< 登場人物 >
根本沙代 ・・・ Y高校3年生 小柄 美容師になる夢を持つ
森田柊也 ・・・ 沙代の同級生 スポーツ万能
根本亜紀 ・・・ 沙代の年子の姉 短大生 Y高校卒業生
< 今までのストーリー >
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~~~村上沙代・25歳、回想~~~
昨日の校内陸上競技大会は、無事に終った。
私はクラスの実行委員としての責任を果たせたことに、
ホッと胸を撫で下ろすと同時に、昨日のことを思い返した。
それにしてもアイツは、すごかった。
男子の400mリレー決勝のアンカーをしていたアイツは、
瞬く間に、前を走っていた他クラスのアンカーを2人追い抜き、
1位でゴールし、優勝したのだった。
もちろんアイツは、女の子たちの歓声を、いつも以上に浴びていた。
クラスの ”柊也ファンクラブ” の女の子たちからの情報では、
小さな頃から活発だったアイツはスポーツ全般が得意なんだけど、
部活には所属していず、帰宅部だという・・・。
Y高校に入学してからも、いろんな運動部からの誘いがあったけど、
アイツは頑なに断っていたらしい。
その理由は、小さい頃から習っていたバイオリンの存在が大で、
運動により、万が一、指を痛めることを、極力避けているせいらしい。
バイオリンを弾く・・・アイツの意外な一面。
みんなや私の知らない、未知のアイツの顔が、まだまだ、あるように思う。
アイツには、良い意味合いの、いろんな意外性が潜んでいる。
それを鼻にかけたり、気取ったりしないのが、
私が唯一アイツに感じた、良いところなのかもしれない。
・・・というよりも、アイツは何も考えていないのかも?!
能天気?
良い言い方をすれば、自然体なのか?
それに・・・・・ふと私は包帯を巻かれた自分の右足首を見た。
昨日の校内陸上競技大会の時、実行委員の仕事で忙しく走り回っていた私は、
ふとした弾みで、階段の下段の方で、右足を捻り転んだ。
競技での怪我ではないことが私らしい・・・。
痛みに顔を歪める私の傍に、”大丈夫か?” と、
偶然、アイツが駆け寄り、足首を診て ”捻挫だな” と呟くと、
私をおんぶし、救護テントまで運び、
やけに手馴れた手付きで応急処置をしてくれたのだ。
それは傍にいた養護の先生も手を貸す余地もないくらいな手際の良さだった。
あの時の手当てをするアイツは終始無言だったけど、普段と違った優しさを感じた。
アイツの応急処置がよかったからなのか、今は痛みが、だいぶ軽くなって、
歩行にも、ほとんど支障がない。
ーー私って・・・・。
気がつけば、いつの間にアイツのことばかり考えてる。
ーーさぁ、支度をしなくっちゃ。
今日は土曜で学校は休みなんだけど、
夕方から、3年5組のみんなで、打ち上げと称して、ファミレスに集まる。
私は今、その支度に取り掛かろうとしていた。
もう着ていく服も身に着けている。
七部袖で小花柄の入ったスモック型の白いチュニックに、茶色のミニスカート。
私は自分の服装に似合いそうな髪型を考えていた。
ーーどんな髪型にしていこう・・・。
洗面所の鏡の前に向うと、髪型に迷っていたけど、
脳裏に、昨日の朝のアイツの言葉が甦った。
”なかなか可愛いじゃん”
”お前って、ポニーテールがよく似合ってる”
何の変化も付けていない普通のポニーテールだったのに、
アイツは、そう言ってくれた。
いつも私を目の前にすると、憎まれ口しか言わないアイツなのに、
昨日は、どういう心境だったのか、珍しく私を褒めてくれたのだ。
ーーすごく嬉しかった。
アイツが、初めて女の子として、私を認めてくれたように思えて・・・。
ーー今日もポニーテールにしてみようかな・・・。
ところが2日連続、同じ髪型にすることは、私の持つ ”こだわり” が許さない。
昨日はポニーテールの根本に自分の髪を巻き、ヘアーゴムを隠す形をとていった。
ーーそれなら今日は、ポニーテールの根本にシュシュを付けよう。
基本はポニーテールだって、少しの変化で印象が違ってくる。
シュシュがいいアクセントにもなる!
シュシュとは、布製のフワフワしたヘアーゴム。
色や柄も、豊富に出回っていて、アクセサリーショップなどで売られている。
私は手馴れた手付きで髪をとかし、ポニーテールを作ると、洗面所の引き出しから、
茶色で小花柄の入ったシュシュを選び、それを付けた。
そのシュシュは、今、身に着けている服装にもマッチした。
ーーできた!!
可愛いぞ、沙代!!
私は鏡の中の自分に笑い掛けるように、笑顔を作った。
まるで昨日の朝、アイツに褒められた笑顔を再現しようとするかのように・・・。
そこに姉の亜紀ネエが洗面所に入ってきた。
「 なに?沙代。
アンタ、昨日もポニーテールだったでしょ?
どういう心境の変化?
アンタの鉄則では、2日連続で同じ髪型はしないはずじゃない?
あっ・・・さては・・・・? 」
亜紀ネエは意味深にニヤリと笑い、わざとらしく男の子の声色を使うと、
「 ”その髪型、可愛いよ” なぁんて、
男の子にでも言われたとか?
それとも・・・アンタ!
”砂川くん” に振られたバレンタインの、あの日以来・・・、
あっ・・・ごめん・・・思い出したくなかったよね。
でも、あれ以来、新しい恋が芽生えていたんだね?
沙代、この頃、やけに女っぽいもん!
今度は、どんな子?
隠さないで、教えなさいよ!
また協力するから!! 」
確かに亜紀ネエの言っていた通り、今年のバレンタインに
”私は振られた” 。
2年の時に同じクラスだった砂川寛太くん・・・。
私とは年子の姉である亜紀ネェも、同じY高校に通っていたので、
砂川くんのことは知っていた。
砂川くんに振られて以来、恋愛感情が持てるような男の子は、
今の私の周辺にはいないはずだったのに、
亜紀ネエの言葉にドキリとした私は、思わず笑って、こう言い返していた。
「 亜紀ネエったら、早合点なんだから!
そんな人いないって!
憎ったらしいヤツなら、一人いるけど!! 」
発した言葉とは裏腹に、ふと鏡を見た自分の目元、口元が、
ほのかに緩んでいることに、私は気付いた。
ーー森田柊也・・・・。
私は、その名前を心の中で強く噛み締めた。
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< ひとこと >
沙代の前では、憎まれ口ばかりを言う柊也ですが、
口とは裏腹に、いつも彼女を心配し、見守っています (*^.^*)
誰かに見守られていることって、とても嬉しいことですね![]()
次回はファミレスで、一波乱があります (;^_^A
いつも愛読してもらい、ありがとうございます m(_ _ )m
TSUBASA