お花。 今まで の ストーリー お花。


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人で賑わいだした、羽田国際空港・旅客ターミナル3階出発ロビーに

千春、母親の加奈子、弟の秀一はいた。

「 あと1時間で出発だね。

  千春、出国手続きは、ちゃんと済ませたんだよね?

  飛行機にも間違いないよね? 」

初めての飛行機に自分が乗るかのように、緊張する母親の加奈子に

「 大丈夫だよ。

  もぉーお母さんったら心配性なんだから。 」

千春も思わず笑って答えた。

「 でも遅刻は厳禁とはいっても、ちょっと早く着きすぎちゃったね。

  私って、やっぱり時間の使い方がヘタ。

  遅刻するか、早く着きすぎてしまうか・・・なんだもん。 」

3人で顔を見合わせて笑った。

ーーいつも礼司とのデートの時も、私は遅刻ばかりだった・・・。

笑ってはいても、千春の脳裏には、礼司のことばかりだった。

千春は今、心の底から礼司に会いたいと願っていたが、

半ば諦めに似た気持ちも同様にあった。

ーー礼司は、きっと来ないだろうな・・・。

   デートの時、先に来て、私を待っていてくれた礼司の気持ちが

   今、わかったような気がする。

そして千春が何気に携帯の液晶を見ると、

「 あっ・・・メール・・・それに着信まで・・・。

  私、ずっとマナーモードにしていたから、気付かなかった。 」

メールも着信も美奈子からだった。

美奈子は最初、携帯に電話を掛けてきたらしいが、

マナーモードにしていた千春が気付かなかったせいか、メールもしてきていた。

その内容を読んだ千春の表情が、次第に晴れやかになっていった。

ーー礼司が来てくれる!

千春が、そう思った矢先に、

「 姉ちゃん、姉ちゃん!!

  あれって?

  あの制服って、姉ちゃんの高校の制服なんじゃないか?

  それにしても、すっげぇー超イケメン!!

  なんか誰かを探してるみたいだけど・・・。

  まさか?姉ちゃんの彼氏じゃないよね? 」

秀一の視線の先に目を向けた千春は、

「 礼司・・・!! 」

思わず彼の名前を叫び、緊張で身体が動かずにいると、

「 千春、早く行ってあげなさい。

  来てくれて良かったじゃない?

  美奈子ちゃんにも言われたでしょ?

  ちゃんと自分の本当の気持ちを伝えてきなさい。 」

加奈子も微笑んで、千春の背中を押した。

「 姉ちゃん、ガンバレよ! 」

秀一にも即され、

「 お母さん、秀一、ありがとう。

  出発の10分前には、戻ってくるね。 」

千春は礼司のところに駆け出した。





礼司は空港に到着した時、父親のレンに別れ間際、

ガンバレよ” と励まされたことを思い浮かべた。
ーーオレは小さい頃から、父さんに ”ガンバレよ” と言われると、

   不思議と頑張れた・・・。

   父さんは、いつも ”ガンバレよ” という言葉の中に自分の思いや力を

   込めてくれていたのかもしれない。

   それに母さんだって、いつもオレの心の穴を埋めてくれる言葉掛けを

   してくれていた。

礼司は改めて父親のレン、母親のミオの存在の大きさを感じていた。

2人の気持ちを無駄にしたくない・・・そして自分の千春への気持ちも・・・。

礼司は千春の姿を懸命に探したが、彼女の姿をなかなか見つけられずにいた。

ーーそうだ・・・千春の携帯に電話してみよう。

   どうして、そんなことに気付かなかったんだ・・・オレって・・・。

礼司が無造作にポケットから携帯を出した途端・・・。

「 礼司!! 」

ーーその声は・・・千春?

礼司は、千春だと信じられない思いで、振り返った。

「 千春? 」

そこには春物で薄手のVネックの白いセーターに紺色のブレザーを羽織り、

赤いチェックのひだ付きミニスカート姿・・・。

髪をショートボブにした千春が微笑んで立っていた。

そして・・・千春の首には、動物園に行った時に、

礼司がプレゼントしたファッションリングが、

ネックレスのチェーンに通されて光っていた。





2人は足早にロビーのなるべく人気(ひとけ)の少ない場所に移った。

「 千春、髪? 」

「 フフッ・・・驚いたよね。

  あれから美容院に行って、バッサリ切っちゃった。

  でも今頃になって、後悔してる・・・。

  バカだよね・・・私って・・・。 」

「 そうだよ、バカだよ!!

  それもオレに何の断りもなしにだなんて、許せない。 

  オレ、おまえの長い髪が好きだったのに・・・。

  でも・・・その髪型も憎らしいくらいに可愛い。 」

「 美容院で髪を切る時に、礼司への思いも切るつもりだったのに、

  まだ私の中には礼司がいた・・・。 」

千春は自分の胸に手をあてた。

「 千春。 」 「 礼司。 」

咄嗟に2人は同時にお互いの名前を呼んでいて戸惑った。

「 礼司から言って・・・。 」

そして、しばしの沈黙の後、

「 来ないなんて言っておきながら、ここに来たのは、

  オレの本当の気持ちを千春に聞いてほしかったから・・・。

  昨日、言っていたらよかったのに・・・オレもバカだった。

  千春・・・・。

  本心は、できれば・・・離れたくなんかない・・・・行ってほしくない。

  だからと言って、それを止める権利はオレにはない。

  留学には行ってこいよ。

  でも・・・・千春と別れたくない!!。

  千春が迷惑じゃなかったら、まだ繋がっていたいんだ。

  ”別れる” だなんて形式ばった言葉だけで、お互いに納得なんかして、

  オレたちの繋がりを切りたくなんかない。 」

「 礼司・・・ありがとう。

  私も同じだよ。

  別れようなんて、自分から言っておいて、こんなこと言いづらいけど・・・。

  本当は私・・・礼司に振られるのが怖かった。

  もしも・・私が留学をしている一年間の間に、

  礼司に新しい良い出会いがあって、私の他に好きな人ができてしまって、

  礼司から ”別れよう” って言われることが、すごく怖かったの。 

  礼司は外見も中身も、とても素敵な人だから、周りの女の子たちは、

  絶対に礼司のことを放っておく訳がない・・・。 

  だから礼司に ”別れよう” って言われるくらいなら、

  私の方から ”別れよう” って、先に言った方がいいって思って、

  自分から別れを切り出した・・・・。

  でも、それは間違ってた。

  それじゃあ、まるで私が礼司のことを信じてないってことになるよね?

  ごめんね・・・。

  もちろん礼司のことを縛ることはできないという思いもあったけど、

  私は、自分が傷付くのが一番怖かったんだと思う。

  礼司の気持ちを考えもしないで・・・勝手だよね・・。 」

「 千春・・・何言ってんだよ?

  もっと自分に自信を持てよ。

  堂々とオレのカノジョでいろよ。

  オレは千春のことが好きだ。

  千春みたいな・・・千春以上の女の子はいないんじゃないかって

  思ってるくらいに・・・。 」

「 うん・・・礼司を信じる。

  私・・・馬鹿だった・・・。

  ごめんね。 」

千春は礼司の気持ちに応えるように頷くと、

「 だから・・私の本心は・・・・・・遠く離れたって礼司と繋がっていたい。

  礼司のことが好きなんだから、今は別れる必要はないって気付いた。

  礼司は私にとって、とても大切な人だから・・・。

  昨日、別れてみて、それがよくわかったの。 」

「 オレ、今日、ここに来て良かった。

  こうして千春を前にして、

  自分の本当の気持ちを言えたし、千春の本当の気持ちが聞けたから・・ 」

そう言い終わらない内に、礼司は千春を抱きしめた。

「 苦しいよ・・・礼司。

  でも・・・・・礼司が・・礼司が大好き!! 」

2人は思いっきり抱き合った後、 

「 千春に渡したいものがあるんだ。 」

礼司は、朝、出掛ける前に

ミオから手渡された ”或るもの” を千春に差し出した。

「 礼司、これって・・・。 」

レンから、ミオとの大恋愛の話しを聞いていた、千春にはそれが何を

意味するものなのかピンときた。

子供の頃のレンが、

転居でミオと離れ離れになる時に差し出した ”もの” ・・・。

それをミオが大切に持っていて大人になってから再会を果たしたという、

その ”或るもの” とは、一輪のたんぽぽを押し花にした、結びのアイテム 

”たんぽぽのしおり” だった。

それは白い長細い板目紙(厚紙)に、

たんぽぽの押し花を貼り付けている、普通のしおりなのだが、

更にミオが透明シートにパウチングしたせいか、たんぽぽの花の色も

多少の色あせはあるものの、綺麗な状態を保っていた。

ミオが、いかに大切に保管していたのかが、わかるくらいに・・・。

「 千春が、これを持っていて。

  いや・・・持っていてほしいんだ。

  確かに千春が留学している間の1年間は、お互いに色々とあったり、

  新しい出会いだってあるかもしれない。 」

千春は悲痛の面持ちで頷いた。

「 でも1年後も、まだお互いにお互いを必要だって思うのなら・・・・・。

  また会おう・・・。

  1年後の千春の18歳の誕生日の3月28日、午後3時に

  オレが千春に告った、パレットタウンの観覧車乗り場で・・・。

  この ”たんぽぽのしおり” は、

  オレと千春との ”再会の約束” のチケット。

  オレは、このチケットの効力を信じてる。

  だから、これを千春に渡しておく。 」

「 うん、わかったよ、礼司。

  私も信じる。

  礼司と、また会いたい。

  だから、この ”たんぽぽのしおり” は

  もしもの・・・ ”さよなら” を

  無効にする効き目のある ”再会の約束” のチケット・・・・。

  それに私の御守り。 」

「 千春・・・おまえって・・・前向きなヤツ。 」

礼司は、千春のおでこを指で突付き、2人は笑った。





「 初めまして、千春さんと仲良くさせてもらってる山下礼司です。 」

礼司が緊張のせいか、ぎこちなく、千春の母親の加奈子に挨拶をすると

「 礼司くんのことは、千春から聞いていたんですよ。

  千春の話している通りの男の子で安心した。

  礼司くんのご両親にも、千春がいつもお世話になりっぱなしで、

  申し訳ないばかりだと伝えてくださいね。

  それと・・・よかったら、これからも千春と仲良くしてやってください。 」

礼司を目の前に、若干、緊張した面持ちながらも、

切れ長の目を細め微笑み加奈子は言った。

加奈子は美人系の顔立ちだが、千春とは全く似ていなかった。

そこで礼司は初めて、千春が父親の晃一似だということに気付いた。

「 カッコいい!!

  オレ、こんな兄貴がほしい。

  なんか憧れちゃう!!

  姉ちゃん、絶対に別れるなよ。 」

母親似の弟の秀一が千春を茶化すと

「 オレも妹しかいないから、秀一くんみたいな弟が欲しいって思ってる。

  これからもよろしく。 」

「 はい・・・。 」

礼司の言葉に秀一は照れ、赤くなった。

「 秀一って、普段は馬鹿ばっかしやってる子なんだけど、

  可愛いとこもあるでしょ? 」

「 姉ちゃん、馬鹿ばっかし・・・は余計! 」

秀一がふくれると、みんなで笑った。





「 礼司・・・また会おうね!! 」

笑顔で、そう言い残し、千春は旅立って行った。

”たんぽぽのしおり” を大切そうに手にして・・・。

礼司は千春が乗った飛行機が飛び立った空を

ずっとずっと見送っていた・・・・。


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長い間 読んで頂き ありがとう ございました m(_ _ )m

ブログ記事 の 文字数 が 足りなくなりそうなので

短い 挨拶 で ごめんなさい。

1月 には エピローグ も 用意しています。


なんちゃって作家 Yu