代は、ふと微笑むと、

ーー秋穂が日用品のお店で会ったという、今の柊也には、

   ほっこりとした幸せのオーラが見えてたと聞いて、私は安心してた。

   きっと強さばかりでなく、内にこもった弱さも、

   まるごとさらけ出せる女性(ひと)に出会えて、

   今の柊也は幸せなんだって・・・。

   よかったね・・・柊也・・・。

   柊也・・・私は、高校生の頃の、あなたとの全ての時間の中から、

   ちゃんとメッセージを受け取れたよ。

   ・・・ありがとう・・・柊也・・・。

突然、沙代の目の前に光が射した。

ーーまたスクリーン?

でも、それは今まで目にしたスクリーンの光とは違っていた。

「 沙代・・・沙代・・・。 」

ぼんやりとした光の向こうから、自分の名を呼ぶ、聞き覚えある愛おしい声を、

耳にした途端、心の中にも、清らかな光が射したことを、沙代は感じていた。

~~~


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< つぶやき > 9月11日記述


今日の37話は、だいぶ長くなってしまいましたが、


書いている時は、なかなか沙代の心の模写や言葉に納得がいかず、


何度も書き直ししてました (≧▽≦) 笑


それも更新の当日、今日の昼前も ・・・ (;^_^A


人の心の中の思いって、複雑で難しい ヽ(;´Д`)ノ


自分の心の中だって、よくわからないのに~~!!叫び


女心と秋の空~~、男心は下心~~ 矢印 或る人の川柳 笑

( パクらせてもらいました にひひ )


でも、なんとか書き切ったつもりです ・・・ たぶん ・・・ (;´▽`A`` 笑


TSUBASA