< 登場人物 >

指輪 根本沙代(当時18歳) ・・・ Y高校3年生


王冠1 森田柊也(当時18歳) ・・・ 沙代の元カレ


宝石ブルー 矢部教諭 ・・・ 3年5組担任 保健体育教師


< 今までのストーリー >

「1」  「2」  「3」  「4」  「5」  「6」  「7」  「8」  「9」  「10」


「11」  「12」  「13」  「14」  「15」  「16」  「17」  「18」  「19」  「20」


「21」  「22」  「23」  「24」  「25」  「26」  「27」  「28」  「29」  「30」


「31」  「32」  「33」  「34」


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~~~村上沙代・25歳、夢の中~~~

再び沙代の観ていたスクリーンは光に戻り消え、彼女は闇に包まれた。

卒業式の2日前に修平がしてくれた ”柊也のことについて” の話しを、

大人になった今、スクリーンの映像から、改めて聞いた沙代は、

一人こう考えてみた。

ーー柊也にとっての母親は共に過ごした時間が短かった上に、

   手の届かなくなった存在になってしまったからこそ、

   聖母同然だったに違いない。

   だからこそ誰かしらに汚されることを最も恐れ、

   柊也の胸の内では、永遠に美しい聖母だと肯定したかったんだ・・・。

   柊也はただ純粋に母親のことを愛し、守りたかっただけ・・・。

   大切な肉親として・・・大切な家族として・・・。

   家族・・・家族か・・・。

   あの頃の柊也は自分の空想の中で、亡き母親を交えた家族という、

   儚い砂の城を壊したくなかったのではないか?

   柊也は家族というものに強い憧れを持っていたのかもしれない。

そして沙代は闇の中、顔を上げると、

”柊也とやり直してほしい” と願った修平を思い浮かべ、   

ーーあの頃の私は卒業式当日になっても、決断に迷っていた。

   柊也のこと全部を承知で、受け止める力が私にはあるのか?

   また遠距離恋愛になっても、恋人同士として、やり直すことが、

   柊也にとっても、私にとっても、ベストな選択なのかどうか?

   それに・・・私の気持ちが、まだ柊也にあるのかどうか?

   でも矢部先生の言葉で、私は・・・・。

沙代が高校3年生の時に担任だった恩師である矢部を思い出した途端、

前方に、再び光が現れ、スクリーンを作った。

ーー次の映像は、きっと卒業式当日の私。

瞬く間にスクリーンは、彼女の心が指し示すシーンを映し始めた。

~~~





~~~過去のスクリーンの映像~~~

卒業式が終わり、沙代を含む3年5組のクラスメートたちは、

担任・矢部の指示のもと、教室へと入り、それぞれに最後の別れを惜しんでいた。

泣いている者、複雑な表情の者、希望が漲っている者・・・。

クラスメートたちの表情や思いは様々で、

沙代も、泣きじゃくる親友の秋穂と手を取り合う中で、

さり気なく柊也のいる方に目を向けると、彼もしんみりとした表情で、

修平を始めとする仲間達との別れを惜しんでいた。

ーー今日、私は答えを出さなくちゃ。

沙代は朝、学校の自転車置き場で、柊也を待ち伏せし、

登校してきた彼に ”帰りに体育館裏に来て欲しい” ・・・と誘っていた。

ーーでもまだ私の心は決まってない。

彼女はまだ柊也とやり直すことに迷っていたが、

堂々巡りを繰り返していても、始まらない。

一旦、頭の中を切り替え、その迷いの思いから離れるつもりで、

ゆっくりと教室を見渡した。
ーーもう、この教室も、このY高校に通うのも、今日で最後。

沙代は自分の身につけているセーラー服に目を移すと、

ーー私がY高校に通いたいと思った一番の理由は、

   このセーラー服に惹かれたからだった。

   クリーム色で、カラーとスカートが茶色。

   本来はスカーフ代わりであるネクタイ風な校章入りの赤い帯が、

   Y高校のセーラー服。

   1年早くY高校に通ってた亜紀ネエが着ているのを見て、

   私も着てみたいなぁって、すごく憧れて、

   それがきっかけで受験にも本腰を入れるようになったんだっけ。

   結果的に私は、この3年間、Y高校に通って、

   この着ているセーラー服以上のものを得た。

   こうやって3年間を改めて振り返ってみて、

   Y高校の生徒になって、みんなにも会えて良かったって、心から思える。

沙代が感慨深げになっていると、教卓に立つ担任の矢部が号令を掛けた。

「 みんな、席に着け!!

  最後のホームルームをするぞ。 」

保健体育が担当教科の矢部は体育会系で、普段は明るく快活な教師のはずなのに、

やはり3年間、授業や部活で一緒に汗を流した教え子たち、

そして担任になった3年5組の生徒たちとの別れが辛い様子で、

卒業式の最中も珍しくシュンと沈んだ様子だったが、

この3年5組の教室では無理矢理に、いつものように快活に振舞う彼を見て、

沙代の胸は締め付けられた。

ーーやべっち・・・矢部先生・・・。

2年、3年と自分の担任だった矢部が、沙代は大好きだった。

矢部は明るく快活なだけでなく、生徒たちに真剣に向き合うがため、

信頼が厚い教師でもあった。

矢部の号令で、席に着いたクラスメートたち。

シーンと静まり返った教室という空間の中、静かに矢部が口を開いた。

「 みんな・・・卒業おめでとう!

  今日で、お前らともお別れだ。

  いつか、こんな日が来ることは、頭の中では、わかってはいても、

  先生はまだ未熟なせいか、日が迫るごとに、

  時間が止まってほしいと、願うこともあった。

  でも、そんな願いは虚しく、時間は止まることなく、

  一秒一秒と刻んでは進んでいく。

  先生も、お前らも、一秒一秒、時を進んでいる。

  人生っていう時を進んでいるんだ。

  お前らの人生は、まだ18年ではあるけれど、

  その18年の中には、個々に、いろんな経験や思いが詰まってる。

  もちろん順風満帆なことばかりではなかっただろう。

  それなりな苦脳やあやまち、逆境だってあったはずだ。

  でもな・・・それらを経験するからこそ、先々へとつながるんだ。

  渦中にいる時は辛さばかりを感じて、気付かないものではあるが、

  いつか苦悩、あやまち、逆境・・・数々な試練の中に、

  これからの人生への鍵になるメッセージが含まれていたことに、

  気付く時が必ず来る。

  だから試練を恐れずに、きちんと受け入れ、それを糧にして、

  自分らしく生きることを忘れるなよ。

  それから・・・話しは少し変わってしまうけど、

  生きていれば、いくつかの人生の分岐点で迷うことがある。

  でもな・・人間って、不思議な生き物にも思う。

  本能的な直感が働くことがある・・・頭の中で瞬時に働く直感だ。

  だが瞬時のものだから、見逃してしまうことの方が多い。

  たかが直感で・・・と思うかもしれないが、その直感を大事にしろ。

  きっと・・・正しい方向に導いてくれると思うから・・・。

  これが最後に先生から、お前らに贈る言葉だ。

  先生は・・お前らのこと・・・大好きだ・・・。

  いつでも味方だからな! 

  時々、こんな体育教師がいたこと、思い出せよ。 」

矢部の精一杯な思いのこもった言葉に、再び泣き出す者たち、

”はい” と素直に返事をする者たち、

そして最後には ”私も・・・オレも・・・やべっちが大好き”

”ありがとうございました” という声で、教室内は包まれた。

ーー矢部先生・・・。

沙代の心に、矢部の言葉の一つ一つが、染み込んでいった。

ーー自分らしく生きること・・・。

   試練の中には、これからの人生の鍵になるメッセージがある。

   なんて素敵な言葉を先生は贈ってくれたんだろう。

   どんな試練にも、逃げ出さずに、頑張ろうという気持ちになれる。

   それと・・・瞬時の直感を信じる・・・。

   私は、これから柊也と向き合う。

   柊也と恋人として、やり直すかは、その直感に任せてみよう。

   先々の人生にも、分岐点にぶつかることはあると思う。

   そんな時も私は、私自身の本能的な瞬時の直感を真剣に受け止めたい・・・。

彼女は自分の人生の道しるべを見つけられそうな予感を感じていた。

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< つぶやき > 9月5日記述


とうとう卒業式の当日。


沙代が、柊也とのことで決断をする時がきました ヽ(;´Д`)ノ


それにしても矢部先生って、いい先生ですね (*v.v)。


次回をお楽しみに (^_-)☆


TSUBASA