< 登場人物 >
根本沙代 ・・・ Y高校3年生 気が強い 美容師を目指す
森田柊也 ・・・ 沙代のクラスメート 人気者
< 今までのストーリー >
「1」 「2」 「3」 「4」 「5」 「6」 「7」 「8」
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~~~村上沙代・25歳、回想~~~
ファミレスを出ると、もう外は暗くなっていた。
”お前って単純・・・単純・・・単純・・・単純・・・単純・・・単純・・・・・・・・・・”
さっきのアイツの声が、言葉が、私の頭の中で何度も回り、再び涙が溢れた。
ファミレス専用の駐車場の隅っこにある自転車置き場で、
私は自分の自転車に手を掛けたまま、心の中で自分を責めた。
ーーホント、バカだ・・・私って・・・。
昨日のアイツは感じたままに、何も考えずに、
私の笑顔や髪型を褒めただけなのに・・・。
それなのに私ったら有頂天になって・・・。
恥ずかしい・・・。
支度をしている時に、弾んだ気持ちでポニーテールを作り、
鏡に向って笑顔を作っていた自分が、道化師のピエロのように思えた。
道行く人たちが、私のことを訝しげに、または同情の目で見ていく。
ーーいつまでも、こんな所で泣いていたら、おかしいか・・・。
家に帰ろう。
「 どんまい・・・沙代・・・。 」
私は自分を元気付けるように言い、笑ってみた。
落ち込んだことがあった時に、かける自分への呪文のようなものだ。
ーーそうだ ”あの日” も、私はこうやって自分を元気付けていたっけ・・・。
私は失恋したバレンタインの日のことを思い出していた。
ーー振られても、立ち直れたじゃない。
そしてポシェットから出したハンカチで、無理矢理に涙を拭こうとした時だった。
「 沙代・・・。
よかった・・・まだ、そこにいてくれて・・・。 」
アイツの声。
ーー ”沙代” ・・・さっきもアイツは、私を、ちゃんと名前で呼んでくれてた。
いつの間に、私の傍に来ていたのか、
珍しくアイツは、叱られてシュンとした子供のように立っていた。
手にはリュックを持っているので、ファミレスを出たのだろうか?
「 秋穂が心配して、一緒に行くって言ってくれたけど、
オレ、一人で来た。
さっきは・・・悪かった。
修平にも怒られた。
”お前は小学生か?” って・・・拳で殴られたような気分だった・・・。
このままではいけないって思って・・。
だから・・・・・・。
オレがファミレスを出たのは、謝りたいのと・・・それから・・その・・・・。
ちょっと話し・・したいんだ・・・いい? 」
やけにマジな表情をするアイツに驚きながらも、私が黙って頷いてみせると、
「 クラスのみんなは、二次会でEカラオケBOXに行くって言ってた。
だから、オレたちはW海にでも行かないか? 」
「 W海? 」
「 そう・・・W海の漁船のある方だ・・・波止場。
とにかく・・・誰もいなさそうな場所に行きたい。
あっ・・・変なことはしないから・・そこ誤解すんなよ。 」
「 ・・・うん・・。 」
「 そこで・・相談なんだけど、お前の自転車、貸してくんない?
今日、オレ、バイクで来たんだけど、
今、あいにくオレのメットしかなくって・・・。
だからお前の自転車、貸して。
またお前には、貸しを作っちまうけど。 」
アイツの視線の先に、青い250ccのスポーツタイプのバイクが見えた。
どうやら彼のバイクらしい。
W海は、今いるファミレスから、自転車で行くと10分弱だ。
「 わかった・・・。
けど・・私に話したいことって?
ここではダメなの? 」
「 ・・・今・・ここでは言えない。
これでもオレって、案外、ナイーブなんだぞ・・・お子ちゃまのお前にわかる?
いっけねぇ・・・また口が過ぎた。
だから小学生なんだよな。
あっ・・・オレもお子ちゃまか!! 」
アイツは可笑しそうに笑った後、小声でボソリと言った。
「 ・・・・・オレって・・素直じゃないから・・・。 」
「 えっ?!何? 」
私には聞き取ることができなかった。
「 ・・行くぞ!!!
あっ・・・足の調子はどうだ? 」
アイツは私の捻挫している右足首に視線を移した。
「 もう大丈夫・・・アンタの応急処置がよかったから・・・。
転んだ時、アンタが駆けつけて来てくれて、すごく助かった。
ありがとう。 」
「 そうか・・・よかった・・・。
お前、ドジだから・・・・目が離せなくって・・・。
競技以外で怪我するのって、お前らしいけど! 」
この期に及んで、憎まれ口ではあるけれど、
アイツの言葉の奥にある優しさを、私は感じた。
「 とにかく行くぞ! 」
自転車のカゴに自分のリュックを入れると、アイツは鍵を解除し、またがった。
アイツがまたがると、ママチャリ同様の私の自転車がカッコよく見えるのは何故?
「 さぁ、乗れ。 」
「 うん。 」
自転車の後ろに座り、アイツの胴回りに、腕を回すと、
一ヶ月前の新学期の朝の光景を思い出した。
ーーあの時も、こうやって自転車の後ろに乗って、
今と同じように、腕を回してた。
「 ちゃんと乗ったか? 」
「 うん・・・。 」
「 ちょっと素っ飛ばすからなっ! 」
アイツが、そう叫ぶと同時に、軽快に自転車は走り出した。
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< ひとこと >
憎まれ口の奥にある優しさ。
それらに触れた時、初めて今までのことが帳消しになりそうな、
あたたかさがありますね (‐^▽^‐)
次回は ・・・ W海の波止場で、意外な話しも出てきます。
TSUBASA